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最後のジグソーパズル

作者: 桝田道也

即興小説トレーニング http://sokkyo-shosetsu.com/try.php に初挑戦して書いたものですが、javascript を許可してなかったので投稿できず、再読み込みしたらお題が変わってしまったので、こちらへ投稿することにしました。

 百万ピースの無地のジグソーパズル。人生の大半を費やしたそれが、ついに、最後の一個をはめ込むだけとなっていた。


 これを完成させるために、男は私財を投げ打って田舎に大きな倉庫を買った。妻は子供を連れて出て行った。男に残されたものは、この巨大な白いジグソーパズルだけだった。


 なぜそこまでする?そのパズルを完成させることで、なんのメリットが?男を知る者は口々にそうたずねたが、男の答えはきまって

「美しい喜び、それだけですよ」

だった。


 9歳のときに無地のジグソーパズルというものがあると知って以来、男の心は魔物にとり憑かれてしまったのだ。美の魔物か、喜の魔物か、はたまたパズルの魔物か、それは男にもわからなかったが。



 最後のピースとピースをはめる先を3Dスキャナで取りこみ、3Dプリンタで該当部分を出力した。シミュレーションは万全だった。最後の一個がはまらない、というありがちな失敗はありえなかった。


 男はふるえる手で最後の一個をつまんだ。激しい動悸。充血した視点の合わない目。荒い呼吸。よだれ。その場に第三者がいたら、男の精神が常軌を逸していることにすぐさま気付いただろう。だが、男は一人だった。


 最後のピースは音もなくはまった。


 テニスコートにして数面分はあろうかという巨大な無地のジグソーパズル。むろん、完成したからといって、何も起らない……男の脳の中以外では、なにも。


 男は興奮のあまり卒中を起こしていた。朦朧とした意識のなか、このうえない美しい喜びに包まれて男は意識を失った。そして男の頭蓋骨の中身、巨大なジグソーパズルを完成させた働き者は役目を終えた。それはいまや、まっさらの、無地の、ボール紙のような灰白色のインテリア、球体ジグソーパズルであった。

まえがきに書いたとおり、もともと即興小説トレーニングに投稿するつもりで書いたものです。そのとき即興小説トレーニングが出したお題は「美しい喜び」で、制限時間は30分でした。

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