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「神の手」を持つトリマーは、伝説の魔獣(もふもふ)と気ままな旅をする  作者: 藍城 優
第3章 店は持ちません、旅に出るんです

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45. そして海は青く、心は軽く




戦いが終わり、遺跡の機能が正常化すると、赤い警告灯は柔らかな青色の照明へと切り替わった。


『システム再起動完了。中枢ろ過機能、正常値へ復帰。これより、自動メンテナンスモードへ移行します』


機械音声が響く中、ヴォルグ大佐はピカピカになった自分の潜水艦の前で、深々と帽子を被り直した。


『……礼は言わんぞ、トリマー』


「へへっ、客から礼を言われるためにやってる仕事じゃないからな。人も神様も、スッキリした顔を見せてくれりゃそれでいいんだよ」


レンジは笑って肩をすくめた。

ヴォルグはその笑顔をじっと見つめた後、フンと鼻を鳴らした。


『……悔しいが、貴様の勝ちだ』


ヴォルグは視線を天井のドームへ向けた。


『私は怒りに溺れ、神獣を排除することこそが正義だと信じていた。だが、それは間違いだった。コスト、リスク、そして持続可能性……。どの観点から見ても、貴様の言う「管理ケア」して共存する道の方が、遥かに理に適っている』


ヴォルグは自嘲気味に笑った。


『感情を排し、論理で世界を管理する……それが機巧結社の理念だったはずだ。私はいつの間にか、最も非効率な「復讐」という感情論に支配されていたらしい。』


『……本部へ戻り、上層部に報告する。東方支部の件も含め、組織の方針そのものを見直す必要があるだろう』


「そいつはいい。あんたみたいな石頭が上にいれば、少しはまともな組織になるかもな」


『……石頭だと?貴様、言ってくれるな』


ヴォルグの口元に、微かに笑みが浮かんだ気がした。

彼は踵を返し、潜水艦へと乗り込む。


『次に会う時も、私が味方とは限らんぞ。もし貴様がその「神の手」で世界に害を成すと判断すれば、その時は容赦なく排除する』


「ああ。その時は頼むよ」


レンジは真面目な顔で頷いた。

自分の力が強大すぎることは自覚している。もし自分が道を踏み外した時、止めてくれる存在がいるのは悪くない。


『フン……。さらばだ』


ハッチが閉まり、銀色に輝く潜水艦は静かに浮上していった。

かつては破壊と殺戮を撒き散らしていた鉄の塊が、今は海を汚すことなく、綺麗に去っていく。


「(……変わったな、あの男)」


クオンがレンジの横で呟く。


「ああ。頑固な汚れほど、落ちた時の輝きはすげぇんだよ」


レンジは満足そうに頷いた。


          ◇


レンジたちが地上へ戻ろうとした時、遺跡の中央モニターに新たな文字が表示された。


管理者アドミニストレータ権限を確認。始祖プロジェニターより、次代の管理者へ向けたメッセージを再生します』


「お?なんだ?」


ノイズ混じりの音声が流れる。それは、どこか疲れたような、しかし知性を感じさせる男の声だった。


『――やぁ、これを聞いているということは、我々の文明はもう滅んでいるのかな?それとも何とか生き延びていて……君が我々の末裔だったりするのかな?あるいは、全く別の星から来た旅人か……』


「(……ッ!?)」


レンジとクオンが顔を見合わせる。

その口調は、あまりにも「人間臭い」ものだった。


『この「神獣システム」は、星を綺麗に保つための我々の最高傑作だ。だが、すまない。設計段階で一つだけミスがあった。彼らは優秀なフィルターだが……あまりにも高性能すぎて、「心」が生まれてしまったんだ』


声の主は、苦笑するように続けた。


『心は、計算できないエラーを生む。悲しみ、怒り、痛み……そういったノイズがフィルターを詰まらせる。我々はそれを「バグ」として処理しようとしたが……結局、彼らを愛してしまった研究員も多くてね』


『もし、君がこの施設を再稼働させたなら、頼みがある。彼らを「道具」としてではなく、「家族」として扱ってやってほしい。』


『定期的に洗い、撫でて、話しかけてやってくれ。そうすれば、彼らはきっと、君とこの星の最強の守護者になってくれるはずだ』


『……あとのことは頼んだよ。未来の管理者君』


プツン、と音声が途切れる。

短いメッセージだったが、そこには確かに、かつての創造主たちの「後悔」と「願い」が込められていた。


「(……フン。勝手な言い草だ)」


クオンが悪態をつくが、その尻尾は嬉しそうに揺れていた。


「(だが、まぁ……『家族として扱え』という部分だけは、評価してやろう)」


「ああ。昔の人も、結局は今の俺たちと同じことで悩んでたんだな」


レンジは勾玉を握りしめた。

この世界を作った凄い連中も、最後に行き着いたのは「愛を持って接する」という、トリマーとして当たり前の結論だったのだ。


          ◇


銀の箱舟シルバー・アークは、勾玉の力で泡に包まれ、ゆっくりと海面へと浮上した。


「ぷはーっ!やっぱり外の空気はうめぇな!」


窓を開けると、南国の太陽と潮風が吹き込んでくる。

空は突き抜けるように青く、海は穏やかに凪いでいた。


「みゅ~!」


レンジの肩の上で、新しい仲間の白いスライムが気持ちよさそうに伸びをした。

太陽の光を反射して、虹色の泡がきらめく。


「そういや、お前の名前まだ決めてなかったな」


「みゅ?」


「白くて、フワフワで、いい匂いがする………よし」


レンジはニカッと笑って指差した。


「今日からお前は『シャボン』だ!」


「みゅ!みゅー!(シャボン!)」


スライム――シャボンは気に入ったのか、レンジの頬にすりすりと身体を押し付けた。

すると、レンジの頬についていた煤汚れが一瞬で吸い取られ、肌がツルツルになる。


「おっ、すげぇ!洗顔も出来るのか?」


「(……また妙なペットが増えたな)」


クオンが呆れる横で、エメが「キュゥ!(ぼくの方がかわいいもん!)」と、レンジの髪の毛を整え始めた。


「ははっ、二人とも頼りにしてるぜ。さぁ、行くか!次はどんな『お客様』が待ってるか楽しみだな!」


レンジがアクセルを踏み込む。

銀の車体は海岸線を走り抜け、新たな大地へと向かっていく。

過労で死に、異世界へ放り込まれた元トリマー・天野蓮司。


彼の周りには、伝説の神獣、災害級の黒猫、甘えん坊のカーバンクル、そして掃除好きのスライム。


波乱と揉め事に巻き込まれながらも、もふもふたちに救われ、救い返していく彼の旅は、まだまだ終わらない。

まずは、泥だらけになった車の洗車からだけどな!


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