決心の日
帰り道、吉城は自棄になっていた。
「しょーせーん、俺は遅いですよーだ!」
はいはい、と横を歩く澤村に苦笑される。
「聞けよ、俺さカッコつけて嘘ついて逆に恥かいてバカバカしい。体育不参加とか言っちゃって、疑われないんだぜ。眼中に無いって事さ。上位自信アリだってよ、たくましいぜ。俺ももっと……」
「見合った男に?」
続きを言われコクリ小さくと頷く。勉強も平均的で長距離走は苦手。部活でも目立った活躍なし。良いところといえば優しいと偶に噂されている程度。想いを寄せる彼女……風香には何一つ敵わない。
「でもさ、吉城。俺はそんな必要ないと思うぜ? いつももっと良くならないと、とか言ってるけどそのままで良くないか? 無理して変わったらお前じゃなくなる」
手に持ったチラシに載っている新作クレープを確認しながらサラっと言う。
「おい、そんなこと真顔で言うなよ。別にいいんだ、慰めなんかよ。まァ瀬戸川と話してる時は全然いつもの俺じゃないよな、明らかに。結構疲れるし」
「それがダメなんだって」
「ううん……そうなのかな」
「絶対そうだって。試しに普通にしてみろよ」
「……分かったよ」
吉城は渋々認めた。