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第11話

「ハァッ!!」

暴走している木獣君にエインが走ったままの勢いで剣を振り下ろす。すぐに跳び下がるようにする。木獣君は倒れることなく、すぐに立ち上がってくる

「下がってろ!!邪魔だ!」

さっきまで、攻撃されてた奴にエインが声をかける

「エイン!!他にも暴走しているのがいる!!俺はそっちに行く!」

エインが吹っ飛ばした木獣君に追撃をかけながら言う。返事を待たずに駆け出した

「お前も気をつけろよ!!!」

エインの声を背に受けて木獣君が暴走している場所に急ぐ。そこにはリヴとフェルがいた。二人で戦っているが、それでも押され気味だ

「さっさとけりをつけてやる」

さっき吹っ飛ばした木獣君を倒すために動く。他の生徒ではまだ勝てないが、エインにとっては別だ。時間をかければ、刃のない剣でも木獣君を壊すことできると思っている。それだけ、剣術に時間を割いているからだ。それに壊せなくても、先生がくるだろう。だが、時間をかけていたら誰かが大怪我をしてしまうかもしれない。できるだけ早く倒さないと

木獣君を一番ふっ飛ばしやすい横薙ぎを食らわせ隙をつくる。集中して氣の力を少し解放する

力が剣に集まりはじめる。剣を振りかぶり、一気に振り下ろす。飛び出した力が木獣君を襲い粉々にする

放氣。ヴォルフィード流剣術、硬破刃

「さて、次は…」

みんなを校舎内に避難させるために、走り出した


全ての人間には氣が流れている。その氣を戦闘に使うことを、気功術という。氣の使い道は、身体能力の増強、放出しての攻撃である。習得は難しいが効果は高い

この効果は魔法を使えない者たちが魔物と単独で戦闘を行うには必須になってくる。だから魔力を持たない者はほとんどが習得している。ただ後者ができるものは習得者の半分以下になる

さらに熟練者でないと体に負担がかかり、筋肉痛や関節を軽くいためやすい



「まずいですよ、リヴさん」

珍しくあせった感じのフェルの声が聞こえてくる。確かにかなりまずい状況なんだよね。木獣君は攻撃をくらっても怪我しないような構造で作られていてよかった。あたしもフェルも何回かくらってるから。二人じゃなかったら、明らかに怪我してたはすだ。でも怪我しないっていっても体のそこらへんが痛い

「リヴさん、危ない!!」

少しぼうっとしている間に目の前に木獣君がいた

「きゃあぁ!」

とっさに双剣で防いだが、直撃を食らってしまい、吹っ飛ばされた。目の端にハイレンが走ってくるのが見えたけど、着くのはもう少しかかりそうだ。木獣君はすぐに追撃をかけようとしているが、フェルも間に合いそうにない

(まずいかも……)



全速力で走っているが間に合いそうにない。リヴは少しぼうっとしているし、フェルは杖でなんとか防いでいる。いきなり木獣君が方向を変え、リヴに跳びかかった

(くそっ!!)

リヴが吹っ飛ばされるのをみて、剣を木獣君に投げつける。くるくる回り追撃をしようとしていたところにあたり、剣はあさっての方向にとんでいき、木獣君は怯む。その隙に追いつき回し蹴りを食らわせて吹っ飛ばす

「リヴ、大丈夫か?!」

「え、うん。大丈夫…」

少し呆けた声が聞こえてきたがちゃんと返事をしてきた。木獣君を警戒しながらリヴを見る

確かに大きな怪我はないようだ。ふぅっとため息をつく

「こいつらに魔法は効かないのか?」

「さっき試したけど、強力な魔法障壁がはってあるみたいなの。たぶん不正させないためだと思うけど…」

「余計なところに力入れやがって!!…リヴとフェルは下がっててくれ」

「でも、ハイレン一人じゃきついよ!!」

リヴはハイレンが強いことはさっきみて知っている。それでも、今の木獣君に勝てそうではない

「…………古より人をしばるは物の理、そに抗おうとせんとする力を今ここに」

ハイレンとリヴが同時にフェルを見る。話に参加してこないと思ったら詠唱をしていたようだ

「アービング」

フェルの魔法を詠唱する声が聞こえてきたと思ったら、ハイレンの体が瞬間的に光った

「フェル?」

「今の私にできる補助魔法はこれくらいです。脚力を強化しました」

「充分だよ。助かる」

フェルの魔法のおかげで速く動けるようになり、木獣君に突っ込む。剣がないのは少しきついが、仕方ない。母親にしごかれたことを反芻しながら戦うことになりそうだ

「ちょっと、ハイレン!!」

リヴの声が聞こえたけど、それは無視だ

「下がってましょう、リヴさん」

「でも!?」

「私たちがいても足手まといになりますよ」

「うっ。そうだけど……」

それでもなにかできることがないか考える。そういえばハイレンは剣をもたないでいってしまった。子どものころからヴェレッツァさんにいろいろしごかれてたみたいだけど、剣があったほうがいいはずだ、とりにいかないと

