第3話ー魔法を魔術に
やっとこのお話のネタが出てきます。
神官術を使える様にして貰えるのは、必須でしょう。
確かに、この世界では魔法師に使える魔素が無い。魔力操作に使える燃料になるのは、生命力しか無い。その為に、神官術の使用は、絶対に必要だ。
となると、あと二つ。何があなたの能力を有効活用してくれるでしょう?
ツグ、いきなり二つの目標を探すのは難しい。まず神官術を使える様になるのを前提に、次の目標を考えよう。それなら俺には構想がある。人神様もおっしゃっていたが、加護は万能では無い。加護を受けた上で自分がそれを実現させる為に努力しなければならない。だから加護は努力目標であることが正しい。
一つは 神官術を向上させる事。神官術向上の加護が有っても通常最高位まで100年はかかるが、一度は魔法師を極めた俺ならば、その半分でやってやれる自信がある。でも、50年後にはもうツグはおっさん超えてるよな。
もう一つは、神官術でこの世界に魔素を生成する術を開発する為の加護をいただく事だ。そうすれば俺は生成した魔素で、俺のフルスペックの魔法が使える。しかし問題は、存在しない新規の術の開発は、たとえ加護が有っても、それこそ何千年単位で取り組む大事業だ。今ある術の改編とはレベルが違う。これも時間がかかり過ぎて、現実的じゃない。
最後の選択は、今使える神官術の成長率を上げて貰う事だ。地道に向上しながら、ツグの生活をバックアップしていき、新しい神官術を覚えていく。残念ながら、これが一番現実的な選択だろう。俺が今使える神官術なんて、初歩の回復術と解毒術ぐらいだがな。それでもツグの生活を安定させる役には立つだろう。なーに、俺には人神様の加護と、前の世界を救った実績がある。10年もすれば、そこそこ役に立つ神官術も使えるようになるさ。ちょうどその頃は、ツグがこの世界で社会に出る頃だろう。ツグの人生は一生安泰だよ。
僕にも構想があります。
マー君は世界を救った人です。そんな偉人が、僕一人の為に能力を使うなんてあり得ない。マー君の能力には、世界を救える力があります。僕だって、この世界にどうしようもない不幸がある事は知っています。でも、マー君なら、どうしようもない事をどうにか出来ると思うんです。
だから、マー君の能力をこの世界でも使える様にするんです。
だから、ツグ、魔素がないこの世界じゃ俺は役立たずなんだよ。人神様の加護に頼って、神官術を使える様にしてもらうしかない。
いえ、マー君の魔法は、人から教わった物だけですか?自分で改編した魔法はないんですか?
そりゃ、俺のオリジナルスペルなんて、いっぱいあるぞ。一万じゃ全然足りない。でも、みんなに教えたから、俺だけが使えるスペシャルスペルとなると、魔力の容量上、第七結界越えの5種類ぐらいだけどな。
それ!です。あなたに魔法の改編が出来るなら、あなたの使っていた魔法を、神官術に書き換える事が出来るんじゃないですか?ないですか?重要な事なので二回言いました。
燃料がガソリンでも、電気でも、エンジンやモーターは同じように回転力を生み出します。生まれた回転力を動力に変えるのは、魔法でも神官術でも同じ手順のはずです。効率の違いはあっても、同じ動力からは同じ結果を生み出せるはずです。
大衆車のカブトムシも、ニッさんの葉っぱさんも、同じ目的を違うエネルギーで利用する為に作られたんです。性能の違いはあっても、目的を達成出来るのは同じです。
二つ目の加護は、神官術を改編できる事にしましょう。
・・・ああ、これだ。これが俺の世界とツグの世界の根本的な違いだ。俺には今あるものを最高効率で利用する発想しか無かった。でも、ツグは今無いものを別の事象に例えて創り出せる可能性を感じた。これがボトムアップの力か。だってツグはまだ14歳だぞ。いや、14歳だからこそ、実現性の壁を考えずに発想できるのかも知れない。
面白い。やってやろうじゃないか。俺の使える上級魔法を、初歩から最強魔法メギド・アルティメットデスインフェルノまで、全て神官術に書き換えてやろう。でもそうなると、これを魔法と呼ぶのはおかしいな。魔法の手法で神官術を使う。よし。これを魔術と名付けよう。これから俺は、この世界で初めての魔術師になる!
自分的には、ちょっとだけ面白くなってきたかも。