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第十七羽:外伝3・旅立ち

二人の旅 春を求めて

 それから二人でひたすら歩いた。厳しい道中にもサクラは必死に耐え、弱音を吐く事無く付いて来る姿にはこちらが励まされる。町へ辿り着いたのは出発から三日たった朝だった。


「凄い、何コレ?」


 サクラにとっては初めてみる物ばかりだろう。町で見掛ける様々な物に歓声をあげる。


 まずはこの環境に適応する事からだな……。




 初めて冬の国の話を聞いたのはずいぶん前だったと思う。今までの旅でも特定の季節になり易い地域は沢山あったし、今回実際に訪れてもみても"寒い"くらしか感想は出て来なかった。

 でもこの子の居た雪の集落は別だ。まさかあそこまで閉ざされた世界が存在するなんて。

 おそらく救いの機会はあったはずだ。防寒対策を整えられる外部からなら、物資を送るなり、サクラのように連れ出すなりできる。

 多分、あの集落はそれらを拒絶した。厳しい環境に生きて来た彼等にとって、外部の者が語る夢のような世界は受け入れがたいものだったろう。私ですら思う。


 なんて不公平だ……


 今まで自分達が苦しんできたのは何だったのかと絶望するだろう。穏やかな世界を受け入れると言う事は、長い間耐えてきた彼等の歴史を否定するに等しい。

 残念だがあの集落はいつか滅ぶ。可哀想だとは思わない。それがあの集落が選んだ道だ。サクラや、サクラの父親のように、勇気を出した者だけが生き残る。それだけの事だ。



 まずは私の泊まる宿で身なりを整え、父親の居る病室へ着いたのは昼前だった。父親は会うなりサクラを抱きしめ、頻りに謝り続ける。

 サクラもずっと堪えていたのだろう。ようやく安心したのか、声を出して泣いていた。



「本当になんとお礼を言ったら……こんな無理な願いを叶えて下さり、ありがとうございます」

「いいえ。これからどうされますか……?」


 父親は俯く。


「少なくとも、足は凍傷で使い物になりません。見慣れない文化もあり、正直途方に暮れています。でも、サクラが来てくれた。この子が無事で居てくれただけで、なんとしてでも生き抜いていく理由になります。出来る事を見つけて、頑張って行きますよ」


 強いな。だからこそ私は願いを叶えてあげたいと思った。


「そうですか……どうか、ご無理はなさらず。では、私はこれで」

「え?ちょ、ちょっと待って!」


 やはり来たか。予想はしていた。


「わ、私を旅に連れて行って! 私は春を見つけたい! 一緒に見つけて下さい!」

「や~だよ。父上はどうするんだい? 旅費は? 荷物は?」

「うっ……」


 ポンと頭に手を置く。


「焦ら無くて良い。君はまだ動き出したばかりだ。まずは外の社会を学びなさい。父上を支えてあげなさい。お金も貯めて、旅に関する知識も必要だ」


 サクラはたじろぐ。旅と言っても気楽なものばかりでは無い。無責任に連れては行けないのだ。


「だから、サクラ。一つ約束をしよう。全てが安定して、父上の許しを貰えるようになったら私を呼ぶんだ。その時は君と一緒に旅をしよう。春を探そう。それまで、我慢してくれるかい?」


 サクラは俯く。


「……うん。確かに今付いて行っても足手纏いだ。それは嫌だ」

 

 よしよしと頭を撫でる。大丈夫。君は必ずやり遂げる。私は紙に町とお店の名前を書いた。


「ここに連絡をくれたら飛んで行くよ。待っている」


 サクラは紙を受け取る。力強く頷いた。


「何て書いてあるんだろう?」

「それも課題……と言いたいところだけど、特別に教えよう」


 みんな、元気にしているだろうか……


「レスト・パーチ」


 さぁ、私も帰ろう。家族の元へ。







 



 帰りの馬車。別れ際、サクラは手を振り、父親はぺこぺこと頭を下げてくれた。どうか、二人には新しい生活で幸せになって欲しい。


 ふと荷物から1枚の羽が落ちた。 


「あぁ、フォウのか。付いてたんだな」


 その羽を拾う。一瞬手が止まる。


「これは、驚いたな……」


 拾った小さな羽は黄色に輝いている。


「フォウは青い(・・)鳥だった……」


 一緒に居る間、季節が変わる事は無かった。だから気が付か無かった。


「フォウ……初めて見たよ……生きているシキミドリ……」


 これは、ちょっととんでもない事になりそうだぞ……











 数年後、私の元へ手紙は届いた。


「"準備ができました。待っています"か……ごめんね、メグル……せっかく来てくれたのに……」


 せめて託そう。私に何かあった時のために。あの羽を。


 さぁ、行こう。おそらく、最も過酷になる旅へ……!


 


 


 

次回予告

「あいつには無理だ」

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