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3ON3!  作者: 泉谷パーム
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第二章 思いON本気 (後)

「なるほどな、そんなことが……」

 放課後の図書室。カウンターに腰掛けながら、望月春馬は目の前にいる人物と、会話をしていた。

 静寂という言葉が異様に似合う図書室という空間。だが、今日に限ってはその静寂の度合いが違っていた。一言で表すならば、「痛い」のである。もちろん、視線的な意味で。

 それもこれも、望月が話している相手のせいだった。この知識と勉学の場に、あまりふさわしくない――。というより、似合わない人物がいるからである。

「そういうこった。まぁ、大丈夫だとは思うけどな……」

「幾重の別人格、か。思っているより、あいつの抱えている心の闇は深そうだな」

「だな。けど、こればかりは俺らじゃどうしようもないしな。ま、あとはあいつ自身で何とかするしかないさ」

 話相手はにっこり微笑んで、懐から一冊の本を出す。最近ドラマにもなった有名な恋愛小説だ。

 春馬の横でその光景を見ていた別の図書委員は、驚きのあまり立ち上がった。

「ところでこれ、面白いのか?」

「俺は恋愛小説は読まないからな。が、なかなか評判はいいらしい」

「そっか、じゃあこれ借りていくぜ」

「貸し出し期限は一週間だ。遅れるなよ」

 全くもって普通の会話。だが、その会話を繰り広げている人物が、図書室に似つかわしくない、不良男の鉾田連太郎となれば、話は別である。

 図書室内にいる生徒たちは、声も出せないまま驚いて目を丸くした。

 しばらくしていると、図書室に別の生徒が入ってきた。

「失礼、します……」

 図書室内の生徒たちの視線が、今度はその生徒に向かった。彼女もまた、色々な意味で注目の人物だったからだ。

「あれ、天野じゃん」

「うわ、鉾田……」

 汚物を目の当たりにしたかのように、咲海は連太郎を見た。

「お前何してんだ?」

「それはこっちの台詞。鉾田のくせに何で図書室に……」

 咲海の視線が、連太郎の持っている本に向かう。彼女もまた、驚きのあまり一瞬声が出せなくなった。

「何だよ?」

「あんたこんなの読むの?」

「あん? るせぇな! 頼まれたんだよ」

「ふぅん、頼まれた、ねぇ。てっきりあんたもついに恋愛する気になったのかと思った」

 咲海が皮肉を垂れると、連太郎は赤面して、

「な、ななんあな、んなわけないだろ!」

「鉾田、静かにしろ。図書室だぞ」

 春馬に諭され、連太郎はしゅんと黙り込んでしまう。

 咲海はぶすっとしながら春馬のほうを向いた。

「あのさ、望月」

「なんだ、また勉強、か?」

「う、うん……」

「あ、じゃあ俺はこれで」

 淡白な挨拶を残して、連太郎は足早に図書室を去っていった。

 彼がいなくなったことで、図書室中の視線が更に突き刺さってきた。

 ――やっぱり、望月狙いか。

 ――天野ってこないだ望月に告ったらしいよ。でもフラれたって。

 ――あの様子だと諦めきれないみたいね。ウザッ!

