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自覚の兆し

 僕が違和感に気づくのにそんなに時間はかからなかった。


「どうした子よ?」

 食事をともにしていた親が、僕の心中をみたようなタイミングで問の色合いを体に表した。

そう、体表またわ体の一部の色を変えて意思の疎通をするのがここでの会話だ。

「なんでもない」

 僕は左手を前に出して問題ないという意味に左腕の色を変えた。

「オマエはそう言うが、……我等に言えぬことか?」

 その親の意見に体が硬直する。

「心配なのだ。オマエはなぜか親である我ら夫婦はもちろん、皆とも少し違うではないか」

 そうだ、集落の者は老若男女誰もが体表を変えるのに部位が限られてたりしない。なのに僕は左腕しか変える事ができない、このため最初は会話に苦労したものだ。

 手元の食料に目をやる。これも親と微妙に種類が違う。親の手元の食料は集落の主食のカバが三本と、夕飯の楽しみだと言ってる酒がコップ一杯。

 対する僕の方はカバは一本ルズが一本と干し肉が二本、後お茶が一杯。酒とお茶が違うのは子供が飲むものじゃないから分かる。だが、集落でルズや干し肉を食事として食べるものはいない。

 食べれないわけでもないが、ルズと干し肉では体調を維持できないし美味しくないそうだ。それにこの二つは集落からカバと交換出来る貴重な交易品だ。

 これだけで会話、食料と二つも違う。少しどころかだいぶ違う心配するのも無理からぬ事だ。

「あの、流れてきたハグレの事もある。アレがこの地に来てからオマエの様子がおかしい、よからぬ事をなどされてないだろうな?」

「父母が心配するような事はないよ」

 その意見に若干後ろめたい事があるにはあるが、安心させるために誤魔化す。

「……我は母だ、食事前仕事に出たのが父だ。一応聞くがわざとやってるのではあるまいな?」

「ごめんなさい」

「なぜ未だに父母の見分けがつかぬのか、それもオマエを心配するひとつだな。目におかしな所はないと治療器は出しているのにおかしな事だ」

「母父両方いればわかる」

「逆に言えばどちらかだとわからぬではないか困ったものだ」

 待ってほしい、正確に言えば僕は集落の男女を見た目では判別出来ないのだ。

 だが、これは話せない。話せばただでさえ母にとって僕は心配の塊なのにこれ以上それを増やすのはよくない。男女の区別がつかないと知れると多分教育をされる、それはもう熱烈な。

 ブルリッ。

 過去にされた数回の教育が頭を掠めただけで若干の寒気がする。母は教育というがアレはそんな優しいものじゃない。

「やはり、父と母の違いを一回叩き込むか?」

「頑張るから! それに母も最近忙しいんでしょ? 今以上にやることを増やしたら父との時間取れないよ?」

 なんとしても回避しなくては。

「それに父が言ってたよ」

「なにをだ?」

「僕が生まれてから母が僕にばかり世話を焼いて寂しいって」

「子になんということを言うのだあのバカは……」

「父が僕に言ったのではなくポロッと言ってたのを見たんだ」

「見えるところでそのような事を呟いてるのが問題だ」

「明日一日僕は家から出てるからそれじゃ」

 話してる間に自分の分の食事はとっくに終わっている。

「こら、待て」

 これ以上の追及を避けるため素早く自分の部屋に引っ込む。

 適当に父の発言を捏造してしまったが問題ないだろう、母と違い物事を深く考えず流される人だから。問題は明日どうしよう。

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