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第13話

転校してきてからはじめての休日

この一週間が意外と忙しかったから、遅くまで寝ていてしまった。ちょうど起きたところで部屋をノックする音が聞こえた

「起きてる?」

声から察するにリヴにようだ。朝早くというほどでもないが、遅いほどでもない。とりあえずドアを開ける

「やほー。ってもしかしてほんとに寝てたの?」

リヴが呆れたような声をだす。さっき起きたばかりだから、寝癖がついてるせいだ

「別にいいだろ。ところで何の用?そんなこと言いに来たわけじゃないでしょ?」

「うん。この間は時間がなかったから、あんまり市の案内ができなかったから。今日はその続きをしようと思って」

「………」

寝癖のついた頭を掻きながら考える。というか寝起きでうまく頭がはたらかない感じだ

「わかった。準備するから少し待っててくれ」

「わかったよ」

リヴを部屋の外で待たせている間に準備をする。適当に顔を洗い、適当に寝癖を直し、服を着替える。

「おまたせ」

「じゃあいこっか」

待っていたリヴと一緒に市に向かう


「この間は学校の近くの必要そうなところだけだったけど、今日はいろいろなところを回れるね」

レゼン市はけっこう広い。丸一日かけて、半分が回れるくらいだ。もっとも工業区や研究区などに分かれているから、普通に暮らすところだけを回るなら一日で回りきれる。

で、今歩いているところは見たところ住宅区のようだ。休日だからか人通りは多く子供たちは遊んでいる

「ここら辺は別に必要なくないか?」

暮らしている間に関わってくる場所かもしれないけど、別に案内をされる必要はないと思うのだが

「エインの家がここら辺にあるの。ちなみに東区ね。知っておいたほうがいいでしょ?」

「ああ、確かに」

この間エインに暇な時家に来いと誘われていたのだ。リヴはそれをしっていたのだろう。確かに道場を開いているんだから住宅区にあっても変じゃない。いやむしろ普通だろう

「着いたよ。ここがエインの家」

目の前に見えた家は普通の家よりも一回りも二回り大きい。道場の分があるから当然だ。エインの家からかけ声や、打ち合いの音が聞こえてくる。どうやらけっこう門下生が多いようだ

リヴはほんのちょっと遠慮気味だけど入っていった。母屋でなく道場のほうだ。

「お久しぶりです」

門下生が打ち合いをしているのを見てる壮年の人に話しかけた。どことなくエインに似ているのを見ると、きっと父親で師範だろう

「おお、リヴ君か!しばらくぶりだな。…ところで、そっちの少年は?」

壮年の人がハイレンを見ながら、聞いてくる

「今度転校してきたハイレン・ハートネットです。ハイレン、この人はエインの父親でアクレイ・ヴォルフィード。ここの道場の師範」

思ったとおりエインの父親だったようだ。しかし、雰囲気など明らかに格が違う。少し懐かしい感じがする

「君がエインが言っていたハイレン君か。暴走した木獣君を倒したそうじゃないか」

「あれは俺の力だけじゃないですよ。補助魔法の効果がなかったら勝てなかったと思います」

「しかし、気功術が使えるのはたいしたものじゃないか。誰に教えてもらったんだい?」

「子どものころに母親に習いました」

「そうか。母上の名前は「お!?きてたのか!」…」

アクレイさんが話している最中にエインが割り込んできた。そんなエインにアクレイさんは呆れた顔でため息をついただけだった。よくあることなのかな

「せっかく来たんだ。一試合やってこうぜ」

「いや、今は遠慮しておくよ。リヴに街を案内してもらっている最中だから」

「別に少しくらいなブッ!!」

エインがハイレンを練習に誘おうと話していると後ろから頭を叩かれた。竹刀だったとはいえ、少し痛そうだ。

「何すんだよ!?」

頭を抑えながら文句を言う。

「まったく、迷惑かけるんじゃないの!」

後ろから竹刀で叩いた人は呆れたような顔をしていた。けっこう背の高い女の人で、ハイレンと同じくらい。可愛いという外見ではなく、きれいというよりもかっこいいといったほうが似合いそうだ

「リンナ・リッジさん。エインと幼馴染みたいで、昔からよくここに来てたみたい。だから剣の腕もすごいよ」

リヴが小声で説明をしてくれる。どうやらこの間来た時に会っているようだ

「ちなみに、レゼン学園の戦闘科でひとつ上の学年だよ」

リンナさんの後ろで子供たちが興味深くこちらを見てきている。はじめてきたハイレンに興味を持ったようだ。すぐに駆け寄ってこないのは、怖いところもあるからかな。どうも子供たちが集まっているのを見ると、孤児園を思い出す。

「ごめんね、エインが迷惑をかけたみたいで」

リンナさんが少し苦笑しながら話しかけてきた

「いえ、気にしてないですよ」

「君がハイレン君だね?エインから話は聞いたよ」

アクレイさんとほとんど同じことを話し始めた。そこに、アクレイさんもはいってきた。どうもエインはアクレイさんにもリンナさんにも誇張して話している気がする。リヴはそれをみて少し笑った後、話しかけてきた

