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我流ナポリタン

作者: 嫁葉羽華流

「さて、飯を作るか」


 そう言って台所に立つ。

 台所はひどく狭く、歩けるスペースは畳を3つ縦に並べたくらいしかない。

 ここが私の調理場だ。

 ガスの元栓を開け、換気扇を回す。

 それからフライパンを持ち出して、フライパンをガスコンロに置く。

 まな板と包丁を取り出して、軽く水ですすぐ。

 三角コーナーにネットが仕掛けられている事を確認しながら、今日は何を食べようかと考える。


 直前までナポリタンをテーマにした曲を聞いていたものだからナポリタンを食べたくなった。


「今日はナポリタンスパゲッティにしよう」


 そうと決まればナポリタンスパゲッティを作るとしよう。

 私は鍋を取り出して適当に水を入れて火をかける。

 ナポリタンに必要なものを思い浮かべながら冷蔵庫から材料を取り出す。


「えっと、スパゲッティ麺と、ピーマン、タマネギ、ソーセージ……くらいか?」


 その他にも入れるものがあるかもしれないが、まあまあ自分で食べるのだし、いいだろう。


「そうだ。ニンジンも入れよう」


 私は曰くある人参を取り出した。

 このニンジン、どのような曰くがあるのかというと母からもらったものなのだが、母が腐る寸前までとっておいたものなのだ。

 そんなものとっとと捨ててしまえ、といったのだがまだ食えるから、といってむりやり持たされたのだ。

 これをどう調理しようかで迷っていたが、うむ。ナポリタンに入れてみよう。


 まずはナポリタンの具材だ。

 ソーセージを4つ袋から取り出し、それぞれ三等分になるように切っていく。

 次にタマネギ。皮を剥いて上と下を切っていく。

 ここで涙が出てくるのだろうが、何故か出てこない。

 いつだったかタマネギを冷蔵庫に入れておくと涙が出てこないというのを聞いたことがあったが、ひょっとしてそれなのだろうか。

 そんな事を考えながらタマネギを半分にし、大雑把に賽の目状にして切っていく。

 つぎにピーマン。学校給食ではキレイにピーマンが輪切りにされていたのを思い出して切っていくが、


「なかなか切れないな……」


 輪切りにしようと思ったらなかなか切れない。

 切ろうと思ったらピーマンが潰れ、結局輪が潰れ、途中で折れたイマイチな輪切りになってしまう。

 次はどうすればいいかを考えつつ、私はニンジンを手に取る。

 ニンジンを念入りに洗い、皮をピーラーで剥いていく。

 ……食べられるというだけあり、なるほどやばい所だけ取れば食べられそうだ。

 だからといってそのまま生ではいどうぞ、されたら流石に怒るが。

 とりあえず皮を剥いたニンジンを薄く満月切りにしていく。


 それらを準備していたらお湯ができたのでお湯にスパゲティ麺を入れる。

 が、なかなか入らない。


「ふんっ、ふんっ」


 力技で強引に入れ込む。

 くにゃり、とスパゲティ麺が曲がり、鍋に沿うように沈んだ。

 ひとまずはこれでいい。

 次は具材だ。

 フライパンに油代わりにツナ缶の油をひいていく。

 引いた後にフライパンを温める。中火で。

 こうしないとツナが弾けて腕を火傷してしまう。

 

「おっと、いかん」


 隠し味ににんにくを入れておく。冷蔵庫から急いでにんにくチューブを取り出し、フライパンに適当に入れる。

 少量入れたところでパチパチと弾ける。


「あちっ」


 ツナが弾けて火傷した。

 思わぬツナの逆襲にめげず、まずはタマネギを入れていく。

 じゅわぁ、と音を立てていく。

 菜箸でブロックになっているタマネギを崩しながら炒める。

 全体的にバラけて、きつね色になってきたらニンジンを入れる。

 ニンジンに焦げ目がついたら次にピーマン、ソーセージと加える。

 それぞれに焦げ目がついてきたら、塩コショウをパラパラとかけていく。

 さて、ここからが勝負だ。


 火を弱めて、取り出すのはケチャップ。

 これを今まで炒めたものにぶっかけていく。

 それはもう、大量に。

 でもあんまり大量はもったいないので、ここまでかな? という具合までぶちこんでいく。


「まだ……もうちょい」


 加えすぎるとケチャップの味しかしないので注意して加えていく。

 結果として。


「……入れすぎた」


 まあ、やっちまったものは仕方ない。

 ツナ缶のツナの部分を入れ込んで、中火で炒めていく。

 じゅわわわ~、といい香りがしてくる。


 この匂いをかぐと、学校給食を思い出す。

 汁気がやたら少ない、ぷちぷちにちぎれた細いスパゲティ麺。

 何故かアレがむちゃくちゃに美味しくて、コッペパンと挟んで食べたりしたものだ。

 付け合せにでてきたサラダもよかった。油にまみれているところをサラダでさっぱりとしていく。

 ……なんだかサラダも食べたくなってきた。

 だがそんな事を考える間もなく、スパゲティ麺が出来上がっていた。

 