 視線の先から、そんな声が聞こえてくるようだった。咲海は俯き、視線に耐えながらそっと春馬から目を逸らそうとする。

「ふむ。まぁ俺はいいが、まだ図書委員の仕事があるからな」

「おーい、望月。今日はいいよ、後は俺がやるからさ」

 春馬の隣に座っていた別の図書委員が、ニヤニヤと笑みを浮かべながら春馬の肩をポンと叩いた。

「いいのか、すまないな」

「いいって、あとは二人でごゆっくりぃ」

 彼の厚意に甘え、春馬は席を立ち上がった。

「いくぞ。ここだとどうも集中できないから、場所を変えよう」

「あ、うん。そうだね」

 咲海は周囲をちらちらと見ながら、春馬の後をついていくことにした。

 よく見ると、こちらをみている図書室内の連中は、顔をニヤつかせている。

 ――ああ、そうか。みんなただ、あたしらのことを……。

 ――馬鹿だな、あたし。

「おい、どうした?」

「ひゃっ!」

 突然春馬に顔を覗き込まれ、驚いて咲海は仰け反った。

「大丈夫か?」

「ご、ごめん。いこうか」

 図書室を後にして、二人は黙ったまま歩き出した。

「ところでどこで勉強する?」春馬が聞いた。

「そ、そうだね……。あ、じゃあファミレスにでも……」

「ふむ。まぁいいだろう」

 学校の外へ出て、二人の会話が再び途絶えた。

 その間、周囲の視線が痛く感じた。嫉妬か、それとも冷やかしか、もう咲海はどちらでもよかった。もう……。

「ところでさ」沈黙に耐え切れず、咲海が言葉を発した。「こないだは、ごめん」

「何の話だ?」

「ほら、例の告白……」

 さすがに気恥ずかしかったのか、咲海は口を噤んだ。

 再び訪れる、沈黙の時間。咲海は俯き、時折春馬の様子を窺いながらしばらく歩いていた。

「あれか。まぁ俺は気にしていない」

「そっか。そう、だよね……」

「お前はどうなんだ? まだ、俺のこと諦めきれないのか?」

 春馬に聞かれ、咲海は言葉に詰まる。

 今思えば、隣にいる男子に自分は告白して、そしてフラれたのだ。あれから二日しか経っていないのに、こうして一緒に歩いているのだ。プラスに考えるのならば、以前より新密度は上がったのかも知れない。

 だったら、正直に答えよう。

「うん、まだあんたのこと好きだよ」

「そう、か」

 相変わらず、気持ちの抜けきった返事をされた。こういう男子だとは分かっていたが、咲海は少しムッとしてしまう。

「あんたはさ、何で恋愛しないの?」

「興味ない。理解できない。ただ、それだけだ」

「それだけなの?」

 思わず強気で聞き返していた。彼に対してこんな態度を取ったのは初めてかもしれない。

 春馬は黙った。俯いて、何か思うところでもあるように渋い顔をした。

 そうこうしていると、目的のファミレスに到着する。中に入って、店員に案内されるがままに禁煙席へと向かい合って座った。

 春馬はふぅとため息を吐いて、口を開いた。

「そうだな。お前には、正直に話してもいいかもな」

 ――えっ?

 見たことのない表情だった。いつも無表情だった彼の瞳が、眼鏡越しにでも分かるほどに真摯になっていた。

 あまりにも突然だったので、咲海は戸惑った。

「あのさ、先にドリンクバー取ってきてもいいかな? 喉渇いちゃった」

 気恥ずかしさのあまり、そんな台詞が咲海から出た。

「なら俺も……」

「いいよ、あんたの分も取ってきてあげるよ。話はその後で……」

 春馬に向かって手刀を切り、咲海は席を立ち上がった。

「悪いな。じゃあアイスコーヒーを頼む。ブラックで構わない」

「了解」

 席を離れ、咲海はゆっくりとドリンクバーへ向かった。コップを機械の下に置き、アイスコーヒーのボタンを押す。

 ――緊張、しちゃったな。

 何を話すのかは分からなかったが、一瞬春馬が心を開いたような気がした。彼の本心を聞けるのは、これが初めてで……、そして最後かも知れない。

「お客さん、お客さん!」

「えっ、はい?」

「溢れてますよ、コーヒー」

 店員に呼ばれ、咲海ははっとした。気がつくと、ドリンクバーのコーヒが噴水のように溢れかえっていた。


「お、お待たせ」

「随分遅かったな」

「ご、ごめん。ほら、アイスコーヒー」

 春馬から目を背け、彼の前にそっとコーヒーを置く。彼女の態度に少しばかり訝しげになりながら、春馬はコーヒーにストローを指した。

「で、続きは?」

「続き、とは?」

「だから、何を正直に話すんだよ?」

 咲海は気恥ずかしそうに、コーラをぶくぶくと泡立てながら飲む。

 春馬はコップを置いて、一息入れて、

「正直に話すと、俺は……」

「あれぇ、望月じゃん!」

 どこからか、女子の声がした。

 咲海は驚いて周囲を見渡す。彼女らが座っている席より少し離れた場所にいる女子高生たちが、こちらを見ていた。

「えーっ、久しぶり。なんかすごいイケメンになったじゃん」

 染め上げた長い茶髪を弄りながら、彼女らが近づいてきた。

「淺川……」

 彼女を見るなり、春馬は苦い顔で歯を食いしばった。

「ねぇねぇ、ヒナ、知り合い?」

「うん、こいつさぁ、あたしと同じ中学だったんだよね」

 彼女の友達らしき女子高生たちが、次々とこちらに集まってくる。

 完全に孤立してしまったような気になり、咲海は肩を窄めた。ちらっと春馬の顔を見る。彼もまたどうしてか、咲海と同じように肩を窄めていた。

「うわっ、すごいイケメン」

「ホントだぁ。マジヤバいじゃん」

 他の客なんてお構いなしといった態度で、女子生徒たちがキャハハと馬鹿笑いを挙げる。派手なメイクをしているのは咲海も一緒だが、さすがに彼女らと同列に見られるのは勘弁してほしいと思った。

「ねぇねぇ、聞いて」

 最初に話しかけてきた女子高生が得意気に喋った。

「なになに?」

「実はさぁ、こいつ」彼女の目が一層嫌らしくなった。「中学んとき、あたしに告ってきたんだよねぇ」

 そういって、彼女らは更にどよっと騒がしくなった。

 ――嘘!?