「そろそろ行こうか?」

「ん、わかった。それじゃアクレイさん、リンナさん、失礼します」

「うむ、いつでも来てくれ」

「エインをよろしくね」

二人とも微笑みながら言う

「ハイレン、リヴ、また明日な」

ハイレンは軽く手を振り、リヴは大きく手を振ってエインの家をあとにした


エインの家をあとにした二人は今度は西区に向かって歩いていた。歩いてわかったが、レゼンの北には少し豪華な家が建っている。リヴに聞いたところ、ここの領主や貴族たちの家が集まっているようだ。これから行く西区は武具屋や防具屋など、一般の人は用がない店が集まっているらしい。この間案内してもらったのは南区に当たる。学園は南区から一回外にでて、少ししたところに位置している

「もうエインの父親と会ってたんだ?」

「エインと同じパーティーになった日に案内されてね。気がむいたら来いって言われていたんだけど…結局いかなかったの」

ちょっと苦笑している

「なるほどね。俺も気が向いたら行こうかな」

「そうしなよ。エインも喜ぶんじゃないかな?」

そうこう話していると目的地についたようだ

「ここら辺は主に戦闘を生業としている人たちが利用する店が集まってるかな。今はまだそんなに頻繁に訪ねないかもしれないけど、道具屋はよく利用するかもしれないしね」

確かに、治療薬とかは道具屋で売っているから、学生時代はよく来ることになるだろう。ただ

「道具屋っていっても一つじゃないからね、あたしもどの店がいいのかはわからないんだ」

けっこう重要なことがわからない。店によってはよくないことを行っている場合があるようだが、リヴもそこらへんには詳しくないようだ

「リヴさんにハイレンさん。どうしたんですか?」

微妙に立ち尽くしている二人に後ろから丁寧な声がかかった。後ろを振り返るとフェルがいた

「ハイレンにレゼンを案内している最中だよ。ただここら辺、詳しくなくてちょっと困ってて」

「私が普段行っている店でよかったら案内できますけど…」

「ほんとに?!じゃあお願いしょうかな」

ということで二人はフェルに案内してもらうことになった


「ここがよく来る、道具屋のフェアリーリッツです。店主さんがいい人なんです」

そういいながら店に入っていくフェルであり、それについていく二人である。路地に面しているわけでなく、建物もできてから大分たっているのか、ところどころがたがきている

「こんにちは」

「いらっしゃい。…おや、フェルちゃんじゃないか」

店の奥から感じのいい笑顔をした人がでてきた

「いつもお世話になっています」

フェルが品物の名前をいくつか挙げていく。それに対して店主さんが

「あいよ。ちょっとまってな」

朗らかに笑って品物を用意してくる

「確かにいい人っぽいね」

「うん。ここはいい店だな」

用意している間に第一印象を述べている二人

「おまたせ、これで全部かい?」

店主がフェルが言っていた品物を持ってきていた

「はい、ありがとうございます」

「毎度どうも。…ところで、そこの二人は?」

少し怪訝そうにハイレンとリヴをみる店主

「友達のリヴさんとハイレンさんです。学園でクラスメイトなんです。ハイレンさんが転校してきたのでリヴさんがレゼンを案内していたところで一緒になったんです」

「リヴテランス・ウォーカーです。よろしくお願いします」

「ハイレン・ハートネットです」

「これからよろしく頼むよ。ということで、これはお土産だ」

店主さんが二人に治療薬をくれる

「いいんですか?ありがとうございます」

二人とも素直に受け取る。最初は贔屓にしてもらうためにかと思ったが、店主からはそんな雰囲気が感じられなかった。ちょうど治療薬が切れていたので助かった

「では、失礼しますね」

「あいよ、良かったらまた来てくれよ」

なんか商売には向かないこと台詞を言っているけど大丈夫なのだろうか。感じのいい店であるみたいだし、品揃えもよかった。用があるときは利用するようにしよう


「では私はここで失礼しますね。家の用事があるので」

フェアリーリッツからでてきてフェルが二人と別れる

「うん、助かったよ。ありがとう」

「それではまた学校で」

「ああ、ありがとうな」

フェルは少しだけ嬉しそうな笑みを浮かべて去っていった

「さてと、じゃあいこっか」

「そうだな」

残された二人はまたレゼンを回っていく


リヴと一日レゼンを回って自分の部屋に戻ってくるとシルフィが先に部屋にいた

「リヴと一緒に街を回ってきたんでしょ?なんで私も誘ってくれなかったのよ?ハイレンが呼べばすぐにいけるのに」

どうやら一日ほったらかしにしたことを拗ねているようだ。確かに普段は学院があるので構ってやることもできないから少し悪いことをしたかもしれない

「…ま、反省したみたいだしいいけど。そうそう、シランから手紙が届いているわよ。こっちに来てから手紙送ってないでしょ?あの子のことだから怒ってると思うわよ」

シルフィから手紙を受け取るとさっそく読んでみる。シルフィもハイレンの肩の上にのって覗き込んでくる

『着いたなら手紙くらい送りなさいよ!!!この手紙を読んだらすぐに返しなさいよ。そっちの生活はちゃんとできてる?食事はちゃんとできてる?学園生活は順調?こっちは元気だけど、ハイレンがいなくなって元気がない子どもたちが少しいるのよ。こっちに帰ってくる暇ができたら帰ってきてくれると、子どもたちが喜んでくれると思うからできれば帰ってきてね。今回はとくに報告することもないからこれくらいでね』

「あちゃ〜かなり怒らせちゃったみたいね。ちゃんと返さないと余計に怒っちゃうよ」

「まいったな。今度手紙を返さないと」

困ったようなかんじだけど、どことなく嬉しそうなハイレンだった


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