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第129話 ジャンに説明した。メリアさんの隠された特技を知った。

活動報告にも書かせていただきましたが、100万PV達成記念と致しまして、本日より数日間、毎日投稿させていただきます!

投稿日時はいつも通り11時です!よろしくお願いします!

「そこまで俺に話して、お前は俺に何を要求しようって言うんだ?」


 教えていなかった【能力】(スキル)である【いつでも傍に】の情報と、俺達が住んでいる屋敷についての事を話した所、ジャンは鋭い目つきで俺を睨みながらそう問うてきた。

 室温が少し下がったかのような錯覚に囚われながらも、俺もしっかりとジャンの目を見ながら、その問いに答えた。


「………………いや、何もないけど?」


 その瞬間、ジャンは何かに滑ったように体勢を崩し、同時に部屋内に立ち込めていた変な空気も霧散した。

 いや、こっちから一方的に情報を提示しておいて、『聞いたな? じゃあ俺の言う事を聞け』とか、詐欺じゃん。そういうのは前もって話を通してからするもんでしょ?


「ああ、そうだそうだ。今の話、言いふらさないでね? 特に屋敷周り。この屋敷、侯爵様の屋敷より大きいから、バレたら面倒な事になりそうだし」


「まじか……。上位貴族の屋敷よりでかいのかここ……。って、転移の【能力】(スキル)の方はいいのかよ? そっちの方が色々ヤバイと思うんだが……」


「まあ、そっちも隠しておいてほしいのは事実だけど、転移には色々条件があるからね。そんな便利なもんじゃないんだよ」


【いつでも傍に】はホムンクルスかメリアさんがいる場所にしか転移できないからね。現状だとイースと屋敷にしか行けないのだ。あちこちに転移できるようにするには、各所にメイド達を配置しなければならない。常時人員不足な現状で、そんな事出来る訳ないよね。


「その条件がどんなもんか聞いてねえからなんとも言えん所だが…………まあ良い。言われなくても言いふらしたりはしねえよ」


 そう言ってジャンは視線をチラッと横にずらした。その先は…………。


「うん? どうかしたかえ?」


「い、いえ……。なんでもないです…………」


 視線を向けられて小首を傾げる狐燐と目が合い、ちょっと口ごもりながら視線を逸らすジャン。


 あー、なんとなくジャンが何を考えてるか分かった……。恐らく、自分が情報を漏らした事で、狐燐に危険が及ぶ可能性を考えているんだと思う………………けど、それは気にしなくて大丈夫だと思うよ? 少なくとも狐燐、ジャンよりも強そうだし。でっかい炎で出来た狐だからね。大怪獣ですよ大怪獣。


「…………お主、何か失礼な事を考えなかったかの?」


「いや? 何も」


 狐燐から向けられるジットリした視線を、顔ごとジャンに視線を向ける事で回避する。

 ……ついでに、ジャンの言葉に対しての返答もしておこうかな。うん。


「まあ、言いふらさないでいてくれるんなら、いいよ。……ああそうだ。あの子達を見かけたら、ちょっと目を掛けてくれると嬉しいかな? もちろん、無理のない程度に、少しだけ気にしてくれるだけでいいから」


 あの子達には、教育を施した上で俺達の仕事を手伝ってもらおうと思っている。仕事を手伝ってもらう時は、お目付け役としてメイド達を付ける予定ではあるけれど、見守る目は多いに越した事は無いからね。

 ……前の世界での俺の常識で考えると、最年長でさえ十一歳程度の子供に仕事をさせるとか鬼畜の所業だが、ここは前の世界での価値観は通用しない。なんてったって、特例とはいえ、六歳の子供が冒険者なんていう危険な職業に就けるくらいだからね。俺の事だけど。


「それくらいなら、まあ、構わねえとは思うが……あいつらにも聞いてからでいいか? 俺の一存じゃ決められねえ。…………後、出来ればさっき聞いた話も共有しておきてえんだが……」


 ジャンの言う『あいつら』というのは、パーティメンバーの事だな。まあ当たり前の話だ。頻度や程度こそ低いとはいえ、子供達を見守る事で多少なりとも時間が取られる可能性があるんだ。パーティメンバーへの共有は必要だろう。そっちについては構わない。だが…………


「【いつでも傍に】と屋敷についても? それって必要なの?」


 俺が疑問に思った事と同じ事を、代わりにメリアさんが聞いてくれた。

 共有する内容としては『レン達が子供を保護したらしいから、ちょっと目を掛ける』くらいで問題ないような気がする。色々穴だらけではあるけど、詳細は『知らない』で通せると思う。ジャンのナンパ癖は皆知ってるし、狐燐との出会いからの一連の流れを説明すればそれで通りそうなもんだけど……。


「ああ。出来ればそっちも話しておきてえ。レーメスとキースは問題ないんだが……。レミィとセーヌがな? お前達がどこに住んでいるのか気になってるみたいでよ、ちょくちょく探し回ってるみたいなんだよ……。そんな状態で、俺だけがお前の住処を知ってるなんて事がバレたら……」


「おおぅ…………なるほど」


 ちょっと体を震わせながら答えるジャンの言葉に、俺は頷きを返す事しか出来なかった。


 自分で言うのもなんだが、俺達はあの二人に結構気に入られている。実際、〈鉄の幼子亭〉に二人がやってきて、食事がてら駄弁っていく事がちょいちょいある。その時、俺達がどこに住んでいるのか聞いてくる事があり、その度に煙に巻いていたのだが、そんな行動を起こしているとは知らなかった。隣に顔を向けるも、俺の視線に気づいたメリアさんは首を横に振った。メリアさんも知らなかったようだ。