 咲海は信じられなかった。この女のことだから、適当なことを構わず喋ってもおかしくはないと思った。

「え、まじぃ!? ヒナッち、なんで付き合わなかったの?」

「だってぇ、そんときのこいつ、マジダサかったからさぁ。なんていうかネクラで、教室の隅っこで一人本を読んでいるタイプだったしぃ」

 咲海は春馬のほうを見た。彼は俯き、必死で歯を食いしばり、拳を握りながらガタガタと小刻みに震えていた。

「で、今日はこんなところで何してんの? そういやそこにいる子誰? 彼女?」

 馴れ馴れしく、彼女が話しかけてきた。咲海はこっそり彼女を睨み付けた。

「いや、違う。一緒に勉強していた、だけだ」

 苦い表情で、春馬はなんとか言葉を発した。

「へぇ、そうなんだぁ。優等生になっちゃって」

「ねぇ、ヒナ」別の女子が喋った。「この際だからさぁ、付き合っちゃえば?」

 ――何だって?

「そうだって。ヒナっち今彼氏いないんでしょ?」

「望月っていったっけ? 彼、なんていうか彼氏力高そうだしぃ」

「あたしもいいと思う。貰ってあげなよぉ、望月ぃ」

 集まった女子高生たちからの、付き合えコールが響く。

 店員も客も、店内にいる皆がはた迷惑そうにこちらを睨みつける。

 ――ふざけんなよ。

 咲海の怒りは限界に近づいていた。春馬が他の女子と付き合うならば諦める覚悟はある。しかし、こんな女に取られるぐらいなら……。

「えーっ、もう、しょうがないなぁ。望月、この際だからあたしと付き合おう……」

 バシャッ!

 一瞬にして、店内が静まり返った。

 事態を見つめていた店員や他の客たちは目を丸くした。女子生徒たちも、春馬も、目を丸くした。

 何が起こったのか分からない表情で、ヒナと呼ばれた女子生徒は呆然としている。しばらくして、彼女は自分の頭が濡れていることに気がついた。

 落ち着きを取り戻して、春馬は咲海を見る。彼女はヒナへ、黙ったままコップの口を向けていた。

「頭、冷えた?」

 ヒナの髪の毛から氷が滑り落ちる。彼女は怒りを顔に表して、咲海へと詰め寄った。

「ちょっと、あんた何すんのよ!?」

「おい、淺川」

 近づこうとする彼女を、春馬が制止した。

「止めるなよ、望月のクセに!」

「望月のクセに? あんたなんかに望月の何が分かるのさ!?」

 静まり返っていた店内に、罵声が飛び交った。

「謝りなさいよ、このブス!」

「そっちこそ、望月に謝れ!」

 喧嘩を始めた二人を、春馬は必死で止めようとしていた。

「落ち着け、二人とも!」

「落ち着いていられないよ! ふざけんなよ、あんたのせいで、望月は……」

「いい加減にしろ、天野! やりすぎだぞ!」

 春馬に諭され、咲海はうっと息を漏らして力を弱める。

 舌打ちをしながら、春馬はヒナのほうを向いた。

「悪かったな、俺の連れが粗相をして」

 春馬は鞄からタオルを取り出し、ヒナへと手渡した。

「あ、ありがとう」

 ヒナはばつが悪そうに、口をへの字に曲げながらタオルを受け取る。

「行くぞ、天野。ここじゃ勉強は出来ない」

「あ、うん……」

 春馬は無表情のまま席を立った。一瞬ヒナを睨んだ後、咲海も彼の後へ続いた。

「それとな、淺川」春馬はゆっくり後ろを振り返り、ヒナを睨み付けた。「そのタオル、返さなくていいからな。一生、な」

 言葉にわざと嫌味を込めて、春馬は去っていった。それを聞いた途端、思わず咲海はぷっと吹き出した。

 惨めな思いになりながら、ポカン、と女子高生たちは彼らを見つめていた。


「あー、スカッとした! 望月の最後の台詞、よかったよ」

 感無量といった表情で、咲海は足軽に歩いていた。それに対し、春馬は相変わらずブスッと顔を顰めていた。

「ねぇ、望月」

「なんだ?」

「さっき話したかったことって、あの女のこと?」

 咲海が尋ねると、春馬の足がピタリと止まる。釣られて咲海の足も止まった。

「ああ、そうだ」

「さっきあの女が言っていたことも、本当なの?」

「……ああ」

 春馬はいつになく弱々しい声で返事をした。

 ――やっぱり。

「好き、だったの?」

「まぁ、な。一時の気の迷いって奴だったがな」

 春馬は頭を抱えて、ゆっくりと話をし始めた。

「あいつが言っていたように、昔の俺は本当に誰とも話さない臆病者だった。それではいけないと思い、たまたま隣の席でよく話していた女子に恋をした」

 それが、さっきの女。

 春馬が恋をしていた。それはにわかには信じられない話でもあった。

「そして俺は告白をした。ま、フラれてしまったがな」

 春馬は頭を抱えて、ため息を吐いた。

「その噂はすぐに学校中に広まった。ネクラな俺が告ったなんて、噂好きな連中には格好の話のタネだったんだろうな。毎日のように冷やかされ続け、そして俺は、一時期登校拒否をした」

