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第9話 イースの街で無一文な事に気付いて組合員を魅了した。

少し遅れました。

気づいたら1200PVを超えておりました!ありがとうございます!

こんなに沢山読んでいただけるとは思ってもみなかったので、とてもうれしいです!

これからもがんばって続けていきますので、応援よろしくお願いします!

 イースの街に着いた。

 といってもまだ入り口の前に到着しただけで、街の中に入った訳ではないが。


 目の前には頑丈そうな石壁が立ち塞がっており、それは街全体をグルッと囲み、外敵から街を守っている。

 そこまで高くはないがそれなりに厚みはあるようで、壁の上を警備兵らしき人たちが巡回しているのが見える。

 入り口には大きな木製の門があり、現在は固く閉ざされている。門の横には小さな窓のような物があり、中に人が待機しているのが見える。

 入場受付かな。


「すごい警備だなあ。王様でも住んでるの?」


 ジャン達が受付に向かうのを追いかけながら、何気ない疑問を口に出すとジャンがそれに答えてくれた。


「いや、イースは王都ではない。警備が厳重なのは、ここが交通の要所なのと、単純に金があるからだな。イースで採れる鉱石、それを使用した武具や魔道具は高値で取引されるんだよ」


「ほえ~」


 受付の前に着いた。

 中には壮年の男性がおり、だるそうに視線を向けてきたが、相手がジャンだと分かると途端ににこやかな表情に変わった。


「おお! ジャンじゃねえか! 依頼帰りかい?」


「おう、完了したんで報告に戻ってきたんだ」


 ジャンの口調は俺達と話す時のような堅苦しい物ではなく、なんというか、とても自然な感じだった。おそらくこっちが素なんだろう。


「そうかそうか。無事に戻ってきて良かった。……ん? 行きより人数が増えてるな」


 受付の男性は俺とメリアさんを見て訝しげな表情を見せた。


「ああ、依頼先で保護した。今回の依頼の関係者だ」


「今回の依頼ってーと、いきなり現れたでっけえ竜巻の発生原因の調査、だっけか? それの関係者って……」


 好奇心からか、詳細を聞き出そうとする男性に対して、ジャンはあきれたように肩をすくめた。


「おいおい、組合(ギルド)への報告前の情報を聞き出そうとするんじゃねえよ。組合(ギルド)からの発表前に俺から言う訳にゃいかねえよ」


 ジャンの物言いに男性はあっさり引き下がった。もっと食い下がってくるかと思ったんだが。


「そりゃそうか。……んじゃ、組合(ギルド)証を出してくれ。一応規則なんでな。そっちの姉ちゃん達は一人小銀貨一枚だ」


 ジャン達がカード状の物を提出しているのを呆然と眺めながら、俺は門番の男性の言葉に、雷に打たれたかのような衝撃を受けていた。

 小銀貨って、名前からして多分お金だよな…………。


 お金なんて俺持ってないよ? この世界に来てからこっち、文明的な生活送ってないからな!

 人里から離れた洞窟で、メリアさんと二人きりでの完全な自給自足生活。お金を使う要素も、手に入れる環境も全くない。


 油の切れた機械のようにぎこちなく後ろを向いた。そこにはメリアさんがいるはずだ。

 俺と違って、メリアさんは過去に普通の生活もしていた。その時の路銀とかが残っていれば……!

 縋るような気持ちで、振り向いた先に確かにメリアさんはいた。なぜかメリアさんが見えただけでちょっと安心した。だが、メリアさんの顔を見てその安心は一瞬で吹き飛んだ。


 いかにも『忘れてた!』って顔をしていたからだ。


 まじかよやべー! 俺達無一文だよ!


「ああ、彼女らの分も俺が払う。……ほら」


 このままじゃ街に入れない! どうしよう! と悩んでいる間にジャンが受付に銀色の硬貨を二枚置いていた。


「あ? 払ってくれる分には構わねえが……。大丈夫か?」


 この『大丈夫か?』には『無一文の奴らを街に入れて何か問題を起こさないか?』というニュアンスが感じられた。

 実際、男性が俺達を見る目はちょっと厳しめだ。


「ああ、彼女達は今回の依頼の関係者だ。身元については今んとこは俺が、報告後は組合(ギルド)が保証するさ。この分は必要経費として回収するしな」


「…………ならいいが。嬢ちゃん達、依頼を受けたのがジャン達でよかったな。こいつ冒険者の癖に優しいからな。普通ならここで門前払いだぜ? ま、あんな美人だったらしょうがねえか? ええ?」


