第1項 政府の上位者を攻略せよ
謝罪肯定派の現状の行動を見るに、日本国政府に向かって「謝罪せよ」と言う論調であるように見受けられる。
まぁ、謝罪する主体が、日本国政府、もっと言えば首相なので、無理も無い話であるが、効果は得られているのだろうか。
日本国政府の公式見解は1965年の日韓基本条約とこれに伴う日韓請求権協定により最終的に解決済みとするスタンスである。
なので、これをひっくり返す事を、日本国政府に要求しても難しいだろう。
また、謝罪肯定派の方々が官邸に声を届ける、首相に直談判する、などと言うのも、ハードルが高い話である。
しかし。
日本国政府、日本国首相に要求してもらちがあかないと言う事になっても悲観してはいけない。
政府や首相へ要求しても聞き入れてもらえないなら、その上位者へ訴えれば良いではないか。
では、その上位者とは何か。
日本は、主権在民の国家である。
つまり、日本の立法府や行政の長である首相は、日本国民に選ばれて、そのポジションにいるに過ぎない存在なのだ。
そんなわけで、要求を実行者に過ぎない首相に向けるのは、明らかな戦略的目標の誤りである。
市井の日本国民に向けて「謝罪せよ」と主張するのが、民主主義国家のあり方からしても妥当であろう。
この目標であれば、実行に伴う障壁も格段に低い。
官邸へ乗り込み、首相に直談判する事の困難さは言うまでも無いが、そこら辺を歩いている一般市民に「謝罪せよ」と訴えるのは、実に容易な話だ。
最終的には、この「いわゆる従軍慰安婦」問題に関して、謝罪する旨を公約とした議員を多数国会に送り込み、日韓基本条約と日韓請求権協定の見直しを立法府で成立させる。
これが、一番に筋の通った話なんじゃねぇかい?
もっとも、この理想的かつ効果的な優れた方法にも問題が二つある。
まずは、即時性である。
今年(2015年)は戦後70年にして、先に述べた日韓基本条約締結後50年と言う節目の年であり、「いわゆる従軍慰安婦」であったと称される方々が、亡くなられていく中で、一刻も早い解決を、との声もあるのではあるが。
前回の衆議院選挙が昨年の2014年に行われたばかりであり、次の選挙までは今少しの期間がかかるであろう事は、現実問題としてある。
もうひとつ。
この「いわゆる従軍慰安婦」問題の謝罪を選挙公約として掲げた国会議員が皆無と言う現実である。
すまないが、落選した人のことはこの際は無視する。
現実問題として、国会議員に当選した人々でなければ、話が進まないからだ。
ただ、驚く事に、この問題の立役者たる元社民党党首な瑞穂氏ですら、前回の参議院選挙の公約に、慰安婦の「い」の字も書かれていないのは困惑を禁じ得ない。
少なくとも、2015年8月8日現在ではヒットしない。
ただ、政治と言うものが有限のリソースの再分配としての側面を持つ以上、優先順序をつけるのは、当然と言えば当然だ。
その辺りはしっかりした政治家なのだろう。
要するに、優先順としてはその程度と言う事なのだ。
ちなみに、共産党のHPにはこの問題について謝罪を主張する記載があるので、日本国内の謝罪肯定派の方々は、こちらを頼られるのが現実的かもしれない。
ただ、共産党議員個人で、これを公約として掲げ、選挙に臨んだ人がいたかどうかは、ググっても確認ができない。
あるいは、キーワード設定に問題があるのかもしれないが、筆者の能力の及ぶところでは無い。
参考までに述べると、いくつかの市議会では、この問題で謝罪すべしとの主旨で決議がなされているようだが、日本国が公式に謝罪となると、国会議員レベルで無ければ難しいだろう。
色々と前途多難ではあるが、日本国内の謝罪肯定派各位におかれては、めげる事無く、先に述べた戦略的目標に向かって邁進してもらいたい。
つまりは、市井の日本国民――そこらを歩いている人々をつかまえて、「謝罪せよ」と主張して頂きたいものである。
そうした地道なたゆまぬ努力の上にこそ、公式な謝罪が勝ち取れるものと……おや、誰か来たようだ。