「そんな……」

「本当だ。しかしそれではいけないと思い、自宅で必死に勉強をした。そしてなるべく誰とも関わらないように過ごしてきた」

 春馬はしゃがみ、空を仰いだ。夕焼けの光が目を焼くようだった。

「そっか。そんなことがあったんだ」

「ああ。おかげで人を疑うようになってしまった。そして、自分の恋愛感情すらも……。噂や情報に敏感になったのもその頃からだな。どうしても、理解できないんだ、俺は……」

 春馬はゆっくり立ち上がった。尻についた砂を払い落とし、咲海をじっと見つめた。

「そういうことだ、天野。俺はお前が思っているほど強くない」

「なるほどね」

 そういって、咲海は春馬の肩に、そっと手を添えた。

「あたしといっしょだ」

「なんだと?」

「あたしね、惚れっぽい性格で、昔からいろんな男の人を好きになってきた。でもどれもうまくいかなくて……。そんなことを繰り返していたら、みんなから男好きとかビッチとか噂が立っちゃって」

「なるほど、な」

 噂に翻弄された、という点では境遇は似ている。春馬はそう思った。

 咲海はにっこりと春馬に微笑みかけた。

「でも、あたし初めてかもしれない」

「何が?」

「今まであたしが好きになってきた人は、格好良くて、優しくて、頼りがいがあって……。相手のいいところばっか好きになっていた」

 咲海は夕日に向かって駆け出し、少し春馬から離れたところでくるっと振り返った。

「あたしね、この恋は初めてなんだよね。相手の、弱いところも好きになれるの」

「えっ?」

 満面の笑顔に、春馬はいつの間にか赤面していた。

「だからさ、諦めないよ。あんたのこと。本気、だから」

 それだけ言い残して、彼女は走り去っていった。

 本気の恋――。

 その言葉だけが、春馬の脳裏をぐるぐると過ぎっていた。

「なんだろうな、この気持ちは……」



「あ、先生。さようなら」

「うん、またね」

 すれ違う生徒たちと挨拶を交わしながら、ユリナは廊下を足早に進んでいく。

 文集の編集も一段落し、たまには早く帰ろうと思っていた。ただでさえ例の噂の中心にいる立場なので、若干学校に居辛い気持ちもあった。

「あーあ、今日も話せなかったな」

 ユリナは上の空でそんなことを呟く。例の一件以来、自分が好きになった相手、連太郎とはほとんど話が出来ていない。授業中も連太郎は渋い顔で黙っているだけだった。それが彼女には歯痒く感じた。

 職員用出入り口を抜け、駆け足で校門へと向かう。こんなとき車があれば便利だな、なんてことを考えたりもした。

 しばらく歩いていると、一人の男子生徒を見かけた。何を考えているのか分からない顔で、彼はポケットに手を突っ込んだまま歩いていた。

「鉾田、くん?」

 ――チャンスだ。

 一度でいいから、二人きりで話す時間が欲しかった。教師と生徒ではなく、仲のよい男女として。今がその時ではないか。

 しかし……。

 正直、彼に話しかけづらい気持ちのほうが強かった。告白した以上、今更後戻りの出来ないことではあるが、こんなことなら教卓から彼を眺めている程度の距離感のほうが良かったのかも知れない。ユリナは少しずつ弱気になっていった。

