表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「神の手」を持つトリマーは、伝説の魔獣(もふもふ)と気ままな旅をする  作者: 藍城 優
第3章 店は持ちません、旅に出るんです

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/20

16. 星空の晩餐と、新たな家族の寝床




「……よし、焼けたぞ」


ジュウウウゥッ……!

車内に、食欲をそそる脂とガーリックの香ばしい匂いが充満した。

『銀の箱舟』のキッチンで、レンジはフライパンから分厚いステーキ肉を皿に移した。

ベルグの市場で仕入れた、最高級の「バイソン肉」のステーキだ。


「ほら、約束の『いい肉』だ。焼き加減はレアにしておいたぞ」


レンジが皿をテーブルに置くと、待ち構えていた金色の狐が、満足げに尻尾を振った。


「(うむ。待っていたぞ。……して、『例のアレ』はあるのだろうな?)」


クオンが催促するように、空のグラスを爪でカチカチと鳴らす。


「はいはい、わかってるって」


レンジは呆れながら、棚から赤ワインのボトルを取り出した。


ルリデンを出て、このベルグの街に到着するまでの五日間。

その道中で、レンジは相棒の「ある意外な一面」を知ることになった。

この神獣様、見た目に似合わずとんでもない「酒好き」だったのだ。

移動中の夜、毎晩のように「旅の楽しみは酒だ」と言って晩酌を要求してくるのが、すっかり恒例となっていた。


「(うむ!これだこれ。ベルグのワインは質が良いと聞いていたからな)」


トクトク……とグラスに注がれる深紅の液体を見て、クオンが目を細める。


「ほどほどにしとけよ?酔っ払ってルナに絡むなよ」


「(失敬な。我は千樽飲んでも酔わぬわ。酒は味わうものだ)」


クオンは魔力でグラスを浮かせ、優雅に香りを楽しんでから一口飲んだ。


「(……んん。悪くない。重厚な渋みだ。バイソンの肉によく合う)」


レンジも自分の分のステーキを切り分け、口に運んだ。

柔らかい肉汁が口いっぱいに広がる。

野営地での食事だが、設備(魔導馬車)と食材が良いおかげで、王侯貴族のようなディナーだ。


          ◇


足元では、ルナとエメも食事を楽しんでいた。

ルナは「サーモンのクリーム煮」を夢中で食べている。

そして、新入りのエメの前には、色とりどりの果物が盛られていた。


「(宝石獣って何食うんだ?宝石か?)」


クオンがワイングラスを揺らしながら尋ねる。


「まさか。宝石なんて食べさせたら破産するよ」


レンジは苦笑いしながら、エメを指差した。

事前に『神の手』で解析したところ、カーバンクルの主食は「魔力を多く含んだ木の実」や「植物」だと判明していた。


「キュウ〜♪(おいしい!)」


エメは特に「星型リンゴ」が気に入ったようで、小さな手で器用に抱えてシャクシャクと齧っている。

その額のエメラルドが、幸せそうに柔らかく脈動していた。


「(ふん。安上がりな奴め)」


クオンは憎まれ口を叩きつつも、自分の皿にあった付け合わせの高級ブドウを、そっとエメの皿に転がしてやった。


「キュッ?(くれるの?)」


「(……我は肉があればいい。貴様にくれてやる)」


「キュウ!(ありがとう!)」


エメが嬉しそうにブドウを頬張るのを見て、レンジはニヤリと笑った。


「なんだかんだ優しいな、クオンは」


「(勘違いするな。我は偏食なだけだ)」


クオンはふいっと顔を背け、ワインを煽った。

素直じゃない相棒の横顔を見ながら、レンジはコーヒーを淹れることにした。

さっき手に入れた「浄化の魔石」で作った水だ。

コポコポ……と、いい香りが立ち上る。

一口飲むと、雑味が一切ない、透き通るような味わいだった。


「美味い……。水が変わるだけで、こんなに違うのか」


「(ほう。どれ、我にも寄越せ)」


クオンが空いたグラスを差し出す。

レンジはそこに冷たい水を注いであげた。


「(……なるほど。確かにこれは『聖水』だ。雑味がなく、酒のチェイサーにちょうどいい)」


夜は更けていく。

窓の外には満天の星空。

車内は暖かく、美味しい食事と、満ち足りた空気で満たされている。


「さて……寝る場所を決めないとな」


レンジはルナとエメを見た。

ルナはいつもレンジのベッドの足元か、クオンの腹の上で寝ている。


「エメはどこで寝る?専用のクッション作るか?」


レンジが尋ねると、エメは「キュウ?」と首を傾げ、トテトテと歩き出した。

そして、ソファでくつろいでいたクオンの、フサフサの尻尾の中に潜り込んだ。


「(……おい)」


「キュウ……(あったかい……)」


エメはクオンの黄金の毛皮に埋もれ、幸せそうに寝息を立て始めた。

最高級の毛皮(神獣)を布団代わりにするとは、大した度胸だ。


「(……おい、レンジ。退かせ)」


「いいじゃないか。懐かれてる証拠だろ」


「(……チッ。重くなったら焼き払うからな)」


クオンは文句を言いつつも、尻尾を少し丸めて、エメが落ちないように調整してやった。

その様子を見て、ルナも「ニャン!(ズルい!)」とクオンの背中に飛び乗った。


「(ええい、鬱陶しい!我はベッドではないぞ!)」


結局、クオンは二匹の寝床になって眠ることになったらしい。

レンジはその微笑ましい光景を見ながら、部屋の明かりを落とした。


「おやすみ、みんな」


静かな荒野の夜。

新しい家族が増えた『銀の箱舟』は、穏やかな寝息と共に朝を待つ。


明日からはベルグの街周辺を離れ、東の国境を目指して街道を進むことにした。

ここから国境までは、まだ数日の道のりがあるだろう。

レンジたちの旅は、まだまだ続いていく。

感想・質問・誤字脱字・雑談 等

良かったら書いていって下さい!

今後とも『「神の手」を持つトリマーは、伝説の魔獣もふもふと気ままな旅をする』を宜しくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