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北の暁  作者: circlebridge
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第二次中華戦争 初期(2045〜2048)

2040年代初頭、欧州連邦は中央アジアにおける影響圏拡大を完了し、

新疆・カザフ西部からタリム盆地一帯を実質的に掌握した。

この地域の安定化を名目として、連邦は経済援助と技術供与を通じて、

旧中華人民共和国西部に残存していた「中華社会主義共和国」(通称:共産中華)への接

近を進めた。

連邦は、共産中華の独裁政権に対し、AI行政システム・エネルギー供給網・軍事顧問団を

提供。

その代償として、外交・軍事両面での従属的協定を締結させた。

2044年の「ウルムチ協定」では、共産中華の外交方針が連邦の指導下に置かれ、

事実上の属国化が確定した。

この過程で共産中華内部では政治制度の再編が行われ、

「集団指導体制」は形骸化し、代わって連邦式の“技術官僚評議会”が権力を掌握。

形式上は社会主義国家を維持しながらも、実態は連邦の影響下にある技術独裁国家となっ

た。

2045年初頭、連邦は共産中華に対し、

「東方における秩序回復」と称して中華民国への軍事行動を黙認した。

共産中華政府はこれを受けて、沿海部に展開する中華民国を「分裂国家」「旧帝国主義の

傀儡」と非難し、

同年3月、正式に宣戦を布告。

第二次中華戦争が勃発した。

開戦初動

戦争は共産中華軍による大規模な陸上侵攻で始まった。

陝西・四川方面からの進撃軍団が黄河上流域に突入し、

中華民国西部防衛線を突破。

連邦製の戦術支援AIと精密兵器が投入され、当初の戦果は大きかった。

だが、中華民国側も英米日の情報支援を受け、

制空権を局地的に確保し、補給線を断つ反撃に出た。

特に日本軍による衛星監視と長距離航空攻撃が有効に機能し、

共産中華の進撃は長江上流で停滞した。

政治構造の変化

戦局の膠着とともに、共産中華内部では政体の変化が加速した。

戦時体制の強化を口実に、連邦顧問団が行政機構を直接監督。

連邦標準のAI管理システム「アウスバルドⅡ型」が政務運営と戦略決定に導入され、

人間の政治家は名目的存在となった。

これにより、共産中華は形式上は独立国家でありながら、

実質的には連邦の“東方属州”と化していく。

国際的反応

連合国は当初、この戦争を「中国内戦の再燃」とみなし、

直接介入を避けた。

しかし、戦闘地域が四川・雲南方面に拡大し、

インドシナ方面への難民流入が発生したことで国際的非難が高まった。

特に日本と蝦夷は、満州国防衛の観点から警戒を強め、

中華民国への軍事物資援助を増大させた。

戦況の推移

2046年以降、戦線は長江中流域を軸に膠着。

共産中華軍は連邦からの無人戦闘機群・AI砲兵システムの供与を受けたが、

中華民国は人的資源と連合国の後方支援を背景に粘り強く抗戦。

山岳地帯ではゲリラ戦が続き、都市部では空襲と爆撃により壊滅的被害が発生した。

2048年末の時点で、戦線は重慶周辺に固定化。

共産中華は戦争目的を達成できず、

中華民国も領土を守り抜くのがやっとという状況であった。

だが、連邦内部ではこの戦争を「AI主導戦争の成功例」と喧伝する勢力が強まり、

以後の政策決定をAIへ委譲する動きが本格化していくこととなる。

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