表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/25

第六羽:今は甘えて

厳しい世界。一つの油断が大きな事態を呼ぶことも

「うーん、風邪ですね。お薬を飲んでちゃんと休んで下さい」


 お医者さんの言葉が頭の中をぐるぐる回る。完全に油断した。


 

 その日の朝は強烈な寒波が襲い、見事に風邪をひいてしまった。寝る前のシキミドリは夏を示す緑色だったので、夜中に冬へと急変した事になる。見事に薄着のまま眠りに就いてしまい、結果はこの有様。

 やって来たお医者さんに絶対安静を言い渡され、今は自室で寝かされている。

 

 寒気、発熱、頭痛で気持ち悪い。ここまで盛大に体調を崩したもの久しぶりだ。

 コンコンとノックが聞こえてくる。


「はい……」


 カチャリとドアから顔を見せたのは予想外の人物だった。


「お、お母さん!?」


 驚いて起き上がる。何故居るのだろう?


「あぁ、ダメよ、寝てないと」


 スタスタと寄ってきて布団を掛け直してくれる。小さい時も体調を崩すとこうやって寝かしつけてくれたなぁ。


「もう、寝る時は気を付けなさいって言ってるでしょう?どんなに暑くても、ある程度着ておく! 布団もすぐ掛けられるようにもう一つ置いておく!」

「うぅ……ごめんなさい……」


 返す言葉も無い。季節が安定しないこの世界では、無防備な夜が一番危険なのに。

 

「過去には同じように、夏から冬の流れで亡くなる事もあったそうよ。風邪だけで済んで良かった……」


 きゅっと抱きしめてくれる。少し泣きそうになった。グッと堪えて気になっている事を尋ねる。


「ねぇ、偶然遊びに来たの?それともわざわざ……?」

「後者よ。ニック君が知らせてくれたの。彼がお店に遊びに寄ったら店長さんから寝込んでるって聞いて、慌てて飛んで来てくれた。元気になったらちゃんとお礼言うのよ?」

 

 やっぱりニックか。悔しいけど感謝しかない。今度おまけで何か付けよう。


「ありがとう、お母さん……」

「うん、顔見て安心した。やっぱり、会える時に会っておかないとね! 丁度良い機会だったのよ」


 ポンポンと頭を撫でてくれる。私の方も、もう少し家に帰る機会を増やそうと思った。


「じゃあ、店長さんにもきちんとご挨拶したいし、少し離れるわね。また来るから休んでてて」

「私の方はもう大丈夫だよ。家の事もあるだろうし、風邪も移しちゃいけないから」

「そんな事気にしないの! こう言う時は甘えるものなんだから」


 もう。元気が出てきたのは本当なのに。でも、ここは素直に甘える事にする。お母さんにこくんと頷いた。


「あれ、そう言えばニックは? どうせお仕事抜けてお母さん呼びに行ってくれたのなら、ついでにちょこっとくらい顔見せてくれれば良いのに」


 ピタッとお母さんの動きが止まる。


「……はぁ。ごめんね、ニック君。この無自覚おバカは……」

「?」

「あなた、間違ってもニック君に同じ事、言っちゃダメよ?」

「??」


 何か変な事を言ったのかな?しばらく考えてみたけど、結論は出なかった。

次回予告

「うわぁ~ん、返してぇ~!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