博士と助手の中田くん
「ふむ……」
昔々とは言えない現代であろうとある日、とある場所にあるとある研究所で、『博士』と呼ばれる人が唸っていた。理由は知らん。
「博士、何してるんですか?」
博士の机にコーヒーを置きながら言ったのが博士の助手、『中田くん』。とても真面目で優秀なもうこう来たらツッコミ役しかない優秀な助手である。
「いや、なんというかな、ここって研究所じゃん?」
「はい」
「俺博士じゃん?」
「はい」
当たり前の事を質問されて、訝しみながらもうなずく中田くん。
「博士、何が言いたいんです?」
「こういうの作ってみたんだよね」
「はあ」
博士が差し出したのは筆箱ほどの大きさの機械。
ピコピコ言いながら変な赤と青のランプが交互に点滅しているヤツが何個か付いている。そして真ん中にあるのが明らかに押したら何か起こるよと言っている感じが否めないボタン。正直言って初めて見ても見飽きたと言われるぐらいの『機械ってこんなんだよな?』とか言いながら作った機械みたいなのがそこにあった。
「博士、これはなんでしょう」
「見ての通り、機械だ」
そうですか。
「博士、これはなんでしょう」
「見ての通り、機械だ」
そう、なんですね……
「何の?」
「機械だ」
「奇怪ですか?」
「機械だ」
何を言っているのか分からず何を言っているのか分からない質問をしてしまう中田くん。それだけ博士が何を言っているのか分からなかったのだから仕方がない。
「あれだよ、ここってさ、今まで色々作ってきたじゃんか。いやまあ一話だから知らんがなと思うかもしれんけどそれは置いといてさ。で、その今まで作ってきた中でもこれはすごいんだよ」
「どうすごいんでしょう」
「これはな……」
「………………」
もったいぶって溜めてくる博士。
「これはな、機械なんだ」
「買い物行って来ます」
「待って! ちゃんと説明するから!」
「はい……」
「中田くん、君はこれを見てこのボタンを押せば何かが起こると思っただろ? だがそれは大きな間違いだ。人生そんなに甘くねぇんだよ!!」
そう言われても知らんがな。としか言いようがない。
しかし最後まで聴けば何かどんでん返しがあるのかもしれないと思い、中田くんは清聴する。
「つまるところこれが何の機械なのかと言えば、ただの機械だ」
「その心は?」
「暇だから暇つぶしに何の意味もない機械を作ってみただけ」
「この暇人が!!」
見事なツッコミです中田くん。
「こうして俺は中田くんをツッコミ役たらしめるツッコミができる機会を作ってあげましたとさ」
「くっだらねぇ!!」
見事なオチに博士の心はすっきりしたそうな。