「依頼の関係者だって言ってるだろうが。ここで門前払いしたら報告できねえんだよ」


『優しい』と言われた事が恥ずかしかったのか、ジャンはぶっきらぼうに答えた。それを見て男性はニヤニヤ笑っている。


「お前がそう言うんなら、そういう事にしとくさ。今門を開ける。ちょっと待ってろ」


 男性は肩をすくめながらそう言うと、後ろを向きながら何か言っている。何を言っているかはよく聞こえないが、おそらく開門の連絡だろう。


 そのまま待っていると、ゆっくりと門が開いた。木製ではあるが、かなりの厚みがあるようで、開門はゆっくりとしていた。


「ジャン、ありがとう。助かったよ」


「ほんと助かったね。お金の存在とか忘れてたよ!」


「言っただろ? 組合(ギルド)への報告時にあんたらが必要なだけさ。お礼を言われる筋合いはねえよ」


 俺とメリアさんのお礼の言葉でさらに恥ずかしくなったのか、殊更ぶっきらぼうに答えた。顔も少し赤い。

 それを見て他のパーティメンバーはクスクスと笑っていた。


「ようこそイースの街へ! 我々はお前たちを歓迎する!」


 開いた門をくぐろうとしたところで、男性が俺達に声を掛けてきた。街に入る人へ掛ける定型文なんだろう。

 それにしても『歓迎する』って……。本当かよ……。さっき怖い顔で見てきてたじゃんか……。

 という考えは顔に出さず、俺達は門をくぐった。


 ……


 …………


 門をくぐり、ついにイースの街に入った。


 遠くから見たときには門より高い建物の屋根がいくつか見えたくらいだったが、中に入ってみて街の規模に驚いた。

 石造りの建物が所狭しと立ち並び、人通りがとても多い。門をくぐった先がそのまま大通りになっているようで、道幅の広い通りの左右には行商人らしき人たちが、自分の商品を地面に並べて露店を開いている。

