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『どの口が言うマン』の大ブーメラン 〜人の振り見て我が振り直さず〜蓬莱帝国の迷物議員~  作者: 如月妙美


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第二章:揚げ足取り選手権開幕

 選挙が近づいてきた。棚上議員にとって4期目への挑戦である。しかし、支持率は伸び悩んでいた。

「先生、このままでは厳しい選挙になりそうです」

 秘書の佐藤が心配そうに報告した。

「なぜだ?俺は毎日政治活動に励んでいるじゃないか」

 棚上議員は高級クラブでの「情報収集」を政治活動だと思っている。

「有権者の皆さんは、もう少し建設的な政策を求めているようです」

「建設的な政策?」

 棚上議員は困惑した。これまで他人の批判ばかりで、自分の政策など考えたことがない。

「それより、相手候補の粗探しをしろ。批判材料はないのか?」

「粗探しですか...」

「そうだ。俺の得意分野で勝負する」

 棚上議員の選挙戦略は、最初から他人の批判一本槍だった。

 選挙戦が始まると、棚上議員は連日のように他候補への攻撃を繰り広げた。

「新人の田中候補は政治経験が不足しています!」

 街頭演説で声を張り上げた。

「わずか市議会議員を2期やっただけで、国政が務まるのでしょうか?」

 聴衆の中から声が上がった。

「でも棚上先生も最初は新人だったでしょう?」

「それとこれとは話が違います!私は最初から優秀でした!」

 無茶苦茶な理屈だった。

 別の演説会では、もう一人の対立候補を攻撃した。

「山田候補は学歴詐称疑惑があります!」

「高校中退なのに大学卒業と履歴書に書いている!」

 確かに山田候補には学歴詐称疑惑があった。しかし、棚上議員にも似たような問題があった。

 彼は「蓬莱大学法学部卒業」と公表しているが、実際は中退である。しかも、中退の理由は単位不足だった。

「学歴を偽る政治家など信用できません!」

 自分のことは完全に忘れていた。

 テレビの討論番組でも、棚上議員の攻撃は続いた。

「司会者、田中候補の政治資金について質問があります」

 手を上げて発言した。

「田中候補は政治資金で高級レストランでの食事をされていますが、これは適切でしょうか?」

「それは政治活動としての会食で...」

 田中候補が説明しようとしたが、棚上議員は畳みかけた。

「1回5万円の食事が政治活動?国民の皆さんはもっと質素な食事をしています!」

「棚上さんこそ、毎晩のように高級クラブに...」

 田中候補が反撃しようとした。

「私のクラブ通いは情報収集です!田中候補の贅沢とは次元が違います!」

 またしても自分だけは例外扱いだった。

「山田候補にも質問があります」

 今度は山田候補に矛先を向けた。

「あなたは過去に交通違反を繰り返していますが、法を守れない人が政治家として適格でしょうか?」

「それは...」

「スピード違反3回、駐車違反5回!こんな人に法律を作る資格があるのでしょうか?」

 棚上議員は厳しく追及した。

 しかし、棚上議員の交通違反歴はもっとひどかった。スピード違反8回、駐車違反12回、さらには酒気帯び運転で摘発されたこともある。

「棚上さんの交通違反はどうなんですか?」

 山田候補が反撃した。

「私の違反は仕方のない事情があったんです!」

「どんな事情ですか?」

「政務で急いでいたんです!山田候補とは動機が違います!」

 どんな屁理屈でも自分を正当化する技術は天才的だった。

 討論が終わると、記者たちが棚上議員を囲んだ。

「棚上議員、他候補への批判が多いようですが、ご自身の政策は?」

「政策?他の候補者を批判することで、有権者に正しい判断材料を提供するのも政治家の仕事です」

「具体的な政策提案はないのでしょうか?」

「まず問題のある政治家を排除することが先決でしょう」

 結局、具体的な政策は何も語らなかった。

 その夜、棚上議員は支援者との会合で気勢を上げていた。

「今回の選挙は批判合戦で勝ちます!」

「でも先生、有権者は政策を求めているのでは?」

 支援者の一人が心配した。

「政策なんて後から考えればいい。まずは当選することが大事だ」

「しかし他の候補者から反撃されたら...」

「反撃?俺に隙はない。完璧な政治家だからな」

 棚上議員は自信満々だった。

 しかし、その「完璧」には大きな穴があった。そしてその穴が、まもなく大きな騒動を引き起こすことになる。

「佐藤、明日の週刊誌、買ってきたか?」

「はい、いつものように他の議員のスキャンダルをチェックします」

「よし、新しい批判材料を探せ」

 棚上議員は他人のスキャンダル探しに余念がない。しかし、彼は知らなかった。今度発売される週刊誌に、自分の特集記事が掲載されることを。

 タイトルは「批判議員の正体」。棚上議員の様々な矛盾と問題行動が詳細に報道される予定だった。

 まさに「どの口が言うのか」を問われる時が来ようとしていた。


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