「ダメダメ、そんなんじゃ!」

 教師として、そして一人の女性として、彼女の中で葛藤が渦巻いた。その戦いは、彼女の諦め切れない思いが勝った。

 ユリナはゆっくり、連太郎の後を追うことに決めた。そっと、電柱や看板の陰に隠れながら、彼を尾行する。

「ママー、あのお姉ちゃん何してるの?」

「え、何? そんなものないわよ」

「えー、いるじゃん」

「それはきっと女神様ね、気にしなくていいわよ」

 近くの親子のやり取りも無視し、ユリナは尾行を続ける。これって露骨にストーカーなのではないか、と思ったが、本能に従って行動することに決めた。

 しばらくすると、連太郎は意外な建物の前で立ち止まった。

「あれ? ここって……」

 連太郎は無言のまま、その建物に入る。鉄筋製の、無機質な建物だった。そこの前は「愛峰総合病院」と書かれている。

 ユリナは恐る恐る、中へ入っていった。

「二○五号室の、矢島と面会したいんですけど」

 受付で、彼がそう言ったのを、ユリナは聞き逃さなかった。

 しばらくして受付を済ませたのか、連太郎は無表情のままその場を去っていった。ユリナも彼に続いて行こうとする。

「あの、すみません」受付のナースに呼び止められる。「本日は、どういったご用件で?」

 あっ、と彼女は赤面してしまった。教師として、恥ずかしい光景だった。


「ちぃっす」

 渋い顔を緩め、連太郎は病室へ入っていった。

 病室のベッドに、一人の男性が横になっていた。初老の、少しばかり恰幅の良い男性だった。

「おお、久しぶりだね、鉾田君」

 男性は上体を起こし、枕元に置いてあった老眼鏡を掛ける。

「ヤジセンも元気そうじゃねぇか」

「ははっ、まだまだ現役だよ」

 お互いに、顔を見合わせて微笑んだ。

 しかし連太郎は、心なしかこの男性の声に元気がなくなってきているような気がした。なんとか不安を表に出さないよう、気をつけようと思った。

「ほら、これ。最近ドラマになった奴」

 連太郎は鞄の中から、一冊の本を取り出す。それは、先ほど図書室で借りてきた本だった。

「おうおう、これか。いやぁ、いっぺん読みたかったんだよね、これ」

「ホントかぁ? 全然そんな風には見えなかったけど」

「いやいや、鉾田君にはいつも感謝しているよ。何せ、ベッドに寝ているだけって思った以上に退屈だからね。本を持ってきてくれるのは非常にありがたいよ」

 連太郎はそっと男性の顔を覗き込む。彼の瞳には、以前のような元気がなくなっているような感じがした。

 ――ヤジセン、痩せちまったな。

 今でも中年太りの後遺症が残っている身なりだが、連太郎の知っている彼はもっと肥えていた。まさに大らかという言葉がふさわしい男だった。

「ところで、鉾田君」

「ん? なんだ、ヤジセン」

「最近恋愛ものをよく借りてくるじゃないか。これはどうしてだい?」

 連太郎は思わず赤面した。

「な、なんだよ。恋愛もの好きじゃないのか?」

「いいや、大好きだよ。ただ、君らしくないと思ってね」

 そういって、ヤジセンと呼ばれた男は、顔をニヤニヤとさせた。

「ははぁ、もしかして、鉾田君はとうとう恋をしたのかな?」

「ば、バカ! そんなもんしてねぇっての!」

 連太郎は慌てながら、鞄のチャックを閉める。

 ――ヤジセン。無理すんなよ。

 彼を心配する気持ちが、更に募っていった。どうせなら、自分が代わりに……。そんな気持ちが過ぎった。

 ――俺はまだ、あんたに返しきれない恩があるんだ。それまで、元気でいてくれ。

 連太郎は中学時代の担任に向けて、真剣な眼差しを送った。

 自分自身を見失い、喧嘩に明け暮れていた日々。来る日も来る日も、ガンつけた相手と殴り合いをしていた。それはただ、己の乾いた欲望を潤すためだった。いつしか彼は最強の“番犬ケルベロス”と呼ばれるようになっていた。

 当然のごとく、教師たちは自分を見捨てた。いや、初めからいなかったかのように扱っていた。その存在感を補うかのように、連太郎は更に喧嘩をし続けた。

 そんな彼に対して、唯一真正面から向かっていったのが、このヤジセンこと矢島雅夫だった。連太郎の喧嘩に割り込み、なんとか彼を抑えようと必死で立ち向かった。喧嘩をした相手の両親や学校へ、土下座をしたこともあった。そして、連太郎に向かって平手打ちをしたこともあった。

