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第十羽:連れ添う二人の

普段通りの朝 一日が始まります

 レスト・パーチの朝は早い。6時までには起きて、おじいさんとおばあさん、そして私の三人で開店準備を行う。


 おじいさんは基本的に薪割りや庭木の剪定などをしている。終わったらコーヒーカップを磨いたり、器具をお手入れしたり。よほどコーヒーが好きなんだなぁ。

 おばあさんはお店に出すパンを焼いてくれる。おじいさんのコーヒーと並んで人気です。なんでもおじいさんと一緒になる前はパン屋で働いていたそう。開店後しばらくは、お店に広がる焼き立てパンの香りが楽しめます。

 私は店内のお掃除と、時間の掛かる煮込み料理。その時の食材にもよるけれど、野菜のスープだったりお肉を柔らかく煮たシチューだったり。

 季節によっては仕事も増える。雪でも積もろうものなら、三人総出で雪かきだ。以前、雪が微妙に溶けて滑った事もあるので、雪だけは徹底して取り除くようにしている。


「さてっ……」


 今日も滞り無く準備は整い、後は開店時間を待つばかりとなる。一応もう一度店内を見渡す。うん、大丈夫!


「おじいさん、少し早いけど開けちゃう?」


 開店は9時。今は8時半を過ぎたところだった。


「いや、まだいいよ。コーヒーを煎れるから時間までゆっくりしなさい」

「はーい」


 おじいさんはそう言う所ははきっちりしている。私生活と仕事を曖昧にしないと言うか、しっかり分けていると言うか。


 おじいさんの煎れてくれたコーヒーを飲む。おいしい。何が違うのかなぁ?


「はぁ、何でおじいさんみたいに煎れられないんだろう?悔しいなぁ」

「秘訣があるからね。メグルには真似出来ない秘訣が」


 そう。おじいさんはいつも思わせぶりにそう言うけれど、肝心の秘訣とやらは教えてくれない。


「おじいさんには長年の経験があるから完全に追いつけるとは思って無いけど。せめてニックぐらいは見返したいのに」

「う~ん、ニックはただかまいたいだけで、味は気にしていないと思うがね」

「?」


 おじいさんはしばらく考える。


「そうだね。もうそろそろ教えておいても良いかもしれない」

「本当!?」

「じゃあ、明日からばあさんのパンを手伝いなさい。まずはそこからだね」


 以外な指示だった。コーヒーなのに? パン?


「その日のばあさんのパンに合うように調整しているんだよ。確かに長年の経験と言えばそうだが、メグルもそろそろ意識して練習すれば、そう遠くないうちに真似できるようになるだろう」


 な、なんと。まさかだ。どんなに煎れ方だけ真似してもおじいさんの味にならなかった訳だ。

 パンは大半のお客さんが食べていく。コーヒーも。この人気の組み合わせを絶対の物にしているのは長年連れ添う二人の絆か!


「は、はい! しっかり頑張るので、ご指導よろしくお願いします!」

「うん。じゃあ、そろそろ開けようか」


 頷いてコップをサッと片付ける。


 二人の絆か。良いなぁ。その技術を教えて貰えるんだ。しっかり受け継いでいこう。


「今日も一日、頑張ろう!」


 ドアを開けて札を営業中へと変える。



「いらっしゃいませ! レスト・パーチ、ただいまより開店です!」

次回予告

「お願いしますよぉー!」

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