36話 女子の買い物にはご用心
「じゃあ、今日はもう休むか」
「そうだな」
流石に今日はもう疲れた。宿も無事に取れたという事で休む事にした。いや、そうしたかった。
「なに言ってるの?早く行くわよ」
「「は!?」」
思わず、海斗と絢斗はいきが揃った。
長旅で疲労が溜まっている。今日一日くらいは休みたい。休んだって誰も文句は言わないはずだ。そう思っていたのに、敵は近くに潜んでいたなんて。
「いやいや、今日くらいは休もうぜ」
「右に同感。流石に疲れたぞ」
「却下。行くわよ」
一度ばっさり切られたが、諦める説得を続けようとする二人。はっきり言って、無駄な足掻きにしか見えなかった。
「そこをなんとか、な。もう疲れてへとへとなんだ」
「一日くらい休んだってよくないか?」
「却下。そんなに休みたいなら明日でいいでしょ」
((あ、明日ならいいんだ))
そんなわけで結局、明日が休みで今日は出かけることになった。
「で、いったいどこに行くんだよ」
「買い物よ。食料もなくなってきているし、服もあんまり持ってないでしょ」
確かに三人は地球に今までの服を置いて来てしまっていた以上、ほとんど持っていなかった。それに加え、召喚時に着ていたのは制服だったため、この世界では悪い意味でかなり目立つ。
そんな感じで今持っている服は、王宮から支給されたものと町で買ったものので、三着分しかなかった。
だが、服は水魔法で洗い風魔法で乾かせば二着で事足りる。地球とは違いやれ天気がどうのだとかを気にしないでいいのが利点だ。
海斗と絢斗はそれでいいと思っていた。三着でなくても二着でいいだろうと思っていたくらいだった。
だがしかし、いい加減な男子である二人と違って飛鳥はれっきとした女子である。長旅で疲れようとその間に服が汚れたとしても多少のお洒落をしたい。特に今は町街にいるのである。こんな時くらい少しは可愛い服を着たいのだ。
そんな訳で言い出した買い物だった。もっとも、飛鳥がこの事に気づいたのは街に入ってからのことだったというのは秘密だ。
というわけで、食料を買うというのは後付けの理由で本音は服が買いたいだった。
その後、暫くは必死に無駄な努力を続けた二人だったが、それを飛鳥が許すはずもなく三人は買い物に出かけたのだった。
「いらっしゃいませ」
笑顔の店員に挨拶されながら服屋に入った三人。その店は、街のなかでもなかなか品揃えがよく値段も比較的安かった。
この街は商人が多く、その分他の街よりもいろいろな物が揃っている。食べ物や雑貨、そして服。まさに買い物にはうってつけの街だった。
「これいいな。あ、これもいいかも」
「どちらもお客様にお似合いです。これはいかがでしょうか?」
「それもいいですね」
初めの数十分はまだ良かった。そのあとは海斗も絢斗も飛鳥のノリに着いていけず、かやのそとだった。今だって飛鳥と店員だけで話している。
暫くして飛鳥は満足したようで店を出た。但しそれはその店を出ただけであって買い物をやめたわけではなかった。
結局、海斗と絢斗は殆ど荷物持ちしかやっていなかった。
飛鳥の服に海斗と絢斗の服も買った。ただ、二人の服は飛鳥が選んだ物であって二人は特に何もしていなかった。
今日この日、二人は始めて女子の買い物の恐ろしさというものを知った。
そしてもうひとつ、宿に戻ってから食料を買っていなかったことを思い出した。




