第1話
こんにちは。毎回見切り発車の私ですが読んで頂ければ幸いです。
ー 翠ノ国 ー
遥か昔からこの国は、物造りの国と言われています。
世界中にあるの殆どの道具や魔道具はこの国が発祥と言われる程性能の良い物がこの国には多く、また職人も多く輩出しているからです。
中でも王族は、異能と呼ばれる特殊能力を持ちます。
王族の持つ異能は一人一人違い、中でも翠ノ国の王である黄帝は守りに関する能力を持つものが次代を担います。
現黄帝の豪炎は鋼を司る異能を持ち、その力を持って他国を牽制、守護しています。
「鬼角よ」
「はい」
「我が姉上はまだ見つからぬのか」
「八方手を尽くして居りますが、王族方のお持ちになる異能は王族方に囲まれてこそ早期発現が促されます。幼き頃に行方知れずとなられた王姉殿下に置かれましては発現しているか定かではありません故捜索には今暫く時間がかかるかと…」
彼此十と余年。豪炎の異母姉は前黄帝側妃【千妃】と共に攫われた。
翠ノ国の王族は番と血を分けた身内を殊の外大切にする。その為長い間行方不明の姉を今尚捜し続けている。
「千妃が裏切りさえしなければ、姉上は今頃余の下に居たというに…」
千妃は前黄帝の側妃として国の治世を担っていたが、番ではない為正妃と認められなかった。
翠ノ国の王族には番が存在し、それが近親者であったり平民であったりもするのだ。その為この国には近親婚や身分差婚が認められているのだが、稀に番が長い事ないまま終わる王族方がいた為その緊急策で側妃を迎えるという策が充てがわれた。勿論側妃を迎えた後に番を見つけた黄帝もいた為側妃は臣下に降下した者もいた。
前黄帝もその例に洩れず、側妃を迎えた後に番を見つけただけなのだ。
そのまま千妃も正妃に御支えすればいいのだが、彼女は侯爵の姫である為平民上がりの正妃に御支えするのは耐え難かったのだろう。幸か不幸か王女を既に出産していた千妃には降下も許されない。
しかし、愛する陛下には最早見向きもされない。その身動きが出来ない状況の時千妃は壊れてしまったのだろう。
暫くは何事も無く過ぎたが、正妃が身籠り現黄帝豪炎を出産した時保っていた糸が切れてしまった。
その時の侍女達は声を揃えて言う。千妃がやつ当たる王女様が不憫でならなかったと…。
そして王女が8歳、豪炎が5歳の年…それは起こった。
千妃は黒づくめの男と共に王女を誘拐した。
黒づくめの男は大層腕が立ったのか護衛達が悉く殺られた。
運良く護衛の1人が最後に事切れる際、嫌がる王女を知らぬ黒づくめの男と共に千妃が裏切った事が伝えられ、大々的に王女搜索の命が出された。
しかし、時既に遅く千妃は翠ノ国にある運河で変わり果てた姿となって発見され、王女の行方は終ぞ分からなかった。
ありがとうございました。