 で、そんなお気に入りだけど謎が多い相手の、よりにもよって住処の情報を、同じパーティメンバーが知っており、それを隠していたと知ったら……。怖すぎて考えたくないな。


「う、うん…………そういう事情があるなら、いいよ、教えても。でも、それより先に漏らすのはやめてね? 面倒が増えそうだ」


「すまん、助かる…………。それについては良く言って聞かせるから大丈夫だ。『漏れたら二人の身に危険が及ぶ可能性がある』とでも言っておけば下手な事はしねえだろ」


「ん。よろしくね」


 パーティメンバー以外に情報を漏らさない事を約束してもらったところで、ジャンがおもむろに椅子から立ち上がった。


「よし。それじゃ、俺は戻る。早めに教えておかねえと危険だからな……俺もお前も」


 え? 俺も? 俺も危険なの? ……なにその意味深な視線。やめて。そんな目で俺を見ないで。どう危険なのかすっげえ気になるけど怖くて聞けない。いや聞きたくない。

 …………よし、気づかなかった事にしよう。で、なんかあったら全部ジャンにひっ被せてやる。ジャンはパーティのリーダーなんだから、それくらいやってもらってもおかしくはないよね? 俺はパーティメンバーじゃないけど、そこはほら、仲間って事で一つ。


「なんかすっげえ嫌な事考えてねえか……?」


「気のせいじゃない? そんじゃま、〈鉄の幼子亭〉まで送るよ。ん-っと……」


「妾が送るのじゃ。良かろ?」


 ジャンからの問い詰めるような視線を全力でスルーしつつ、ジャンを〈鉄の幼子亭〉に送る為の人員を確保しようとした所、今まで無言を貫いていた狐燐が名乗りを上げた。まあ、狐燐も【いつでも傍に】を使えるし、わざわざ別の人を呼ぶのも無駄だし、俺としては有難いけど…………。でも狐燐、子供達の事、気にならないのかな? 泣く程心配してたのに。


「うん。狐燐が良いならいいけど。じゃあ頼めるかな?」


「任された。ではジャン殿、行くのじゃ」


「はい。コリンさん、よろしくお願いします。……じゃあ、またな」


「うーい」


 そこで、【いつでも傍に】を発動する為にジャンの隣に移動した狐燐が、こちらを振り向いた。


「ご主人、レン殿。湯浴みが終わったら、あの子達を寝かしつけてやって欲しいのじゃ」


「? いいけど……そんな事頼むくらいなら、ジャンを送るのは他の子に任せて、狐燐が側にいてやればいいんじゃないの? というかジャンを送るだけなんだから、そんなに時間かからなくない?」


 送るって言ってもわざわざ〈土竜亭〉まで着いていく訳じゃないだろうし、下手したら一分もかからず戻ってこれるんじゃないの? さすがにそんな早く上がって来ないと思うよ?


「いやまあ、それはそうなんじゃが……その、のぅ…………察せ」


「????」


「ん。りょーかい。任せてコリン」


 何故か口をもにょもにょさせて口ごもる狐燐の様子に首を傾げていると、俺の代わりにメリアさんが狐燐のお願いに答えた。俺と違って、メリアさんには狐燐の言いたい事が伝わったらしい。


「では頼む」


 ホッとした表情でそう言って、狐燐とジャンは俺達の前から消えた。【いつでも傍に】を発動してジャンをイースに送ったんだろう。


「おねーちゃん、どういう事? 意味がサッパリ分からないんだけど……」


「ん? いやほら、あの子達みんな眠そうだったでしょ?」


 俺の質問に対するメリアさんの答えは端的で、且つ俺の認識とは異なる物だった。

 え? そうだったっけ? まあイゾルデちゃんが大分やばそうだったのは分かったけど。他の子達にそんな雰囲気は全く感じなかったけど……。


 改めて子供達の様子を思い出してみるが、記憶の中の子供達にそんな素振りを見出す事は出来なかった。

 必死に考えるあまり首を傾げる角度が深くなった俺を見て、メリアさんが噴き出した。


「あははは! そっか、分からなかったかー。まあこればっかりは子育ての経験がないと難しいのかもしれないねえ。さすがにイゾルデちゃんはがっつり態度に出てたから分かったと思うけど、他の子達も似たり寄ったりだったんだよ。出来るだけ態度には出さないようにしてたみたいだけど、お腹一杯になったのもあって気が緩んじゃったみたいだねえ」


 …………まじかー。全然気づかなかった。これが子を持つ親の洞察力って奴なのか。すげえな親って。

 親という存在のすごさに感嘆している俺を他所に、メリアさんの話は続く。


「……で、それはコリンも気づいてたんだけど、コリンにとってあの子達は可愛くて仕方がないみたいで、お風呂上りの子供達を見たら、抑えが効かなくなって構い倒しちゃうと思ったみたいだねえ。だからこそあえて離れる事で、これ以上子供達に負担がかからないようにしたって訳。子供達のお風呂を手伝わなかったのも同じ理由みたいだねえ」


「…………いやなんでそんな事まで分かるの。俺の知らない内に話でも聞いたの?」


「え? コリンも結構態度に出てたよ? あれくらいハッキリ出てたら分かるでしょ?」


「いや分からないから」


 あっけらかんと答えるメリアさんに俺は即答した。分かる訳ないから。


 そんな細かい情報が漏れる態度って何? どんな態度?

 メリアさんの常識外れの洞察力にドン引きしつつ、メリアさんに隠し事が出来なさそうだと内心嘆息する俺だった。

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