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第74話 迷宮攻略を開始した。①

お待たせ致しました!

本日より十万PV達成記念、連続投稿を行います!

本日より【四日間連続】で一話ずつ、朝十一時に投稿させていただきます!


……とは言っても、本編は本日の投稿分だけで、残り三日間は別人視点での閑話的なお話となりますが。


とりあえず、お楽しみいただければ幸いです!

「ここが迷宮かー」


「そうだねえ。私も初めて入ったけど、結構綺麗なんだねえ」


 ジャン達から迷宮についての情報を教えてもらった三日後の昼過ぎ。

 俺達は迷宮の中、その第一層にいた。


 あれから屋敷に戻り、メイド達に事情を説明した上で、シフトを調整し。

 一日掛けて、迷宮攻略に必要そうな品、大量の食材を色々と買い集め。

 さらに一日掛けて、迷宮に潜っている間〈鉄の幼子亭〉で提供する料理を作り貯め、専用の【拡張保管庫】にぶち込み。

 体調を完璧にするために早めに布団に入り。

 その所為で普段より大分早く目が覚めてしまい、どうせ早く起きたんだからと、早朝に迷宮に向かった。


 …………そう、早朝に向かったのだ。


「くっそ……あの門番が俺の言う事信じてくれればもっと早く入れたのに……」


「あーっと……。まあ、ほら、門番さんもお仕事なんだから、ね?」


 早朝に迷宮に向かったはずの俺達が、昼頃になってようやく迷宮に入ったのには、もちろん理由がある。


 迷宮の入口には門番が立っており、入るのはそこで組合(ギルド)証を提示する必要があった。

 まあそりゃそうか、門番がいないと誰でも入りたい放題だもんな、と納得した。

 だがその門番は、俺が組合(ギルド)証を出す前に、


「こらこら。ここは子供が遊びに来るような場所じゃないよ。おうちに帰りなさい」


 と言って門前払いしてきやがったのだ。


 うん。まあちょっとムカついたけど、事実俺はちっこいし、これはしょうがないとは思ったさ。

 だから、


「いえ、俺、これでも冒険者なんで。これ組合(ギルド)証です」


 と言いながら組合(ギルド)証を見せた訳だ。冒険者であれば、迷宮に入る権利がある。普通はこれで問題なく中に入れるはずだ。だが、


「どれ…………へぇ~、よく出来てるなあ。でも惜しいね。『零』なんてレベルは組合(ギルド)にはないんだよ。まあ、他の目が節穴な門番だったら騙せたかもしれないけど、私の目は欺けなかったね」


 とニッコリ笑って抜かしやがった。


 お前の目が節穴なんだよ! あるんだよレベル零! お前が知らないだけだよ!


 と怒鳴りつけたかったが、俺も(中身は)大人。ぐっと堪えて説明したさ。

 レベル零制度の存在と、俺が数十年振りの制度適用者である事を。

 そしたら今度は、


「そっか。お嬢ちゃんはすごいんだなー。でもごめんな? 俺、今仕事中なんだ。一緒に冒険者ごっこはできないんだよ」


 と来やがった。


 さすがの俺も切れたね。

 元来た道をダッシュで戻って冒険者組合(ギルド)に向かい、運よく受付にいたクリスさんに事情を説明して一筆書いてもらった。

 俺が言っても聞かないなら、組合(ギルド)の職員の人に言ってもらえばいいと思ったからだ。

 本当は一緒に来てもらえればよかったんだろうけど、まあクリスさんも忙しい。一筆もらえただけで御の字だ。


 で、これなら文句もねえだろ! ……と思いながら門番に手紙を渡した訳だが。


組合(ギルド)職員の書状? 駄目だぞそういう事したら。そういうのを『偽造』っていうんだ。悪い事なんだぞ? 今回は見なかった事にしてあげるから、おうちに帰りなさい」


 中身を見もしないでそんな事をほざきやがった。


 偽造じゃねえよ! 本物だよ! なんか印鑑っぽいの押してたぞ! あれ多分組合(ギルド)の正式文書である事を示すもんだぞ! ちゃんと読めよ!