「鉾田君、君が持っている強さは本当の強さじゃない」

 そんな台詞を吐いていた記憶がある。馬鹿がつくほどの絵に描いたような熱血教師だったが、そんな彼に対して次第に心を開いていった。

 そして彼の薦めで連太郎は愛峰高校に入学した。ここなら君はきっと本当の強さを得られる、と矢島は言った。

 ――あんたがいなけりゃ、俺は今でも拳が血まみれだったんだろうな。

 矢島が倒れたと聞いたのは、高校に入学して間もない頃だった。病名ははっきりとは分からない。しかし、若い頃の無理が祟ったということだけは知っている。

 それ以来、連太郎はこうして彼の病室に足を運ぶようになっていた。

「私も永くないかな」

 冗談めいた顔だったが、彼らしくない、弱気な発言が漏れた。

「バカなこと言うなよ。ヤジセンはそう簡単に死なねぇっての」

「いやいや、人間、いつか死ぬもんだよ。だから、これだけは君に言っておきたいんだ」

 矢島は優しく、そして真剣な目で連太郎を見つめた。吸い込まれてしまいそうな眼差しを、連太郎も真剣に見つめた。

「強い男になりたかったら、本気で恋をしなさい」

「えっ?」

「それが、教師として私が君に最後に教えたいことだ」

 夕焼けが、少し沈み始めた。

 連太郎は黙って立ち上がり、ゆっくりと踵を返した。

「その本、期限一週間だからな」

「ははっ、頑張って読み終えるよ」

 元通りの優しい挨拶。互いに交わした後、連太郎は病室を去っていった。

 連太郎の目に涙が浮かんでいた。しかし、彼はそれを見せないように、後ろを振り向かなかった。

 病室が、再び静寂に包まれた。他の入院患者は寝ているか黙っているのか、一言も言葉を発しなかった。

「ところで」矢島が喋った。「あなた、入らないんですか?」

 入り口の物陰から、一人の女性がのっそりと様子を窺ってきた。彼女は緊張した様子で、矢島のベッドへ向かっていった。

「おや、私に用事でしたかな。失礼ですがどちら様で……」

 彼女は顔を強張らせながら、

「あ、あの、私、鉾田君の担任で、その、葉月、といいまして……」

 舌を噛む一歩手前で挨拶をし、ぎこちない会釈をした。

「ほう、彼の担任の先生ですか。大変でしょう、彼は」

 彼女の態度を読み取り、矢島は優しい顔で微笑んだ。

「え、ええ。まぁ……。授業はサボるし、寝るし、面倒くさがりだし、酷いときなんか授業中に納豆巻き食べているんですよ」

「はは、相変わらずですね」

「でも……」ユリナは顔を赤らめた。「本当は思いやりのあって、すごくいい子です。それは、保障します」

 ユリナが褒めると、矢島はこくん、と頷いた。

「そうですか」

 矢島は苦笑いを浮かべた。そして、もう一度彼女を見た。

「ところでどうしてここに?」

「えっと、あの、帰りに偶然この病院の前を通ったら、偶然彼を見つけて、少し気になって、その……」

 必死で言い訳を考えるユリナ。その様子に、矢島も更に笑い出した。

「なるほど」

「ところであなたは、その、鉾田君の担任だったんですか?」

 なんとか緊張をほぐそうと、ユリナは他愛のない質問を投げかけた。

「ええ。中学のね。彼には本当に苦労させられましたよ」

「でもこうしてお見舞いに来てくれるなんて、鉾田君よっぽどあなたに感謝しているんですね。すごいです、あの彼を……」

 ユリナがそういうと、笑っていた矢島の顔が険しくなった。

 まずいこといったかな、とユリナは一瞬顔を苦くさせた。

「私は、そんな褒められた教師じゃありませんよ」

「えっ?」

 夕暮れが、更に沈んだ。外はすっかり暗くなっている。

「私はね、人を愛することのできない男なんです」

「愛、せない?」

 ユリナは怪訝な顔で矢島を見た。矢島は窓から外を眺めている。

「そんな私が唯一できることは、道を誤ってしまいそうな生徒をなんとか救うことだった。自分が人を愛せなかった分、彼には人を愛する心を知ってもらいたかった。そして、強くなってもらいたかった」

 “彼”が連太郎を指していることはユリナにも分かった。この男性教師がそこまで連太郎のことを心配していたことに、彼女は戸惑いを隠せなかった。

「彼はね、可愛そうな子でした。両親の仲が悪くてね、毎日夫婦喧嘩が耐えなかったみたいです。夫婦喧嘩とはいっても犬も食わない、なんて言えるほど可愛いものではありません。暴力、罵詈雑言、それはもうお互いにいつ殺しあってもおかしくないほどに悲惨でした」

 ユリナは驚いた。不良ではあるが根は明るく優しい少年、それこそが彼女の連太郎に対するイメージだった。

「そして、彼の両親がとうとう離婚しました。その頃から、彼は喧嘩ばかりするようになったんです。そんな環境で育ったから、彼は人を愛することを知りませんでした」

 思わず、担任としてユリナは自分を恥じた。連太郎のことを好きだなんていっても、今まで彼のことを何も知ろうとしなかった自分に苛立った。

「そんな、ことが……」

「でもね」矢島の顔が、再び明るくなった。「もう彼は大丈夫みたいですね。よく話してくれますよ、高校になって初めてできた、親友のこととか。鴻上君と、望月君でしたかな。話を聞く限り、二人ともいい子みたいですね」

