38話 再び買い物 その2
海斗が買い物していた時の絢斗の話です
飛鳥と別れて行動することが出来た。うまくいって良かった。昨日の二の舞はごめんだからな。
だがしかし、今度は買い物を押し付けられた。
買い物くらいと思うかもしれないが、そうじゃない。
俺は、純粋に楽しみたいんだ!
食料を買うなんて余分なオプションはいらない。好きなように買い物をして、好きなように食べ物を食べる。ようするに、自由にやりたいんだ。何も予定を決めずに見て周りたかった。
だからこうした。
「海斗、よろしくな」
「あっ、おい!」
ようするに、逃げの一手だ。いわゆる押し付けなのだが、許してほしい。昨日が辛かったのだ。まあ、海斗も同じだったが細かいことは気にしない。
こうして俺は、自由を得た。
まあ、こんなわけで俺の自由な買い物は始まった。だが、このときはまだあんなことになるなんて思ってもいなかった。
これから俺は、再びの地獄を見ることになるなんて_____。
俺は、飛鳥に続いて買い物に行った。もちろん、飛鳥とは逆の方向にだ。
見たこともない、物語の中のような気色。
それが、この世界を初めて見た時の感想だ。普通に日本で生きているだけでは、けして知ることのない世界だった。魔法という物があり、まるで物語の世界のよう。
夢物語のように思っていた世界が今、目の前で実在している。感動と共に未知への不安がある。だが、せっかくこの世界に来たからにはそれさえも楽しんでいってやる。
この世界では、街の建物は大抵がレンガが使ってある。それがレトロな感じがしてとってもいい。そして、周囲にはあちこちに屋台が設置されている。
食べ物類はもちろん、骨董品や衣類等など様々な物が揃っていた。
「おっちゃん、焼きオーク一つ」
ぱっと見て目についた、焼きオークをまずは買うことにした。これは焼き鳥のオークバージョンのようなものだ。
パクっ。
食べてみると、なかなかにして美味しい。固すぎず柔らかすぎずのほどよい歯ごたえが癖になりそうなかんじだ。
この時、絢斗は次にオークを見つけたら狩って食べようと心に決めた。
だが一つ、味が足りない。胡椒が使われていないのだろう。それもしょうがないことだ。
この世界では、胡椒を含めた香辛料は少し高い。けして買えないほどではないが、この店ではコスト削減のために使っていないのだろう。
物足りない気がするが、肉の歯ごたえと焼き加減は絶妙だ。
ある程度見て回ったら、今度は裏路地の方を見て回る事にした。大通りほどではないにしろ、店は多少はある。
裏路地の方は、服とかが多く見られる。だがしかし、絢斗は服は昨日で買わされているため買う気はなかった。食べ物類はやはりというか、大通りの方に集中しているようで、こっちには一つも見あたらない。
仕方なく引き返そうとしたら、ここである一つの問題に気がついた。
道が分からない。=迷子だ。
いつの間にか、かなり奥まで来てしまったようで辺りに店も見当たらない。
裏路地は迷路のように入り組んだようになっていて、方向もどっちにいけばいいのか分からない。
だがまあこれは、適当にしばらく進んでいけば大通りまでたどり着けた。ちょっとした災難にあっただけですんだ。
気を取り直して進もうとしたその時だった。
「あっ、絢斗じゃない」
それはまるで悪魔の囁きのような____は言い過ぎだがそれに近いもののように感じた。
後ろからかけられた声に振り向きたくはなかったが、そうしない分けにはいかなく仕方なく振り向くとそこには予想通りの人物がいた。
悪魔……ではなく飛鳥だ。
絢斗は思考をフル回転して考えていた。
(何で飛鳥にがここにいるんだ!?)
絢斗は飛鳥に会いたくないがゆえにわざわざ反対方向に来ていたはずだった。それなのになぜ、飛鳥がここにいるのか。
この街はある程度の広さがあり、反対方向に行ったのなら余程の事がない限り会うことはないと思っていた。それがなぜ、今こうして目の前にいるのか。
その答えは少し考えれば分かることだった。
(……裏路地に入ったときか!!)
絢斗は一度裏路地に入った時に迷子になっていた。そして、裏路地は迷路のように入り組んでいてそのときに知らずに反対方向に進んでいてもおかしくないというわけだ。
「丁度良かった」
何が丁度いいのだろう。絢斗はこの先を聞きたくないと全力で思った。
だがしかし、どうすることもできない。
「荷物を持ってくれない?」
満面の笑みで言われたが、全くもって嬉しくない。それどころか、悪魔の笑みのように思えてくる。
ああ、本当に飛鳥は悪魔ではないのだろうか。半ば本気でそんな事を考え始めた絢斗だったが、どうすることもできなかった。
その後、飛鳥の買い物に二日連続で付き合わされることになった絢斗だった。




