契約
森の奥深く、泉のほとり
そこには小さな小屋があった。
この小屋には何でも願いを叶えてくれる魔女が住んでいると言われている。
「ここね…」
娘は勇気を出し、小屋のドアを開けた
「いらっしゃい、
ここに人が来るなんて珍しいね。」
そこにいたのは黒い服をまとった老婆だった
「お前さん、名前はなんて言うんだい?」
「フローラよ、あなたが
願いを叶えてくれるという魔女ね?」
「あぁそうさ。何か願いがあるようだね」
「美しくなりたいの。世界中の男性を虜にできるくらい、美しく」
「美しくなりたい…か。自分の顔が嫌なのかい?」
「当たり前よ。見て分からないの?こんな顔、もうまっぴらだわ!私は美しくなって、最高の幸せを手に入れたいのよ!誰にも負けない、極上の幸福をね」
「最高の幸せねぇ…いいだろう。これを持っていきな」
そう言った老婆は、不思議な液体の入った小瓶を渡した
「これは…?」
「それは美しくなれる薬さ、それを毎日一滴ずつ飲むといい。日に日に美しくなるだろう。ただし条件がある」
「条件?」
「1日に飲むのは絶対に一滴だけだ。それから、最後の一滴は飲んではいけないよ」
娘は首を傾げた
「なぜ?最後の一滴を飲めば極上の美しさを手に入れられるんじゃないの?」
「あぁ、なれるとも。でもそれは人が踏み込んではいけない領域なのさ」
「ふぅん。なんだかよくわからないけど、その条件を守ればいいのね。それで、お代は?お金でいいのかしら」
「お代なんて要らないさ。でもお嬢さん良いのかい?魔女の薬を使うと言う事は、魔女と契約すること。つまり自分の身を」
「構わないわ、美しくなれるならなんだっていいのよ。ありがとうお婆さん。」
老婆の言葉をろくに聞かず、娘はさっさと小屋を出て行った
「…馬鹿な娘だね、私の話も聞かないで」
老婆は、森の中へ入って行くフローラの姿を見つめていた
「フローラか…最後の一滴を飲む時が楽しみだ。」