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第55話 行動を開始した。移動しただけで終わった。

いつの間にやら、総合PVが50000を超え、ユニークPV12000を突破、さらに評価Ptも600を超えておりました。

ありがとうございます!

これからも投稿を続けさせていただきたいと思いますので、応援よろしくおねがいします!

「で、これからどうするの?」


 ルナのアイディアを採用し、ルナの【いつでも傍に】に便乗する形で俺の元に来た、メリアさんが訪ねてきた。

 そのメリアさんは今、冒険者として依頼を受けるときの恰好をしている。完全装備だ。

 ぶっちゃけ最近は、冒険者資格が剥奪されないように、一ヶ月に一回、簡単な採集系の依頼を受けるくらいなので、ちょっと見慣れない感じがする。

 かくいう俺も、メリアさんが持ってきた防具を、一緒に持ってきてもらった衣服の上から装備している。貫頭衣だと裾がヒラヒラして動きにくいし、【魔力固定】で作った物だから強度が低くてすぐ破けちゃうからね。

 といってもコートはないから、短パンとチューブトップだけで、その上から防具を装着している。


「とりあえず、この建物は速攻で制圧したいね。間取りが全くわからないのがきついけど。どうしよっかな……」


 ここに連れられてきた時、寝たフリしてたからね。仕方ないね。

 まあ分からない所はどうしようもないので、現状で取る事ができる作戦を考えてみる。

 といっても、俺は戦術家じゃないし、戦力も少ないので、思いつく物は限られている。というか二つしか思いつかない。


 一つ目は、一人が入口を封鎖して、その間にもう一人が敵を制圧するという物。

 メリットは、入口を封鎖する事で、敵の逃亡を防ぐ事ができる事。

 デメリットは、入口の封鎖をする人はそこから動けないので、残り一人が、実質単騎で制圧を行わなければいけなくなる事。


 二つ目は、単純に二人で速攻を仕掛けて瞬時に制圧してしまうという物。

 メリットは、制圧の人員が二人になるので、単純計算で一つ目の案の半分の時間で制圧が完了できる事。

 デメリットは、入口ががら空きなので、敵を逃す可能性がある事。


「…………二人で速攻を仕掛けよう」


 思案の末、二つ目の作戦で行くことに決めた。

 本来であれば、一つ目の案の方が確実性が高いとは思うが、『間取りが分からない』というのが効いてくる。

 脱出路として機能するのが、俺が運び込まれた入口だけとは限らないのだ。他に脱出路があった場合、一つの入口を封鎖してもあまり意味がない。この建物の外の状況も分からないのだ。できればこの建物の中で全員無力化してしまいたい。


「二人って事は、レンちゃんも動くの?私としては、ここで待っててもらいたいんだけどなあ……」


「俺も、できれば行きたくないけどさ」


 メリアさんが口を尖らせているのを見て、俺は苦笑いを浮かべた。

 まあ言いたい事は分かる。相手の人数も実力も不明なこの状況で、こちらから打って出るというのはそれなりに危険だ。

 そんな場所に俺を連れていくのが嫌なんだろう。

 俺だって、行かなくていいなら行きたくない。戦闘なんてしたくない。

 以前、ジャンにゴブリンの巣に連れていかれた時に身に染みた。この世界に来るまでは、戦闘とは無縁だったんだ。違う世界に来たからといって、サクサクと戦闘や殺しが出来るようになる訳がない。

 だが。


「俺、あの子に『お救いください』って言われたんだよ」


 この場から連れ出して、屋敷に匿った。一応これでも『救った』事にはなると思う。

 でも、どうせ『救う』なら、しっかりと『救って』あげたい。

『なんとかあの場から逃げおおせた』よりは『自分を攫った奴らが皆捕まった』の方がより安心で、より『救った』事になるだろう。


「まあ結局の所、俺の自己満足って奴だよ。『逃げ出した』じゃ満足できないし、気にくわない。しっかり『潰して』やりたいってだけ。その為に使える物は使う。それには俺自身も含まれてる」


「…………そっか……そっかあ…………うーん」


 そこまで話した所で、何故かメリアさんが考え込み始めた。あれ?俺、なんか悩むような事言ったっけか?


「おねーちゃん?」

「…………」


 無視されてしまった。俺の声の声が聞こえないくらい考え込んでいるらしい。

 しょうがないので、メリアさんが再起動するまで、出来る事をやっておく事にしよう。


(ルナ。ちょっといい?頼みたい事があるんだけど)


(はい。なんでしょう?)


(そろそろこっちは動き始めるから、救助隊を編成してもらえるように掛け合ってもらえる?あとついでに、メリアさんがここにいてもおかしくなさそうな理由も考えておいて)


(救助隊については畏まりましたが……(マスター)がそちらにいる理由、ですか?…………【いつでも傍に】の事は)


(もちろん、秘密)


(ですよねえ。…………畏まりました。なんとかそれらしい理由をでっちあげます)


(よろしく)


 これで、こいつらを制圧した後始末も問題ないだろう。

 制圧した後、ここに放置していく訳にもいかないし、【いつでも傍に】で屋敷に直行するのもよろしくないからな。

 正規の手順に則って動いた方がいいだろう。


 メリアさんに目を向けると、まだ考え事が終わってないようなので、今の内に準備を進めておく事にした。


 まず、【魔力固定】で小さめの〈拡張保管庫〉を作成し、あちこちの牢屋から鉄製品を拝借していった。


 俺の武器はコートの〈拡張保管庫〉に保管している為、コートが奪われている今、俺には武器がなかった。その為、鉄製品を回収して【金属操作】で成形、棒を作成して代替品とする事にしたのだ。


