第14話
「今日の午前中の講義の間、1つのパーティーは工業科と合同になった。工業科で新しく造られた乗り物の試乗運転を行ってもらいたいそうだ。ま、そこで一番暇なお前らがやることになってな」
いや、一年はもう一クラスあるだろうに、なんで俺たちが・・・
「そこでだ。俺の独断と偏見でパーティーを決めておいた。リヴテランスのパーティーに決定しておいた」
クラスのみんなからブーイングが起きる。この先生は意外と人気があるが、たまに今回みたいな強引なところがある
「わかったわかった、説明してやるから黙れ。力の弱い人二人と、力の強い人二人を必要みたいで、パーティーである必要はなかったんだが、ちょうどいいパーティーがあった、というわけだ。ほら、リヴテランスのパーティーはさっさと行け」
校庭にでてみると、みなれないものが2つあった。2つの車輪が少しはなれて直線上に並び、その間に座れるように椅子みたいなものが取り付けられている。大きさは小さいのは1メートルくらい、大きいのは2メートルを軽くこえているくらい。
他にもたくさんの部品が付いているが、よくわからず、唯一わかるのは前輪らしきほうの車輪に、方向操縦用のとってくらいだ
「これは文明崩壊以前の時代にバイク、オートバイ、自動二輪とよばれていたものです。文明崩壊のことは知っていますよね?」
今から約千年前くらいに繁栄していた文明が崩壊した。それも全ての大陸の文明がだ。それは人だけに限らず、エルフ、ドワーフ、アニム、その他の種族すべての文明がだ。詳しい原因は分かっていない。ただその文明が持っていた科学と魔法の技術は今を上回っていた。こっちに来る時に乗ってきた汽車もその時代のものを改造して造られているらしい。そんな具合で今の暮らしに多大な影響を与えている
「その時代の動力機関をもとにして、車輪を動かして移動する機械です。昔はもっと小型のものもあったそうですが、現在では動力機関の関係でこの大きさが限界になっています。工業科の2年生のパーティーと先生が協力して作ったものです。それじゃさっそく始めましょう。運転方法は造ったパーティーの人たちに聞いてください」
「それじゃ説明をする前に自己紹介をしておこうか。僕はクレイン・コーエイ。こっちのバイクを造ったパーティーのリーダーをやらされてるんだ」
先生に代わって話し始めたのは、ハイレンより背の低い男だった。クレイン先輩はかなりの大きさのバイクをさしての自己紹介だ
次に自己紹介してくれた人は、小さいバイクを指しながらだ。どうやらクレイン先輩とは違うパーティーのリーダーのようだ
クレイン先輩達に続いて、他の人たちも自己紹介してくれる。それにこちらも順々に自己紹介を返していく。全員が自己紹介を終わったあとに運転方法を説明してくれた
「君と君、リヴちゃんとフェルちゃんだったね?は向こうのパーティーのを運転したほうがいいね。こっちはハイレン君とエイン君に頼むよ」
「わかりました」
リヴとフェルは頷いてからもう一つのバイクのほうにむかっていった
「気をつけてな」
「ハイレンもね」
「それじゃあ二人ともお願いするよ」
「エイン、どっちから乗る?」
「俺からでいいか?こうゆうの、なんか楽しそうだよな」
「試作機じゃなければ楽しそうなんだけどな…」
「それは否定しないけどな。とりあえず乗ってみるか」
そういってエインは楽しそうにバイクに乗る。
しばらくすると
「どわああああ!?」
おもいっきり転倒していた。けっこうのスピードをだしてカーブに入った瞬間にだ
「エイン!!??大丈夫か?」
みんなエインのところに駆け寄っていく
「…おう。割と大丈夫だ」
そんなこといいながら、頭から血が流れている。腕などもところどころ切れている
「いや、大丈夫そうには見えないって」
「エイン君。大丈夫かい?」
