俺が、最後の砦だ!
やぁ、おはよう諸君。勇者サクラの冒険、今日は自宅という最後の砦を俺は守らねばならない。自宅警備員だ、アル○ックに頼らずとも、俺がこの家を守るんだ!
レベル25、ライフ320。
ピンポーン。
むむ、これはもしや…
宅配便のお兄さんが現れた。
「印鑑か、サインお願いしまーす。」
はいはい、サインね。ふ、なめるなよ。こんな時のために俺は自分のサインを学生時代練習してきた。そりゃもうノートが擦り切れインクは底をつき、手にはペンだこが出来るくらいにな!
「はい、ありがとうございます。」
…だよな、サインって苗字だもんな。普通に杉本って書くだけだよな。なんか、悲しいな…
サクラはなんともいえないモヤモヤ感を手に入れた。30のダメージを受けた。
ふむ、気を取り直して昼食でも食べようか。冷蔵庫~、なにがあるのかなぁ…
マヨネーズを手に入れた!
他には特に何もないようだ。…いやいや、ね?
他には何もないようだ。…ふ、か~ら~の~?
冷凍室を調べてみた、氷が不足しているようだ。
お、なんだ。新手のいじめかコラ。母上、勇者サクラは今日ノーミスクリアで行けってことですか?俺は野生の動物ではありませんよ?このご時世で弱肉強食とか笑えませんよ?
マズイ、ライフはまだ十分あるが腹が減っては戦は出来ん。どうする、どうする、どうする!
サクラは戸棚を空き巣並みの早さで調べた。カップラーメンを手に入れた。
エイドリアーーーン! 母上、なんて素敵な育児方法なの。こうやって自立心を高めろってことですね、いやぁ、私もまだまだです。
ふぉ、ふぉぉぉおぁぁ、透きとおったお湯が麺を包み込み、一番輝くその瞬間までこの薄い蓋が俺から麺を隠す。憎いねぇ、こいつ。なんて素敵な瞬間だ。三分なんてあっという間だ!
プルルルルッ、
ちっ、なんだ誰だ俺か?いやいや、冗談はさておいてタイミングわりーな、誰だよ全く。
「はい、もしもし。」
「………」
「…もしもーし。杉本ですがぁ。」
「………」
…ガチャッ。返事がない、ただのいたずら電話のようだ。
…さぁさぁ、ラーメンラーメン!
3、2、1… ふぉぉ! この色艶、ちょい見て、見れないなら感じて!こんなに美味いと確信出来るもの他にありますか⁉
いただきまーす。…いや、美味いねこれ。いや、なんか普通に美味くて黙っちゃうよね。俺しかいない家で黙っちゃったらほぼ無音になっちゃうけど、それでも黙っちゃうよね。
勇者サクラは突然むせた。
ぶっ! ちょ、ティッシュティッシュ。鼻に麺いった、味噌、味噌臭い。鼻が味噌臭いよぉぉぉぉ!
サクラは味噌の香りを手に入れた。
うお、鼻水味噌くせぇ。ぬー、俺は勇者だぞ、味噌臭い勇者とか王様も却下だろ、王女様も、ぶぶ漬けでも…並の早く帰れオーラ出しちゃうよ。
ピーッ、ピーッ、ピーッ。
お、洗濯終わったか。ふ、勇者様が洗濯…大いに結構。勇者は見返り求めない、気にするなの一言で全てを収める。これ、常識。
親父の靴下が現れた!
ほぅ、なかなか強敵出現じゃねーか。く、なぜ裏返ってるんだ、手を突っ込めというのか、洗いたてとはいえ50越えたおっさんの靴下の中に手を入れろと。…くぅ。
サクラは地味に40のダメージを受けた。
姉貴の下着が現れた。
…うん、まぁまぁ、ね。あー、あれね。そういうことね、へー、ほー、ふーん。
サクラは性的欲求が15増えた。ライフが20回復した。
母親の下着が現れた。
…サクラは100のダメージを受けた。
ふぅ。いやぁ、なんだかんだ夕方か。母上もそろそろ帰ってくるか、今日の砦防衛、無事成功かなぁ。
ピンポーン。
あ、誰だよ。
「はーい。」
ガチャッ。
「あら、サクちゃん。こんばんわ。」
回覧板を持った隣のおばさんが現れた!
サクラ、残りライフ170…一撃だけなら、持つはず。
「偉いわねぇ、そんなおっきくなってもしっかりお留守番できるのねぇ。」
サクラは150のダメージを受けた。
…ぐ、だ、誰か…お、俺のエアガンを…
「お仕事、まだ決まらないのかしら?大変ねぇ。」
会心の一撃! サクラは300のダメージを受けた。
勇者サクラは力尽きた。
…せめて、居留守を使っていれば……