「リヴさん、どこにいくんですか?!」

突然走り出したリヴにフェルが驚いた

「フェルはさきに戻ってて!」


木獣君の攻撃をぎりぎりで避け、そこに蹴りをくらわし、踵落としを決める。そして、すぐに距離を離す。体が軽く感じる。木獣君の動きはだいぶ速くなったが、ついていくことができる。さらにフェルのおかげでかなりの威力になっているはずだが、まだ倒れそうにない

周りを確認している暇はないが、暴走しているのがこいつだけとは限らない。一気に倒す必要がありそうだ。そのためには母親に習った技しかない。けど剣をもっていない状態でやってみたことはないからぶっつけ本番だ

「ハイレン!!」

リヴが離れたところから剣を投げてくれる。木獣君をうまく吹っ飛ばし、剣をとる

氣を体中に、主に足に集中させる。同時に起き上がった木獣君がまた突っ込んできた。腰を落とし、回し蹴りで思いっきり空中に蹴り上げる。蹴り終わった体勢の後、すぐにハイレンもジャンプし今度は後ろ回し蹴りをかます。

最後に回転した勢いを利用して地面に叩きつけるように剣で落とす。ゴォン、という大きな音を立てて地面に落ちる

内氣。飛連

フェルの魔法のおかげでいつも以上の強さと高さになっている。今度は木獣君は立ち上がってこなかった。さすがにこれで立ち上がられたら、打つ手がなくなっていたから助かった

「他は……」

周りを確認すると、エインがこちらに歩いてきた

「何人かと協力してみんなを校舎内に避難させた。ひとまずは安心だ」

「わかった。俺らも校舎にはいるか?」

ため息をつきながら答える。確かにまわりには木獣君しかいない。これなら安心だ

「ああ。先生がくればなんとかなるだろう」

二人一緒に校舎にむかっていく。近くに暴走している木獣君がいないから普通に歩いていく

「ところでハイレン、お前も氣をつかえたのか?」

「お前もってことは、エインもやっぱり使えるのか?」

「まあ、少しだけな。俺は魔力がないから習得しているが、ハイレンもか?」

「いや、俺は魔法が使える。身体強化の中でも簡単な気功術だけだけどね」

話し合っていると校舎にたどり着いた

「ハイレン!?大丈夫だった?!」

すぐにリヴが駆け寄ってきた。後ろにはフェルもいる。どうやら剣を投げたあと、すぐに校舎内にはいったらしい

「ああ、フェルに補助魔法かけてもらったしな。なんとかなった」

安心したようなため息をはいてから

「心配かけさせないでよ!」

言ってそっぽを向いてしまった

ハイレンは嬉しいような困ったような笑顔をする。エインは困ったような感じの笑顔を、フェルは嬉しそうに微笑んでいる



「今年の一年はどうですか?学園長」

学園長室には窓から外を見ている学園長と入り口付近にいる、学園長より少し歳をとった男の人がいる。窓からは校庭が見えて、ちょうどハイレンたちが校舎内にはいったところだ

「例年以上に優秀な人が多いですね。今年は楽しみですよ」

「しかし、学園長も人が悪い。わざわざこんな手の込んだ方法で一年を試さなくても」

木獣君は暴走したわけではない。学園長が一年の実力みるために、木獣君の能力を上げたのだ

「この方法が一番、実力を判断できますから」

判断したいのは剣の腕などの実力だけじゃない。突然の出来事に対してどう対応できるかをみたいのだ

「それでは事態の収拾にはいります」

歳老いた男性は言って学園長室からでていった





しばらくもしないうちに先生が駆けつけてきて、事態を収拾させてくれた。本来ならもっと早く駆けつけることができたはずなのに、どこかで見ていたようなタイミングにちょっと疑問を抱いたが、そのことに関しては先生たちから説明があった。怒ったやつもいたけど、軽い怪我をした人は何人かいたが、大怪我をした人はいなかったし、どうやらそうゆう風に調節されているらしかった。リヴとフェルも軽い打ち身ですんだみたいでよかった

今は夕飯を取り終わり寮の自分の部屋である

「ハイレン、今日は新しい学校どうだった?」

「ん?ああ、シルフィか。うん、楽しかったよ。いい奴らにも会えたし」

シルフィ――本名はシルフィラス――は子供のころハイレンと盟約をした風の精霊だ。

精霊は普段は精霊界にいる。長時間人間界にいると、精霊に負担が掛かってしまうが、ハイレンと盟約を交わしているシルフィには負担は掛からない。それでもたいていは精霊界にいることが多い

しばらく学園のことをシルフィに話した。


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