 通りには一定間隔で電灯のような物が並んでいた。


「すげえ……」


 この世界に来て初めての街。沢山の人々が行きかい、熱気に溢れている。

 きょろきょろと忙しなく視線を泳がせている俺を見て、ジャンは苦笑していた。


「でかい街で興奮するのも分かるが、先に組合(ギルド)に行くぞ。依頼完了の報告をしないとな」


「お、おう……」


 街に着いた事で気が抜けたのか、心なし口調が変わったジャンに咎められてしまった。

 やっべ恥ずかしい。行動が完全にお上りさんだった。


「報告が終わったら街を案内してやるよ。だから先に俺達の用事に付き合ってくれ」


 恥ずかしさに俯いた俺を見て、残念がっていると勘違いしたらしく、ジャンはそんな言葉で慰めてきた。


「分かった……」


 歩き出したジャンを追いかけるように歩いていると、後ろから他のメンバーの声が聞こえてきた。


「ああん……興奮してきょろきょろしてるレンちゃんかわいいよう……」


「普段は見せないけど、時折垣間見える子供っぽさ……そそりますわ!」


「窘められてしょんぼりしてるレンちゃんもやばかわいい……。滅茶苦茶にしたい…………」


 さっきまでの俺の様子を見て女性陣が身悶えているようだ。熱い視線を感じて背筋がゾワッとした。

 というかレミイさんの台詞がやばい。警戒しておかないと。こんな往来で襲いかかられては堪らん。


「滅茶苦茶にされるのはお前の方だろうが。また気絶させられんぞ」


「彼女達は学ぶ、ということをしないのでしょうか……」


 レーメスとキースはそんな女性陣の様子を見て呆れているようだ。

 ほんと、このパーティは女性陣が残念だな。


「着いたぞ。ここが冒険者相互扶助組合、通称【組合(ギルド)】だ」


 ジャンは一つの建物の前で立ち止まりながらそう言った。

 その建物は他の建物の数倍は大きい。

 平屋造りらしく高さはそうでもないが、敷地面積がやたら広い。周囲の建物の数倍はある。


 ジャンが扉を開いて中に入っていき、その後をパーティメンバーが付いていく。

 置いて行かれないように俺達も慌てて建物に入った。


 中も外見に違わずとても広い。


 入って左手には大きな掲示板が設置されており、A4くらいの紙が所狭しと貼られている。

 掲示板の前には沢山の人が立っており、貼られている紙を吟味している。あの紙に依頼内容が書いてあるんだろうか。

 皆、鎧やローブを身に付けている。ジャン達と似たような格好だ。

 そして美人とイケメンしかいない。


 右手には椅子とテーブルがいくつも置いてあり、そこにも鎧やローブを身に付けた人たちが座り、楽しそうに雑談をしている。

 良く見たらみんな手にはジョッキを持っており、机には食事が置いてあった。

 組合(ギルド)は酒場も兼ねているようだ。

 こっちも美人とイケメンしかいない。


 正面の奥には役所の受付が集まったような場所があり、お揃いの制服を着た人たちが座っていて、冒険者たちの対応をしていた。

 うん、やっぱり美人、イケメンしかいない。

 ……冒険者とその関係者って、顔面偏差値も必要なのかな? 受付の人は確かにそういうのも必要そうではあるけど……。


「いくぞ」


 ぼんやりとそんな事を考えていると、ジャンが歩き出したので慌てて追いかける。

 受付の一つに向かい、そこに座っている女性に声を掛けた。


「依頼の報告に来た」


「はい。承ります……って! ジャンさんじゃないですか! 戻ってきたんですね!」


 受付の女性はジャンを見て嬉しそうに声を上げた。

 これまた整った顔をしている。

 栗色の髪を緩く三つ編みにした、可愛らしい、という表現が似合う女性だ。


「ああ。離れている間、変わりなかったか?」


「ええ、ジャンさん達を指名しなきゃいけないレベルの依頼は発生していません。平和でしたよ」


「そうか。ならよかった」


「まあ、そんなレベルの依頼なんてそうそうないんですがね。……っと、すみません。報告でしたね。えっと、受領中の依頼は……『死の断崖で突如発生した巨大竜巻の調査』ですね」


「ああ」


 ……俺達が住んでいた場所って『死の断崖』って名前だったのか。随分と物騒な名前だな。


「では、調査結果をお願いします。こちらで報告書を作成しますので」


 職員が報告書作るのかよ。大変だな職員さん。


「頼む。……結論から言うと、あの竜巻は特定個体が使用した【能力(スキル)】によって引き起こされたものだ。特定個体については対処済みなので、再発の可能性は低い」


 ……なんか、微妙に濁した報告だな。なんだよ特定個体って。嫌な言い方だな。


「あの規模の竜巻が、特定個体の【能力(スキル)】使用によるもの……? 俄かには信じがたいですね……。対処した、というのは討伐した、という事ですか?」


「いや、保護だ。言葉が通じる相手だったからな。説得した」


「保護って……その個体はどちらに?」


 女性はきょろきょろと周囲を見回している。『特定個体』とやらを探してるんだろう。


「ああ、ここにいる。……おい」


 ジャンは俺に顔を向けた。悪戯っぽい顔でニヤニヤしてやがる。

 ……あー、なるほどね。理解した。面白そうだ。


 ちなみに俺はさっきからジャンの隣に陣取っていたのだが、受付は窓口のような作りになっており、かつ受付全体が床より一段高くしてあるせいで、ジャンの腹の高さに台があり、それより下は見えない。ジャンの腰くらいの身長しかない俺は完全に隠れてしまっている。