 で、〈ゴード鉱〉の感覚で作ったせいで、鉄製の棒は重すぎて持ち上げられなかったので、鉄パイプのように中空にする事で解決した。余った鉄は急ごしらえの〈拡張保管庫〉に突っ込んでいく。


「…………よし、決めた!」


 そこまでやった所で考え事が終わったらしく、メリアさんが声を上げた。


「あ、終わった?何を決めたの?」


「んー?大した事じゃないよ。レンちゃんは気にしないで大丈夫!」


「…………ソウデスカ」


 じゃあ今考えなくてもいいだろ!という言葉を俺は飲み込んだ。

 考え事が終わってから、何故かメリアさんのやる気がとても上がってるからだ。ふんす!と鼻息荒く、小さくガッツポーズなんかしている。

 ……まあ、やる気が上がってるなら、無理に聞かなくてもいいかな?無理矢理聞いた所為でテンションだだ下がり、とかなられても困るし。


 とりあえず準備が終わったので、俺達は地上に通じる扉の前に移動した。


「じゃあ、一、二の三で飛び出すよ。私が先に出るから、ついてきてね」


「うん、分かった…………いや、ごめん。ちょっと待って」


 いざ戦闘が始まるって段階になって、恐怖が込み上げてきた。足が震える。

 ついさっき啖呵を切ったばかりなのに、情けない事この上ない。


 だがしょうがないだろう。なんてったって、俺の結界は無効化されたんだから。


 自身を安全な場所に置き、身を守る事ができるなら、恐怖は大分抑えられる。だが今回は、自身の安全の担保たる、結界が役に立たない。

 威力が高すぎて破られたならまだいい。……いやあんまり良くないけど。でも存在しないかのように素通りされるよりはましだろう。


 少なくとも、無効化される可能性がある限り、結界に頼ることはできない。それが恐怖を助長する。

 結界が役に立たないなら、なんとか他の手段で自身の身を守らないといけないのだ。何か結界の代わりになる物を考えなくちゃいけない。

【身体強化Ⅱ】を使えば、相手の攻撃を避けれるかな?

 〈拡張保管庫〉に入っている鉄を【金属操作】で変形させれば、盾にできるかな?

【熱量操作】で自分と相手の間の空気を一気に膨張させれば、相手を吹き飛ばして安全に距離を取れるかな?

【魔力固定】で縄でも作って足に引っかければ転ばせたり出来るかな?


 …………あれ?割りといけるんじゃね?結界なくても大丈夫じゃね?

 自身の持つ手札を見直してみたら、そこまで怖がる必要もないんじゃないかと思えてきた。

 ……というか、列挙してみて思ったけど、俺、【能力】(スキル)多すぎじゃね?この世界って基本一人当たり【能力】(スキル)は一つじゃなかったっけ?


「……うん、多分大丈夫」


 再認識した自身のチートっぷりに驚愕しながらも、メリアさんに返事を返す。いつの間にか足の震えは止まっていた。


「……うん。大丈夫そうだね。震えたままだったら置いていこうと思ったんだけど」


 メリアさんはちょっと残念そうにそう言ったが、すぐに頭を切り替えたようで、表情を真剣な物に戻し、扉の前に立った。


「じゃあ、いくよ……。一、二の、三っ!」


 カウントの終了と同時に扉を蹴り破り、メリアさんが飛び出した。


「な!?てめえどこか――――ごふっ!?」


 地下に下りようとしていたのか、扉の近くに立っていた男の腹に、メリアが強烈なボディブローを叩き込む。


 崩れ落ちる男のすぐ横を通り抜け、俺は建物の奥――――男たちが集まっているテーブルに突っ込んでいく。

 円形のテーブルに着いているのは全部で四人。まずは一番近い奴を狙う!


「おおおおおおお!」


 こちらに背を向ける形で席に着いている男に向かって走り込みながら、腹の底から声を出して気合を入れる。

 そこまで距離が離れている訳ではなかったので、あっという間に棒の射程圏に入った。


「おらああああ!」


 棒をフルスイングする為に大きく振りかぶり――――。

 俺の横を、大きな『何か』が猛スピードで突っ切っていった。


「ぎゃ!?」「ぶべ!」「ごっ!」


 その『何か』は、そのままテーブルの四人に突っ込んでいき、椅子とテーブル諸共まとめて吹っ飛ばしていった。

 そのまま勢いよく壁にぶち当たり、小さくバウンドして床に突っ伏す五人。


 ………………ん?五人?


「…………」


 無言で後ろを振り返ると、そこには()()()()()()()()()()()()()でこちらを見ているメリアさんの姿が。

 ついでに言うと、一番最初にメリアさんがボディブローをかました男が、メリアさんの側にいない。


「ぃよし!命中!」


 メリアさんはあろうことか、近くにいた男を投げつける事で、離れた場所にいた相手を一気に無力化したらしい。

 俺は視線を戻し、倒れたままの男たちを見る。正確には、メリアさんに砲丸代わりにされたであろう男を。

 …………うん。筋骨隆々だね。身長も二メートルはあるんじゃないかな?体重も百キロを余裕で超えてそうだ。

 メリアさんのポーズ的に、あれを片手で投げたって事だよね?ボールみたいに。


「上手くいった上手くいった!うん!これなら、レンちゃんが危ない目に会う事もないよねえ。私、冴えてるう!」


 やたらテンションが高くなっているメリアさんの言葉の内容的に、突入前に考えていたのはこの事のようだ。

 つまり、

『レンちゃんが相手にたどり着く前に私一人で全員倒しちゃえば、レンちゃんに危険が及ぶ事もないよね♪』

 って事だろう。


 …………いや、まあ、うん。


 そこまで大事にされてる事は嬉しいと思う半面、ちょっと愛が重すぎないかな?と思う俺だった。

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