「おっと、いかん」


 スパゲティ麺が入ってる鍋の火を止め、スパゲティ麺を湯切りして取り出す。

 硬さは中にちょっとだけ芯が残ってるのが好みだ。

 念の為確認。

 ……うまい。

 ちょっとだけの芯がしっかりと自分今麺を噛んでますよ、というのを認識させてくれる。

 とりあえず完成したスパゲティ麺を皿に入れ、塩コショウを軽く振る。

 そしてそれを混ぜて、麺は完成だ。

 そうしていればナポリタンの具材もできている。

 それぞれが絡まってなかなかに赤いカオスな状態になっている。

 それを先程の麺にかけていけば完成だ。


「ふうーっ」


 ただただ赤いナポリタンスパゲッティ。きっと本職や他の人が見たらこれはナポリタンじゃないと言われるだろうけども、私のナポリタンは今の所これが限界だ。いうなれば我流ナポリタンといったところか。

 本来なら粉チーズなんてかければいいんだろうけど、あいにくそういうのはない。

 だからとろけるチーズを急いで一枚乗せる。

 こうすれば台所をちょっと片付けている間に熱で勝手に溶けてくれるからだ。

 食卓に持っていってフォークも準備。

 飲み物の麦茶も用意してからフライパンに水を入れ、包丁とまな板を洗っておく。

 さあ食べよう、と向かってみれば。

 そこにはとろけるチーズがとろけたナポリタンスパゲッティが出来上がっていた。


「よし、できた」


 ちょっと誇らしげに声を出して、麦茶をコップに注いで、フォークを手に持つ。

 

「んじゃ、食べよう」


※――――


「いただきます」


 今日の食事は我流のナポリタンスパゲッティ一品。

 しかしこれでも満腹感はある。だからこれだけでいい。

 私はさっそく食べてみる。

 ナポリタンの具と、スパゲッティ麺を絡めて食べる。

 ふまい。

 ケチャップと塩気がいい具合のマッチ感。

 甘さと辛さが手をとって一緒に突入してくるようだ。

 一緒にやってきているのはちょっと苦さ代表のピーマンと、歯ごたえで争い合うニンジンとソーセージだ。

 一緒に噛んでいるとちょっと芯があったはずの麺がいつの間にかいい具合の麺になっている。

 これで美味いと言わずしてなんと言おう。


 ずるずると音を立てて食べていく。

 チーズ部分も一緒に食べていく。今度は辛さが抑えられてマイルドに。

 ツナがちっちゃい粗挽き肉みたいな役割を果たしてくれている。 

 タマネギも時折形がのこっているものがあり、それを見つけて食べるのもまた面白い。

 あっというまにずるずると食べ終わってしまった。


「ふぅ。ごちそうさまでした」


 両手を合わせて言った。


「さてと。片づけよ」


 私は食器を持って立ち上がって、台所へと向かった。


※――――


 私はスマホでこのナポリタンを作って食べることになった曲をかけながら食器を洗っていく。

 この曲、何度も何度もナポリタンというものだからナポリタンが頭から離れない。

 曲の内容は正統なヴァンパイアがナポリタンしか愛せない、といった内容の曲だ。

 どんなヴァンパイアだ。


「君はナポリタン、そうナポリターン、ナポリタンだよっ、そうっなぽりたーん」


 と口ずさんでいるうちに片付けが終わった。

 口の中が割と落ち着かなかったので洗面所で顔を見ると。


「あっ」


 口の周りがケチャップだらけになっていた。

 ヴァンパイアではないけれど、ヴァンパイアも血を吸ったらこうなるのか? 

 なんて思いつつ口を水で洗った。

 だがあの曲のヴァンパイアはナポリタンが好きならそれでいいんじゃないだろうか。


「美味しいものが食べられるのは、幸せなことだなあ」


 ふう、と顔を洗い終わって。

 私は、ナポリタンを食べたヴァンパイアから食べ終わった人間になった。

 ――いやそもそも。


「ヴァンパイアににんにくはいけなかったっけ」


 もしもヴァンパイアがナポリタンを食べに来たらにんにくは入れないようにしよう。私は美味しいから入れるけど。

 うーむ。喧嘩になったら返り討ちにされそうだし。

 もしも食べに来たなら、ちょっと妥協していれないことにしよう。

 あるいは一言聞いてみるか。

 ――うちはナポリタンににんにく入れるんですが、貴方はどうですか?

和田たけあきさんの「N」という曲を聞いていたらナポリタンが食べたくなったので作りました。

ついでに書きました。

ついでかよ! と思いますが美味しいのでいいじゃない。ってことで。


ちなみにこれを読んでる皆さんは、にんにく入りのナポリタンはどうです?

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