流れてくるもの
流れてきた変わったものの前に川で回収する物を説明しよう。
日頃流れてくるのは枝とか葉っぱ偶に獣の成れの果てなど大抵はいらないものだったりするが、貴重な物や使えそうな物が流れて来ることも結構ある。
上流に群生地があるみたいで香草? が主な回収物になる。これを持って帰ると父が喜ぶのだ。
……その様子に僕の収穫物を自分のに混ぜて皆に渡してるのかと考えてしまったが、実際は出来て当たり前のサイとイクが出来なかった為集落で駄目な子と評価されていた僕が、逆に出来ないで当たり前な川での回収が出来る事の証明として配ってたらしい。中々貴重な物だったらしく皆の僕を見る目が少しくすぐったかった。
不定期に流れてくる物があるという事は定期的に流れてくる物もある。
十日前後に一度子供の半分くらいの長方形をした箱みたいな物が流れてくるのだ。それを回収するのが本来の川での仕事で、漂流物の回収なども本来なら不要なのだ。
回収した板はすぐさま長の所に持っていくことになっている。
以上、が回収する物になる。
「父、仕事しなくていいの?」
「子が母並みに父に冷たい」
その日はいつもならどこかで仕事をしてる父が珍しく中天過ぎに僕のもとに来ていた。
「いや、昨日母に加工に使う葉が足りないって怒られてなかった?」
「……足らないのは俺が回るとこには殆ど無いのだ」
「それじゃあ、持ってる人に頼みに行くとか」
「だから、ここに来ているのだろう」
「? ここらに加工に使う葉が生える木などないよ?」
「母が欲しているのは子が偶に持って帰る葉だ」
「今日、流れてくるかは分からないよ」
「その時はその時で取れた葉を渡すさ、それにしてもなぜ川に入っている?」
「涼しいからだけど?」
後、回収するのに楽だ。
それからはしばらくは他愛ない話をしながら僕は回収、父は何やら体を動かしていたらソレが流れて来た。
気づいたのは父が先だった。
川の中に目を凝らしていると、父が棒で僕の注意を引いた。
「子よ、長のもとに持っていく箱は数日以内に流れて来たのか?」
「箱? それなら朝に持っていったよ」
「なら、アレは違うな」
「えっ?」
高さの関係で足しか見てなかった僕はその色の変化で顔に視線を向けた。
父の顔は上流の方を見ていた。釣られてその方を見ると父が示すとおり大きいものが流れてきていた。
「上になにかある、そのまま挙げねばならんだろう俺も手伝おう」
板と上に乗ってる物は引っ着いてる訳ではないみたいでズレ落ちないよう頑張って、父と協力してなんとか岸に上げることが出来た。
「なんだろうこれ?」
「分からぬ、このような物見たことも聞いたこともない」
板とその上に乗った丸っこい布を二人で確かめてみる。
板は固いが流されていたにも関わらず冷たくなかった。布の方は柔らかくほのかに暖かかった。
「この布剥げるな」
布の中を見て僕は驚き父は顔をしかめた。
「生きてるの?」
「息はしているから大事ない、しかし厄介な……急ぎ長の家に行き長とエキシを読んでこい」
父に言われて僕は駆け出した。
布の中には想像もしていなかった物、集落の者とは違うが女性が包まれていたのだ。