「ええ、まぁ……」

「それに……」矢島はチラッとユリナを見た。「あなたみたいな、素敵な担任と巡り会えたみたいで、良かったです」

 そういわれて、ユリナは顔から火が出そうになった。

「そ、そんなことないです。私だって、その……」

「ははぁ」何かを確信したかのように、矢島はユリナに微笑みかけた。「もしかしてあなた、鉾田君のこと……」

「そんなんじゃないですよ、もう!」

 顔を真っ赤にさせながら、ユリナは叫んだ。

 夕暮れが完全に沈んだ。ユリナが腕時計を見ると、時刻は午後の六時を過ぎている。

「そろそろ面会時間が終わる頃ですよ」

「あ、すみません。なんかお邪魔しちゃって」

「いいんですよ、楽しかったです」

 優しい顔で、矢島はユリナに頭を下げた。

 ――勝てないな、この人には。

 ユリナは心の中で深いため息を吐いた。

「鉾田君のこと、よろしくお願いしますよ」

 もう一度、ユリナは矢島を見た。彼の笑顔は、本当に天使のようだった。

 ――ドクン。

 ユリナの心臓が、一瞬高鳴った。

 ――あれ、何だろう? 何か、変な……。

 突然、彼女に良いとも悪いとも取れない予感が襲う。一瞬だが、何か起こるのではないか、彼女は首を傾げた。

 ユリナは外を見た。

 辺りは既に暗くなっていた。

 ――鉾田君。私、何かできることないかな?

 山積みの考え事をかき混ぜながら、ユリナは帰路を歩いていった。



 土日の休みも終わり、月曜日。

 真雪の宣戦布告から、一週間が過ぎようとしていた。

 屋上に、いつもどおり連太郎、幾重、春馬の三人が集まった。誰にも邪魔をされずに弁当が食べられるのはありがたいと感じていた。

「結局、なんだったんだろうな、あれ」

 連太郎は肩肘をつきながら納豆巻きを頬張った。

 結局、この一週間連太郎はほとんどユリナと会話しないまま過ぎた。文集の編集作業も終わっており、彼女と個人的に会話する機会もほとんどなかったので、そう感じたのかもしれない。

「さぁ、な」

 春馬は俯いた。そのまま、弁当のエビフライを口にした。

「どうした、春馬? 顔暗いぞ」

「いやな、少し考え事をしていた」

 春馬の態度に、連太郎は眉をひそめる。

「何かあったのか? ほら、こないだ図書室で……」

 春馬はエビフライを喉に詰まらせた。ウーロン茶を飲み干し、なんとかそれを流し込む。

「まぁ、な」

「ふぅん」

 連太郎が気の抜けた返事をすると、春馬はふぅとため息を吐く。

『あたしね、この恋は初めてなんだよね。相手の、弱いところも好きになれるの』

『だからさ、諦めないよ。あんたのこと。本気、だから』

 この間、咲海が放った最後の言葉が、未だに忘れられなかった。

 本気の恋。彼女はこれまで自分を好きになった女子とは、何かが違っている。どこが違うのか具体的に分からないのが、春馬をもやもやさせた。

 ――本気の恋、か。

 もう一度ウーロン茶を飲み、心を落ち着ける。

「あのさ、連ちゃん」

 幾重が呼びかけた。

「ん? どった?」

「僕ね、あれから考え直したんだ。姉さんのこと……」

 場が一斉に静まった。

 幾重は悲しそうな顔で、語り始めた。

「僕はもしかしたら、今まで自分のことしか考えていなかったのかもしれない」

 幾重は拳を握り、ゆっくりと開いた。軽く瞬きをして、ゆっくりと視線を連太郎たちに戻す。

「剣道を始めて、強くなった。もちろんまだまだ弱いと思うけど、昔に比べたら、だいぶ変わったと思う」

「まぁ、そりゃ……」

「でも」幾重は強く言った。「僕は心の奥底で、女の人を憎んでいたのかもしれない。女の人を怖がっていたんじゃなくて、女の人を憎んでいる自分を怖がっていた。強くなりたかったのだって、そんな気持ちを少しでも払拭したかったから」

 幾重は強い目で、連太郎たちを見た。

「姉さんは、そんな僕を好きだといってくれた。守ってくれるといった。これだけはいえるよ。姉さんは、本気で僕のことを好きだって」

 そうだ。ようやく分かった。

 幾重は、自分の考えがまとまり始めた。

 結局、自分は姉から逃げていたのだ。彼女といることで、自分が弱く感じる。誰にでも尊敬される姉だからこそ、より惨めになる。

「正直言うと、まだ女の人は怖い。それに、姉さんに甘えるだけの自分は嫌だ。けど……」

 幾重は拳を握り、連太郎たちの前に突き出した。

「な、どうしたんだよ?」

「僕はもう逃げない。姉さんからも、女の人からも。ビビッて逃げていたら、多分また数多が出てくる。あいつがみんなを傷つけることはなんとしても避けなきゃいけない。自分の恐怖心に打ち勝たなきゃ、僕は一生弱虫のままなんだ」