 どれだけ言っても受け取ってすらもらえなかった。


 もうね。悔しくて、悲しくてね。

 前回の勇み足はどこへやら。トボトボと組合(ギルド)に戻って、クリスさんに再度説明しようとした時に堪えきれずに泣いちゃったんだよね。


 そしたら突然、数席離れた場所の受付嬢さんが鬼の形相でガタッ! って立ち上がって『ちょっと迷宮に行ってきます!』って言って駆け出そうとして周りの職員さんに止められたんだよ。

『やめなさいアリューシャ! あなたは関係ないでしょ!』『そんな事関係ないです! 冒険者の子が不当な扱いを受けているんです! 組合(ギルド)の人間としてここは動かないと!』『そう思うならまずは目の前の仕事をきっちりやりなさい! あなたがそんな殊勝な事考えてる訳ないでしょう! いいから座りなさい! いえ、だれかここ代わりに入って! アリューシャはこっち来なさい!』『いやああああああ! お近づきになる絶好の機会なのにいいいいい!』

 とか言い合いながら奥に連れ去られていった。


 そこの受付にいた冒険者の人も俺みたいに泣きついたのかな?

 まあそうだとしても、受付対応中の人を置いて行こうとするのは、ちょっといただけないよなあ。


 そんな一連のやり取りを俺と一緒に見ていたクリスさんは、さっきまでのキリッとしていた様子とは違う、なんだかとても疲れた顔で『私が同行します。組合(ギルド)職員が同行すれば、さすがに門前払いになる事はないでしょう』

 と言ってくれた。


 ご迷惑おかけします。


 で、クリスさんと一緒に三度迷宮に向かい、ようやく迷宮に入る事が出来た訳だ。


 いやー、帰り際にクリスさんが、ニッコリ笑いながら『今回の件につきましては、組合(ギルド)として領主様へ報告させていただきますね』って門番に言ってたのが怖かったなあ。門番の人、真っ青になってたし。美人の笑顔って怖いよね。


 普段だったら『ご愁傷様です』って思う所だが、今回に限っては『ざまあああああああ!!』ってなったね。


「あー、やばい。思い出したらまた腹立ってきた」


「も、もう大丈夫だよ! クリスさんも報告してくれるって言ってたし! 嫌な事は忘れて、迷宮攻略頑張ろう!? ね!?」


「………………うん。そうだね。時間はかかったけど、とりあえず迷宮には入れたわけだし、ここからが本番なんだ。気合入れていかないとね」


「そうそう! 目指せ〈魔銀〉!」


「よし、行こうおねーちゃん!」


「おー!」


 ぐぅ~~~。


「…………先にお昼食べようか」


「…………そうだね」


 くそう! 門番め!


 ……。


 …………。


「では改めて、迷宮攻略するよ! ガンガン行こうぜ!」


「おー!」


 入ってすぐに出るのは癪だったので、迷宮の入口に入ってすぐの場所で食べる、という無駄極まりない上に虚しい事この上ない昼食を終え、改めて迷宮攻略を開始するべく、声を上げた。


 シフト調整での休暇は七日が限度だったからな。サクサク行かないと。


 いやまあ、ルナ以外のメイドは、俺やメリアさんの指示にはノータイムで『イエス』って言うから、伸ばそうと思えばいくらでも伸ばせるんだけどね。さすがに雇用主側として、それはいかん。という事で。必死こいて調整した結果、七日間の休暇と相成った訳だ。


 まあ、迷宮攻略中も、何かあったら【念話】で報告するように言ってあるから、多分大丈夫だろ。


 そしてついでに、俺とメリアさんは強引なシフト調整の反動で、休暇後は十三連勤となった。


 …………休暇って、心身を休める為にある物じゃなかったっけ? 肉体、精神共に疲労する迷宮攻略って休暇中にやる事なのだろうか。気分的には休暇じゃなくて出張だ。社外でお仕事的な意味で。

 ……って事は俺達、実質二十連勤…………?


