一分進んだ時計
非恋です。でも何かを見つけてください。
自分にとっての宝物を。
_____ある日、ふと時計を見た。 その時間は・・・_____
「 1 分 進 ん だ 時 計 」
今日は11月21日。
中間試験の真っ最中。
少し早めに終わった。
時間は10:40。
だから、校庭を見下ろしていた。
すると・・・
―あれ??―
そこには奈良先輩が居た。
―何で奈良先輩がいるんだろ?今は試験中の筈なんだけど・・・―
奈良先輩は猫を頭に乗せて微笑んでいた。
―何で猫?でも、楽しそうだな。―
奈良先輩は高2。
私は中1。
同じ部活に入らなかったら、同じ学校に入らなかったら、きっと出会えなかった。
私は奈良先輩のあの笑顔が大好きだ。
奈良先輩は私が部活入りたての頃もあの笑顔で笑ってくれた。
でも、もう引退かもしれない。
それは、絶対に嫌だ。
―ハッ・・・―
ふと涙が零れ落ちそうになる。
―あれ?試験は?―
もう結構時間が経った気がした。
―・・・ん?!―
時間は経っていたけど皆止まっている。
これは何なのだろうか。
・・・私に時間をくれたのかもしれない。
もしかしたら始めから時間が止まっていたのかもしれない。
私はどうしたらいいのだろう・・・・・
とりあえず何処かへ。
そして、やっぱり私の足は校庭へ。
勿論、奈良先輩に会いたかったのだろう。
―ふぅ・・・―
「奈良先輩!!」
「・・・っ!?」
奈良先輩の時間は止まってなかった。
「なっ!大村?!」
「な、何をしているんですか?」
「え?あ、あぁ。木に猫がいたから助けてた。」
「そうなんですか。」
「お前は何してるの?中等部は試験中だろ?」
「え?あっ・・・窓から先輩が見えたもので・・」
「へぇ。俺追ってきたんだ。」
「///そう・・かもしれませんね。」
「良い後輩持ったなー俺。」
「・・え?」
「俺さ今凄い泣きたい気分でさ、誰かに泣きつきたかった。そしたら大村が来た。」
―何で泣きそうなんだろう?―
彩乃にはこの答えはまだ分からない。
「な、何で泣きたかったんですか?」
「俺、もうそろそろ引退だけど誰か悲しんでくれるかなぁって思ったら。」
実際は違う。
「そ、そりゃぁ悲しみますよ!」
「だって皆俺の事怖がってるし?」
「少なくとも私は、悲しみます。さっきも・・・///」
「さっきも?」
「考えてたら泣きそうになりました。」
「・・・っ!」
「私は奈良先輩が大好きです。」
奈良先輩は泣いていた。
「なっ奈良先輩?!」
「いや、そこまで想ってくれてたんだって思ってさ。」
「///」
「俺も好きだよ。」
私も泣いてしまった。凄い幸せだった。
で も 、
そ の 幸 せ は
何 処 か へ 行 っ て し ま っ た 。
――――もうお別れだ。――――
奈良 先 輩 は 何 処 へ 行 く の で す か ?
私 を 置 い て い か な い で 。
――――ごめん。俺もずっと一緒にいたかった。――――
瞬きをしたら、そこは机の上。
不意に時計を見た、そしたら・・・10:41
私が校庭を見てから1分しか経っていない。
次の日、奈良先輩は死んだという連絡があった。
木に登って降りれなくなった猫を助けて、トラックがその木にぶつかって・・・
あれは奈良先輩が見せてくれた夢だったのかもしれない。
私の時計は普通の時間よりも1分進んでいた。
ずっと見ていてください。
私は絶対に忘れません。
この1分進んだ時計は・・・
この1分は奈良先輩がくれたものだから。
大好きだから、悲しい。
大好きだから離れたくない。
どうでも良い人なら、泣いたりはしない。
奈良先輩、貴方だから泣いてしまった。
だから、奈良先輩も私のことを覚えていてください。
非恋ですいません。でもコレを読んで貴方の何かが変われば・・・。
たった1分の時間でも大切にしてもらいたい。そう思います。