 連太郎と春馬ははっと目を瞠った。こんなに強い彼の顔は、初めて見た。

 ――そっか、幾重も本気なんだな。

 ――いつの間にか、こいつも強くなっていたんだな。

 そう思った途端、二人はいつの間にか笑い出していた。

「な、何か変なこといったかな?」

「い、いや別に。なんていうかお前、強くなったなって」

「えっ、そうかな?」

「ホントだって。お前、すげぇよ。やっぱ」

 連太郎は親指をぐっと立て、幾重に見せる。幾重は恥ずかしそうに頬を掻いて、目を逸らした。

「まぁ俺もあれから色々考えた」

 今度は春馬が語りだした。

「お、聞かせてもらおうじゃん」

 春馬は眼鏡を直して、連太郎たちを見た。

「幾重、お前に言われて気づいた。俺は恋愛に興味がなかったんじゃないって」

「つまり、どういうことだよ?」

「つまりは、だ」春馬はこほんと咳払いを挟む。「俺は今まで、恋愛感情というものを疑っていた。いや、知ろうなどと思わなかった」

 そうだ。自分もまた、逃げていたんだ――。

 春馬の初めての恋。人を好きになり、失恋をして、そして噂になったり冷やかされたりした。それがただ怖くて、自分は恋愛のメカニズムが分からなくなっていた。いや、分かろうとしていなかったんだ。

「しかし、天野は違った。俺の弱いところを知っても、そこを好きになれると言ってくれた。あいつもまた、“本気”なんだ」

「“本気”……」

 咲海も、真雪も、形は違うとはいえ、自分の本気を貫こうとしていた。それだけ、彼らのことが好きなんだと、ようやく二人は気付く。

「俺もまだ、恋愛というものが一体何なのか分からない。しかし……」春馬は真剣な顔を浮かべる。「あいつが本気なら、俺も本気でいきたい。もう、俺も逃げたりなどしない」

 再び流れる、静寂ながら強い空気。

 友人二人の真剣な顔に、連太郎は辟易してしまう。

「なんだよ、お前らいつの間にそんな格好良くなったんだよ」

 軽く舌打ちをして、連太郎は納豆巻きをもう一回齧った。

「連ちゃんだって分かっているんでしょ?」

「葉月先生も、本気だとな」

 ――ああ、そうだな。

 連太郎も、心の中では分かっていた。彼女の自分に対する気持ちは、“本気”だと。

 だからこそ、連太郎は逃げていた。逃げるしかなかった、といったほうがいいのかも知れない。

 ――そうだ、ヤジセンがいってくれたじゃないか。

「そっか、そういうことか」

 連太郎は、二回ほど勝手に頷いた。

「どうしたの? 一人で分かったような顔を浮かべて」

「いや、何。以前、お前らにヤジセンの話はしただろ?」

「ああ、お前の恩師の……」

 この間、そのヤジセンは言っていた。その言葉が、まさかここで出てくるとは思わなかった。

「ヤジセンは言っていた。『強い男になりたかったら、本気で恋愛をしなさい』って」

 その言葉を放つと、二人は黙り込んだ。

 連太郎は固い拳骨をつくり、二人の前に突き出した。

「俺もさ、恋愛なんてメンドくせぇって逃げていた。けど、けどさぁ、やっぱそれって違うんじゃないかって思うようになってきた」

「違うって?」

 連太郎は苦い顔で、髪をクシャクシャに掻き乱した。

「正直ヤジセンの言葉の意味、俺にはまだ良くわかんねぇよ。けど、これだけは言える。メンドくせぇなんて言い訳して、葉月の思いから逃げていても、俺は一歩も成長できないって」

 連太郎もまた、真剣な眼差しを浮かべた。

「だからさぁ、俺、決めた。恋愛から逃げない、って。もうあいつらに“恋愛ニート”なんて呼ばせない。だってそうだろ、あいつら本気で俺らのこと好きなんだぜ。だったらそれに本気で立ち向かってやるのが男ってもんだろ!」

 そういって、連太郎は更に拳を強く握った。

 三人は真剣な眼差しをお互いに向け、そして拳をガツンとぶつけた。

「決まりだな」

「ああ」

「そうだね、連ちゃん、春馬君」

 もう一度、お互いに頷きあう。

「約束しよう。僕たちは、もう逃げないって」

「女子たちの告白を断るにしろ受け入れるにしろ、本気で立ち向かう。それでいいな?」

「そして……」連太郎は立ち上がった。「絶対、みんなが納得いくようにするって。誰か一人でも悲しませたりしたら、俺が殴る!」

「やれやれ……」

 幾重と春馬も立ち上がった。そして今度は二回、拳をぶつけ合った、

「いいか、俺らはもう“恋愛ニート”なんかじゃねぇ! あいつらに見せてやろうぜ、俺ら流の、最高の本気をな!」

 三人は肩を組み、そして、

「おう!」

 大きな声で、叫んだ。

 ――もう、逃げたりはしない。

 そして――。

 中途半端な恋ではなく、本気の恋、見せ付けてやる!

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