「アレ」な二人
このお話は会話文だけで続いていきます。とても軽いお話ですので、あまり期待せず、気軽に読んでみてください。
「ねえ、アレ取って」
「ああ? 『アレ』って何だよ」
「……ったく、鈍いんだから。このタイミングで『アレ』って言ったら、どう考えても綿棒でしょう」
「知るかよ! どんなタイミングなら綿棒なんだよ、あほか。っていうか、お前、何? 何その態度のでかさ。あのねえ。いくら俺達が幼馴染で、家族ぐるみの付き合いもあるし、どっちの家の鍵も持ってて、好き勝手に家に行き来できる仲であってもだよ。人んちに勝手に上がって来て、偉そうにするのはそりゃお前、お門違いだって事は覚えておけ、このバカが」
「バカだあ〜? あのねえ。いい歳した成人男性が、せっかくの休みだって言うのに家で漫画ばっかり読んでるから、暇だったらどっか連れてってあげてっておばさんに言われたから、忙しい中、時間を作って、嫌々来てあげてるんでしょう? それをバカ呼ばわりされたら、世界中のボランティア団体をバカにしたのと同じ位の侮辱行為だわよ!」
「嫌々だあ? 来てあげただあ? 俺はお前に来てくれなんて頼んだ覚えもないしな、お前だって暇だったから来たんだろうが。それにな、聞くがな、だったら、なんでお前はここで俺と一緒になって漫画読んでるんだよ。どっか連れて行くっていう使命を持ってここに来たんじゃね〜のかよ、あ?」
「しょうがないじゃない。アンタがあんまりにも面白そうな顔して読んでるだもん、こっちだって気になるわよ。文句があるなら、アンタのその面白い顔をどうにかしてからにしてくれない?」
「ギャグ漫画読んで笑っちゃいけね〜ってか? お前も、口が減らないなああ!? どうしたらそんなに次から次へと憎まれ口が叩けるんだよ。え? 何級だ? お前は憎まれ検定、一体何級なんだ?」
「よく言うわ! アンタだって、こんなうら若き乙女を前にして、よくも平気で鼻ほじったり、屁こいたりできるわよねえ? 何位よ! 世界マナー違反選手権第何位よ!」
「なんだよ、その世界なんとか選手権ってよおお! 何年に一度開催されてんだよ! 今年はアテネか!?」
「ちょっとうるさい! 今いいとこなんだから、話かけないでよ! っていうか、いいから早く綿棒取ってよ、この『万年彼女いない暦=年齢男』が!」
「そういうお前こそ、女は結婚するまでヴァージン守るって言ってりゃ偉いと思ってるかもしれないけどな、捨てたくても相手がいないだけだって事はばれてますから、残念でした! ほら、これで耳だけじゃなくて、穴と言う穴をせいぜい綺麗にしとけ、蜘蛛の巣女が!」
「黙って綿棒取ることも出来ないなんて、使えない男ね!」
「五十センチ歩くことも面倒になってしまった老婆に、使えないなんていわれたくね〜けどな!」
「……」
「……」
「……」
「……おい」
「……何、今いいとこだって言ってるでしょ」
「……なああ」
「……何よ」
「アレしねえ?」
「……『アレ』って? 『アレ』だけじゃわかんないんだけど?」
「お前ってさ〜、さっき自分が言った事を棚にあげて、よくそういうこと言えるよな? 今このタイミングで『アレ』って言ったら一つだろうがよ」
「……えええ、面倒くさいなあ。何? Wii? Wiiは嫌。テニス、アンタに勝てないんだもん。ストレス貯まるから嫌」
「違うよ、アフォだな、お前」
「アフォって言うな。じゃあこのタイミングの『アレ』って何よ!」
「……結婚に決まってんだろ」
「……」
「……」
「……どんなタイミングよ……」
「俺は一位だ」
「……何がよ」
「世界お前が大好き選手権、第一位だ」
「きもっ……」
「うるせ」
「……『アレ』頂戴よね」
「はあ……? 今度はどんな『アレ』だよ」
「給料三ヶ月分の『アレ』……」
「……ほれ、ティッシュ」
「……この漫画泣けるわ〜。涙出てきた」
「それギャグ漫画だって」
「うるさい!」
「痛いって! 殴るな! この暴力女!」