「ちょっと医療室に行ってきます。…ハイレン、安定性が低いから気をつけろよ」
最後のほうはハイレンにだけ聞こえるような小声だ。先輩たちに気をつかってのことだろうけど、試作機なんだから言ってもいいんじゃないかな
それで校舎に向かっていってしまった。
治癒魔法もあるが、都には治癒魔法を使えるヒーラーはいるが、学園にはいない
「次は俺の番ですね」
倒れているバイクを起こす。エインが転倒したところを見たばっかだから気が引けるけど仕方ないしな
「頼むよ。ただ、怪我はしないでくれよ」
「わかってますよ。じゃあちょっと離れててください」
転倒しないとも限らないからさっきより遠めに離れてもらうことにした
バイクに乗ってみる。クレイン先輩に部品や運転のしかたを説明されたとおりにバイクを操縦する。
(なんて重さだ、操縦しにくい。それに衝撃が直に伝わってくる)
エインの言っていたとおりなかなか操縦しにくい。だからますは、ゆっくりスピードを上げていく。曲がるときはスピードを落とすようにしないとすごいことになりそうだ
だいぶ慣れてきて、スピードもだいぶだせるようになってきたかな。エインがだしたスピードよりは遅いけど、これ以上スピードをだすとエインみたいに吹っ飛んでしまいそうだ
「すごいよ!!ハイレン君。しっかり運転できてるじゃないか」
クレインたちのところに戻るとすぐ、クレインが話しかけてきた
「けど、これ以上は怖くて出せないですよ。カーブじゃなくても転倒しそうです。衝撃を吸収するものがなにかほしいところです」
「そうみたいだね。改良の必要がありそうだ」
その場で相談をはじめてしまった。専門的な言葉ばっかりでてきてよくわからない。
クレイン先輩たちが話している間にリヴたちのほうをみる。向こうはサイズが小さいからかな、転倒してはいないようだ。特に問題もない感じだ
「向こうのは移動用だからね。僕たちのは戦闘に使用されてもいいようにしてあるんだ。だからどうしても大きくなっちゃうんだよね」
いつのまにかクライン先輩が隣にきていた。頭をかき、苦笑しながら説明してくれる。なるほど、どうりで装甲みたいなものもついているわけだ
「もういいんですか?」
「うん。改良するところは時間がかかりそうだから、午後からファクトリーでの改良にかかるよ。実際に走らせるといろいろ問題点はでてくるもんだね」
「そうですね。ところで旧文明にはバイクじゃなくても自動車とか呼ばれるものがあったと思ったんですけど、それじゃ駄目なんですか?騎士団とかで使われてるトラックみたいな」
「よく知ってるね。確かにトラックは実用されてるし、大きさは全然ちがうけど、車も似たような感じなんだ。でも車じゃ魔物とかに襲われた時、あの機動性の低さは問題になっちゃうからね。それでバイクになったわけだよ」
確かにトラックとかは魔物から守ってくれる人も一緒にいるからそこは平気なのだろう
「そうゆう理由があったんですね。確かにそれなら納得です」
「話を戻すけど、ファクトリーにいれるまでには時間も余ってるし、バイクに乗ってるかい?」
「いいんですか?じゃあちょっと乗らしてもらいます」
スピードをだしすぎなければ大丈夫だし、エインの言ったとおり楽しいからな。時間があるなら乗ろう
適当な時間乗ってまた戻ってくるとエインが医療室から戻ってきていた
「しっかり乗れてるじゃないか」
「まあエインみたいにあんなスピードをださなければ大丈夫だよ」
バイクから降りながら答える
「お疲れ様、ハイレン君。今日はありがとう」
「いえ、俺も楽しかったですよ」
また何かあったらよろしくと言って、クレイン先輩はバイクを転がして行ってしまった。きっとファクトリーにいくのだろう
「さて、もう昼だ。食堂にいこうぜ」
途中でリヴたちと合流して食堂にむかった