5話 密談
「改めまして、皆様。センチュリア王国第一王女シオン・フォン・センチュリアです。この度は、魔王討伐にご了承頂き誠にありがとうございます」
ディナーは、王女の挨拶から始まった。
ディナーといっても、そこまで正式なものではない。それは、マナーをほとんど知らない俺達が拒否したからだった。だが、味はまだ食べてないから分からないが、見た目や匂いは最高だった。
「それでは皆様、お食事をお召し上がりください」
そこでやっと、待っていましたとばかりに一斉に食べ始めた。
見た目に劣らなく、日本では食べたことないくらいおいしい。
「おいしい~」
「まじですげえな」
あちこちからそんな声が聞こえて来た。
ちなみに、王女はというと齋斗の隣で食べていた。
ディナーも全員が終わり、それぞれの部屋に戻った。魔王討伐についての詳しい話は、また明日にという事らしい。恐らく、こちら側への配慮だろう。
「海斗、少し話し合わないか?」
そうやって話しかけて来たのは、絢斗だった。隣に飛鳥もいる。
「ああ、いいぞ」
たいして断る理由もないため、了承する。
「よし。なら、海斗の部屋にいくぞ」
「ああ……って、俺の部屋!?」
誘っといて、それはないだろうと思った。
「なんだ、見られちゃまずい本でもあるのか?」
なぜ本に限定するんだよ。
「ねぇよ、そんなもん」
「じゃあ、いいだろ。ほら、いくぞ」
「ったく。飛鳥もいくぞ」
後ろで会話に入っていなかった飛鳥にも声をかけて行く。
「わかっているわよ」
「それでは、第一回異世界対策会議を始めます……。イエーイ。パチパチ」
そして、拍手をする。ただし言った本人である絢斗だけだ。
「そんなふざけている場合じゃないでしょ。もっと……いや、せめてもう少しだけでも真面目に……見えるようにはやってよ」
何回も言い直したのは絢斗のお調子者な性格のためだろう。ハードルを少しずつ下げているようだ。
「ひっでえな。これでも真面目にやってるんだよ。なぁ海斗」
少しも真面目にやっていなかったと断言しよう。そして、俺にそんな話を振るな。
「ちっとも真面目に言ってるようには聞こえなかったな」
「ほら!!」
「裏切ったな、海斗」
別にそんなつもりはない。ついでにいえば仲間になると言った覚えもない
「そんな事より話進めないか?」
「話切り替えやがった」
「そうね。こんなばかに付き合ってられないわ」
何気にひどい。
「えっと、じゃあまずなにから話す?」
やっと、本題に入ったようだ。ここまで進むのに何気に長かった。
「まずは、魔王討伐に参加するかどうかでしょ。正直に言って、まだ信用できないわ」
「だが、あの王女が嘘をついてるようには見えなかったぞ」
と言ったのは、絢斗だ。絢斗は真面目にやる時はしっかりやる奴だ。初めは、ふざけてたが。
「だからって、この国が信用できる訳じゃあないわ」
飛鳥は絢斗の言うことは信用してる。絢斗がふざけてそれな文句言っている飛鳥だが、それも信用あってのことだろう。なんだかんだで意外に気が合うようだった。
そして、絢斗が王女を信用できるというならそうなんだろくらいには俺だって信用してる。
「まあな。そもそも、なぜ王が出てこないのかが不思議だよな」
「それは、俺も思った。異世界から召喚なんてそうそうやるもんじゃないだろうし、重要なことな筈なのになぜ、来なかったのか」
ここでようやく俺がまともに話した。
「そうねぇ。こなかったんじゃなくて、こられなかったっていうのはどう?」
「それならそれで、代理が来るんじゃないか?あんな頼りないような王女じゃなくて、宰相とか偉い人が」
「それもそうねぇ」
「実は隠れて見てたとか?」
「そんな事したって意味ないだろ。それにそんな偉そうな奴は居たようには見えなかった。そういう海斗はなんか怪しい奴見たのか?」
「いや、言ってみただけだ」
……。それぞれで考えても特に何も浮かばなかった。
「これ以上は、何も進まなそうね。とりあえず、今日はここまでにして続きは明日にしましょう」
話はほとんど進んでいないがたしかにそろそろもう寝た方がいいだろう。何より、情報がほとんどない。それなのに話が進むわけがない。とりあえずは、明日に王女に詳しい話を聞いてからだ。
「じゃあ、明日にここでね」
「ああ……って、また次も俺の部屋なの!?」
「何よなんか文句でもあるの?」
イイエ、ゴザイマセン。
「無さそうね。じゃあ、また明日」
「お休み~。明日もよろしくな!」
「ああ……」
そう言って、二人は出ていった。緊張がはしっていたさっきとは違って、気を抜いたような感じだ。
はあ、明日もか。
そうして、一人だけの部屋でため息をついていた海斗だった。
少し話が長くなりましたね。ものくらいの長さが一番いいのでしょうか?模索中です。