 まあ、つまりそういう事だ。


 机の端に手を掛け、腕に力を入れる。鉄棒で懸垂をする要領で体を持ち上げ、なんとか顔を台の高さまで持っていく。


「んぎぎぎぎ…………。あい」


 片手を上げ、女性に挨拶する。

 両手でなんとか体をもちあげていたのに片手を離してしまった為体重を支えきれず、べしゃっとその場に尻もちをついた。


「あうっ! うぅ……お尻痛い…………」


 尻をさすりながら立ち上がる。ちょっと涙目だ。

 このままでは女性と顔を合わせられないので、一歩後ろに下がり、改めて片手を上げて挨拶する。なるべく元気に。


「あい!」


「…………はわぁ~……」


 女性は頬を赤く染め、口が半開きになっていた。放心しているらしい。瞳の中にハートマークが浮かんでそうな表情をしている。ちょっと顔がやばい。

 …………あ、鼻血。


「ぷっくくく…………。おい、鼻血出てんぞ……くく……」


 ジャンが必死に笑いを堪えながら指摘すると、女性は我に返ったようで、指摘された鼻血をわたわたと処置している。


「…………し、失礼しました。今私、幻覚を見ていたようで……。この世の物とは思えない程可愛らしい女の子がジャンさんの横に立っている幻です……」


「ブフッ! ……そ、それは……ククク……こんな見た目じゃなかったか……?」


 ジャンはまた俺をチラっと見た。

 OK。やってやるぜ。

 今度は両手を上に上げ、バンザイをしながらその場でピョン、とジャンプした。

 出来うる限り最高の笑顔を作りながら、


「あいっ!」


「ッ! くぅ~……ん!」


 女性は胸に手を当て、そのまま前のめりになった。顔はさっきより真っ赤で息が荒い。

 その様子を見てからジャンに視線を移動する。二人同時に親指を立てた。悪戯大成功。


 今までの行動はもちろん演技だ。


 ジャンがニヤニヤしながらこっちを見たときに悪戯を考えている事に気づき、乗ってみた。

 面白そうだったっていうのもあるが、一応真面目な理由もある。


 この後どうせ、ジャンが洞窟に来た時と同様に、竜巻、またはそれに比肩するレベルの現象を見せてみろ、と言われるのは想像に難くない。俺の今の外見からそんな大それた事ができるようには見えないだろうしな。

 そして、実際にやってみるとほぼ確実に驚愕されるだろう。


 洞窟前でのジャン達の反応を見るに、ここまでの流れはほぼ確定だ。


 で、恐らくだが、『こんな善悪の区別もつかないような子供がこんな力を持っているなんて危険だ!』となるだろう。そんな気がする。

 現象の発生に【能力(スキル)】が必須な関係上、【能力(スキル)】を見せない、という選択肢が取れない。その為、できるだけ無害そうな子供である事をアピールし、『こんな無邪気な子供が悪い事するはずがない!』という心理に持っていこうと思ったのだ。

 上手くいくかは分からないが、やっておいて損はないだろう。


 お、女性がノロノロと顔を上げた。持ち直したか?


「幻じゃなかった……んですか? ああ……なんだかその子を見ていると、胸とお腹がキュンってします……。あ、で、何の話でしたっけ……?」


 恍惚とした表情を浮かべながら俺を凝視してくる女性。

 あれ? なんか想像以上の効き目だぞ?


「~~~~ッ!! 私に向かっての行動じゃないのに、この破壊力……! レンちゃん、恐ろしい子……! ハアハア!」


「あふぅ……。なんだか私も胸がキュンキュンしてますわ……。実はレンちゃんって【魅了】持ちだったりするんでしょうか……?」


「ハアハア…………。やばい……抑えられなくなってきた……」


「まじやめろよ!? あんなの人目がある所でする事じゃねえからな!?」


「人目がなくても子供相手にしていい事ではありませんがね……」


『あんなの』っていうのは、洞窟前で女性陣から受けたセクハラの事だよな。

 ……またも貞操の危機!?

 戦々恐々としている俺を尻目に、仕事中とは思えない女性の態度に、ジャンがちょっと引いている。


「お、おう……。例の竜巻な。起こしたのはこのお嬢ちゃんなんだよ。信じられねえとは思うがな」


「……こんなにかわいい子なら何ができてもおかしくない気がします……。はう」


 いや、何言ってるのこの人。さすがに『かわいい』と『竜巻』は繋がらねえよ?


「だめだなこりゃ……。おーい、すまんがちょっと組合(ギルド)長を呼んできてくれ」


 ジャンは完全に論理的思考がぶっ飛んでしまった女性を見てこれ以上の進展は望めないと判断したらしく、ため息を吐きながら別の職員に声を掛けた。


 にしてもいきなり組合(ギルド)長を呼ぶのか。こんな事なら、悪戯なんてするんじゃなかったな。反省。

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[一言] 普通依頼の証人連れてきて金だせて じゃ帰るで終わり 捕縛者ならその場で殺して終わりかな
[気になる点] 簡単に自分の能力をさらけ出すつもりのようですが、この世界、自分の能力を公にさらけだして大丈夫なの?
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