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第9話ー燃えよ剣(2)

強制的にツグ君のターン。

 

「素振りやめい!」


 先生から声がかかった。あー疲れた。途中でマー君が興奮してたけど、どうだっていいや。今は水飲んで休まないと。


「先生、お尋ねしたい議がございます。」


 誰だよ、休憩時間を短くしようという奴は、皆んなの迷惑を考えてくれよ。


「おう、いいぞ。」


 その返事にすくっと立ち上がったのは僕だった。


「先生はどうやってあの様な素晴らしい鍛錬方法を考えられたのでしょうか。是非教えていただけませんでしょうか?」


 は〜〜、マー君、先ず僕に聞いてよ。おまけに独断での意思占有はまだ許可してないから。

 でも、今出たらもっとヤバい事になりそうだ。 此処はおとなしく収まってくれることを期待しよう。


「あの最前列におられた鷲尾様と平尾様。尋常な鍛錬度ではございませんでした。是非教えていただけませんでしょうか?」


「あ〜〜、これはアレだな。おい、委員長、すぐに朝倉を連れてこい。

 事前に相談を受けていたんだ。幸田が変な事を言い出したら、とりあえず朝倉を呼んでくれって。生徒会からの要請だからな。

 しかし、鷲尾と平尾に目をつけたのは悪く無い。あいつらは中学三年間努力を重ね、全国レベルまで頑張った。

 但し、この地区では全国大会に出るには、団体戦で勝ち抜かないといけない。昔この地区で一番大きい学園に、長髪の破天荒な空手家がいて、そいつが原因でそんなルールになってしまったそうだ。

 だが、うちの剣道部には三人目がいない。他の部員は素人同然だからな。親からも、礼儀作法を学ばせる為の武道だって言われている。当然強要も出来ない。

 うちの剣道部には団体戦でもう一人勝てる奴が必要だ。鷲尾と平尾の実力が分かるお前なら、三人目になれるんじゃないか?それなら鍛錬法の秘訣を教えてやるぞ。」


「是非お願いします。あなたの指導力は、かの世界の黒の剣士並みとお見受けしました。御指導お願い致します。」



「何でツグが剣道部に入る事になっちゃったのよ。」

 ゴメン、ソウ、僕が聞きたい。



 ソウが呼ばれてきた時にはもう間に合わなかった。マー君は剣道部の入部手続きを終え、五十嵐先生から、授業を中断して入部テストを受ける処だった。


「お前達、これは見取り稽古だ。上手な人の技を見て動きを研究する。立派な授業だぞ。では鷲尾、ちゃんと幸田の力を引き出してくれ。これはお前の稽古でもあるんだぞ。」


 まずはツグ、君の実力を見てみよう。俺は何もしない。思う存分やってくれ。


 ええ〜〜、マー君いきなりそのプレイですか?まあ今までの体験からこうなる事は分かってたけど。僕もだいぶんマー君と寄り添ってきたんだ。


 授業で習った正眼の構えで対峙する。マー君の感知に慣れてしまったからかな?ビシビシ威圧を感じる。この人僕より大きいだけじゃ無いよ。強いよ。


 気がついた時には頭に衝撃を受けていた。

「メーン」

 その言葉が聞こえたのは、自分的には衝撃のだいぶ後だったと思う。


「一本、それまで。」


 速さの割にダメージを感じないのは、やっぱり鷲尾さんが手加減してくれたのかな。怖い顔なのに、実は優しい人なのかな?


「次、平尾、準備しろ。分かっているよな。」


 え〜〜、一人じゃなかったの?次はマー君やってよ。


 何を言ってるんだツグ、今のは何も出来なかっただろう、ちゃんと幸田紡の実力を見せてくれよ。


 フルネームで呼ばれっちゃった。もしかしてマー君、不甲斐ない僕に怒ってるの?でもしょうがないでしょ。ヒキニート希望の僕が現役バリバリの部員に敵うわけがない。

 でも、ただ負けるだけでも、ちゃんと出来ることだけは見せよう。平尾さん相手じゃ、同じ結果になるだろうけど、戦う意思がある事だけは見せよう。当たるわけないけど、こっちから攻めるんだ。


「始め!」


「メーン」


 もう構えも何もない。掛け声と共に飛び込んだ。上手に対して、僕が攻められる場所は此処しかない。


「メーン」


 平尾さんの声が響いた。知ってる。面抜き面って技だ。二人連続で瞬殺された。マー君の期待に応えられなかった。やっぱり僕には無理なんだ。


 何言ってるんだ、ツグ、五十嵐先生達の顔を見てみろ。


 え、みんな笑ってる。


 ツグが剣道部で戦う事を決めたのが、みんな嬉しいんだよ。勝ち負けは関係無い。それも、最後に平尾さんに打ち掛かっていった。その闘志を認めてくれているんだよ。俺も嬉しい。


 でも安心しろ。ツグ。

 人界に安心を与えるのが俺の役目だ。ちゃんと皆んなを安心させてやるぞ。



次はマー君のターン。でも多分ダメダメ。

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