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第十一羽:追跡者

いつもの風景 なにやら不穏な空気が……

「……」


 気のせいだろうか? いや、これは……


 私は今お使いに出ている。ちょっとした日用品の買い物を済ませて、その帰り道の途中だ。


 少し前から何か視線を感じる。気のせいだと思ったけど、視線だけでは無く、明らかに気配も感じる。

 まさか、シキミドリの事が誰かにバレて、ニックが危惧した通り狙われいるのだろうか?

 でも外で取り出す事はほとんど無いし、もちろん口外もしていない。徐々に不安と恐怖が襲って来る。

 出来るだけ人通りの多い道を選んでお店に急ぐ。怖い、怖い!


 突然肩をポンと叩かれる。背筋がぞわっとした。


「っわぁぁ!! ごめんなさい、ごめんなさい! これはどうしてもあげられ無いんです!」

「……どうした?」


 ……ニックだった。


「裁縫用の糸に布、汚れ落とし(石鹸)……別にいらないし、取りやしないけど?」


 勝手に籠の中を見ないで下さい……。でも一気に恐怖心から開放される。


「な、何か視線を感じて……良かった……」

「……どこからだ?」

「ずっと後ろから。詳しくは……」


 そこまで言うとニックは突然走り始めた。はい?


「見つけたぞぉ、おらぁー!!」 


 人目をはばかる事なく全力疾走。みんなびっくりしてるよ、ニック……


 すると、ちょっと離れた場所から声がした。


「ふわぁぁ! 見逃してぇ! お願いしますよぉー!」


 声のする方を見ると、誰かが走って行くのが確認出来た。あれは……


「ま、待って、ニック!」


 急いで二人の後を追う。は、早い……




 しばらく走ると、ちょこんと座る人影とその人をお説教しているニックを発見した。


「はぁ、はぁ……二人とも早いんだもん」

「あはは、捕まってしまった!」

「あははじゃねよ」


 さっき後ろ姿を見た時に見覚えがあった。彼女はウィーノ。カームさんのお孫さん。まだ10歳で短髪と言う事もあり、受ける印象は女の子らしい、では無く”やんちゃ”だ。


「で、何で尾行なんてしてたんだよ? こいつの生活なんてつまんねーだろ?」


 むぅ、失礼な!


「別にメグルちゃんじゃなくてもよかったの。あたしは平和を護る者だから! その練習!」


「……」

「……」


 どうしよう。つまり?


「おじいちゃんはいつも言ってるよ。この町は平和だけど、他の場所では良く無い事も起きてるって。だからあたしは悪い奴らをやっつけるの!」


 悪い人をこっそり追いかけて捕まえる練習……?あのままだったらどうなっていたんだろう……


「たく、正義感が強いのは良いけどなぁ、俺に即刻見付かるだけならまだしも、こんな鈍感娘にもバレてるようじゃ駄目だろ」

「もう少しだったのになぁ」


 ニック……


「こら、ウィーノ!」

「あ、おじいちゃん!」


 どうやら騒ぎを聞きつけてカームさんがやって来た。あれだけ目立てば当然だろう。


「もうやめろよ?みんな迷惑だからさ」

「べー! あたしは研究場(・・・)に見つかん無いように入るの! じゃね、お兄ちゃん、お姉ちゃん!」


 手を振ってカームさんの方へ走って行く。カームさんは申し訳なさそうに頭を下げた。


 二人は見えなくなりニックと残される。色々言いたい。けど、まずは……


「ありがとう……」

「おう。あんな話した後だったしな」


 うん、本当は色々言いたいけど、まぁ今回だけは飲み込もう。


「さぁ、帰ろう。あ、そう言えば……」

「ん?」

 

 久しぶりに聞いた響き。懐かしいな。


「いつも心配してくれてありがとう、"お兄ちゃん"!」

「なぁっ!!」


 狼狽えるニックに手を振る。色々失礼なことも言われたので、このくらいの仕返しは良いよね?

次回予告

「すまない、お嬢さん」

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