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『どの口が言うマン』の大ブーメラン 〜人の振り見て我が振り直さず〜蓬莱帝国の迷物議員~  作者: 如月妙美


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第三章:ブーメラン直撃!墓穴を掘る男

 選挙戦も終盤に差し掛かった木曜日の朝、棚上議員は事務所で新聞をチェックしていた。

「今日も他の候補者のスキャンダルはないか...」

 毎朝のルーティンである。しかし、その時秘書の佐藤が青い顔で駆け込んできた。

「先生!大変です!」

「どうした?田中候補に何か新しい問題でも?」

「違います!先生の記事です!」

 佐藤は週刊誌『週刊真実』を差し出した。表紙には大きく「批判だけの政治家・棚上太郎の正体」と書かれている。

「なんだこれは...」

 棚上議員は愕然とした。

 記事を読み進めると、そこには彼のあらゆる矛盾と問題行動が詳細に書かれていた。

『政治資金私的流用の実態』

 •年間500万円をクラブ等で私的使用

 •家族旅行を「政治視察」として計上

 •高級車購入を「政治活動費」で処理

『学歴詐称疑惑』

 •蓬莱大学法学部は中退なのに卒業と公表

 •中退理由は単位不足による留年

『女性関係の問題』

 •愛人との交際費も政治資金から支出

 •ホテル代を「会議室使用料」として計上

『交通違反の常習』

 •スピード違反8回、駐車違反12回

 •酒気帯び運転で摘発歴あり

 すべて事実だった。記者が1年間かけて調査した結果である。

「これは...どこから情報が漏れたんだ?」

「わかりません。でもすべて事実ですので...」

 佐藤秘書も困り果てていた。

 その時、事務所の電話が鳴り始めた。

「先生、マスコミからの取材申し込みです」

「無視しろ!」

 しかし、電話は鳴り止まなかった。

 午後、棚上議員は記者会見を開かざるを得なくなった。

「週刊誌の報道についてお答えします」

 記者たちが詰めかけた会見場で、棚上議員は苦しい弁明を始めた。

「まず政治資金の件ですが、これはすべて適切な政治活動です」

「クラブでの遊興が政治活動ですか?」

 記者が厳しく追及した。

「情報収集のためです。政治家は様々な場所で情報を得る必要があります」

「では、なぜ他の議員の同様な支出を批判されたのですか?」

 核心を突く質問だった。

「それは...彼らの場合は明らかに私的流用でした」

「棚上議員の場合は私的流用ではないと?」

「そうです。目的が違います」

 苦しい弁明だった。

「学歴詐称についてはいかがですか?」

「詐称ではありません。中退も立派な学歴です」

「しかし卒業と公表されていましたが?」

「それは...誤解を招く表現だったかもしれません」

「他の議員の学歴詐称は厳しく批判されていましたが?」

 またしてもブーメランだった。

 記者会見は1時間に及んだが、棚上議員の言い訳は見苦しいものばかりだった。

「私の場合は事情が違う」 「他の議員とは動機が異なる」 「政治家としての責任感からの行動」

 すべて自分に甘い理屈だった。

 記者会見後、棚上議員の支持率は急落した。

「先生、最新の世論調査です」

 佐藤秘書が恐る恐る報告した。

「支持率は12%です...」

「12%?先週は28%だったじゃないか!」

「週刊誌の報道の影響です」

 絶望的な数字だった。

 しかし、棚上議員は諦めなかった。

「反撃だ!他の候補者もっと攻撃しろ!」

「先生、今はご自身の問題を説明する時期では?」

「攻撃は最大の防御だ!」

 棚上議員は最後まで他人批判で乗り切ろうとした。

 翌日の街頭演説でも、他候補への攻撃を続けた。

「田中候補の政治資金問題は深刻です!」

 しかし、聴衆の反応は冷たかった。

「棚上さんこそどうなんですか?」

「自分のことを説明してください!」

 厳しいヤジが飛んだ。

「私の問題は週刊誌の捏造です!田中候補の問題とは性質が違います!」

 また自分だけは例外の理屈だった。

「どの口が言ってるんですか!」

 ついに聴衆から決定的な言葉が飛んだ。

「どの口って...私は正当な批判をしているんです!」

「自分のことは棚に上げて!」

「棚に上げてなんかいません!」

 しかし、聴衆は納得しなかった。

 選挙結果は惨敗だった。4期目の夢は潰れた。

 開票会場で、棚上議員は呆然としていた。

「なぜこんなことに...」

「先生、有権者は正直さを求めていたんです」

 佐藤秘書がつぶやいた。

「正直?俺は正直に他の候補者を批判していたじゃないか」

 最後まで自分の矛盾に気づかない男だった。

 敗戦の夜、棚上議員は一人で酒を飲みながら考えた。

「俺は何が悪かったんだ?」

 しかし、答えは出なかった。人の批判ばかりで、自分を客観視することを学んでこなかったからだ。

 翌朝、新聞には「批判議員、有権者の審判下る」という見出しが踊った。

 棚上議員の政治生命は終わった。しかし、彼が最後まで理解できなかったのは、「どの口が言うのか」という有権者の素朴な疑問だった。


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