 いや、これ以上考えるのはよそう。悲しくなるし、モチベーションも下がっちゃう。


 ちなみに、俺達が現在いるのは第一層。

 ここは、エントランス的な位置づけなのか大部屋になっており、魔物が出ない安全地帯となっているらしい。

 全面石造りの部屋は、明かりとなる物が存在しないにも関わらずほんのりと明るく、ある程度の視界は確保されている。

 石材自体が光っているのかな? さすが異世界。不思議だ。


 入口からまっすぐ進んだ先の壁の一部にぽっかりと穴が開いており、近づいてみると階段になっていた。ここから次の階層へ降りるようだ。


「じゃ、行こうか、おねーちゃん」


「だね。よーし! がんばるぞー!」


 迷宮は、魔物が現れる第二層からが本番だ。と聞いた。

 ここからは気を引き締めていこう。



 第二層。


 階段を降りた先には、幅、高さ共に五メートルほどの通路がまっすぐ続いており、大分遠いけど突き当り壁が見える。パッと見行き止まりだな。

 まあ、さすがに行き止まりって事はないだろうから、直角にカーブしているか、丁字路になっているんだろう。むしろそうじゃないと困る。


 いつ戦闘になってもいいように、結界を張り、【翼】を展開する。

 まあ【翼】は広げたままだと邪魔極まりないから、畳んでおくけど。


「それじゃあ、先行するから後ろよろしくね」


「ええ!? レンちゃんが前歩くの!?」


 メリアさんにめっちゃ驚かれた。

 まあそうだね。幼女と成人女性の組み合わせで、幼女が前衛って普通に考えればおかしいよね。


 でもね、俺達にそれは当てはまらないのだっ!


「もちろん。俺には結界があるからね。俺が壁役になって耐えてる間に、おねーちゃんが攻撃! うん。完璧な布陣じゃない?」


「………………頭では理解できてるんだけど、心が理解を拒んでる……っ!」


 苦悶の表情でメリアさんが頭を抱えてしまった。

 そうね。絵面はよろしくないからね。でもこれは譲れないんだ。


「俺が前に出れば、おねーちゃんは比較的安全に攻撃できるでしょ? 適材適所だよ。俺、攻撃苦手だしね」


 見た目はどうあれ、俺だって男なんだ。女性の前でいいとこ見せたくなったりもするさ。

 ほんとは華麗に魔物を倒していくのがいいんだけど、俺、そっちは無理そうだから。


「…………………………わかった。でも。でも! 絶対無理しない事! あと、私が危ないって思ったらどんな状況でも逃げるよ! レンちゃんが何て言っても、抱えてでも逃げるからね!」


 頭を抱えていたメリアさんは、長い沈黙の末、俺が前に出る事を許してくれた。

 同時に条件も提示されたが、俺としても全く問題ない内容だったので大丈夫だ。

 ちゃんと抱えてくれる辺り、メリアさんの優しさが伺える。普通なら『引きずってでも』って言うからね。


「もちろん。俺だって痛いのは嫌いだし、死にたくないからね」


「ルナを助ける時に、魂を削るとかいう、下手したら死んじゃうような事をしでかした挙句、突拍子もなく、長ーい針を自分の足に突き刺した子が何か言ってる…………」


「あ…………いや……その…………」


 えーっと……。あ、あれは不可抗力! そう! 不可抗力だから!

 直前にレストナードに殴りかかったりして、色々高ぶってたんだよ!

 というか、同じ状況に陥ったら誰だってああするよ! だから、俺は悪くねえ!


「ゴホンゴホンッ! …………まあ、危ない事はしないから安心してよ。結界の強度はおねーちゃんも知ってるでしょ?」


「まあ、そうだけど……」


「だったら問題なし! さあ! 攻略開始だ!」


 困る話題はぶった切るに限る!

 いざ行かん! 〈魔銀〉を求めて!


 現在進行形で、じっとりした視線を背中にビンビン感じてるけど、気にしちゃ駄目だ!

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