大ドイツ帝国(Großdeutsches Reich)―1980年代の姿
概要
1980年代の大ドイツ帝国は、第二次世界大戦・独ソ戦争を経てヨーロッパと西ロシアを
支配する超大国として君臨している。
その国力は依然として世界最大級であり、**「欧州の秩序」**を名乗る体制を維持してい
るが、国内的には疲弊と硬直化、外部的には連合国(英・米・日・蝦)との冷戦構造によ
り、緊張と閉塞が共存している時期である。
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領域と行政体制
領域
1980年代時点での帝国領域は以下の通り:
• 旧ドイツ本国領(史実の西独・東独地域)
• 併合フランス領(旧ヴィシー政体):完全併合され「西方特別州」として再編。
• イタリア王国:形式的には独立王国だが、実質的には帝国の属国。外政・軍事・通貨が
帝国に従属。
• 東欧全域:ポーランド・チェコ・スロヴァキア・ハンガリー・バルカン半島・バルト三
国を含む。帝国総督府および植民地型直轄支配。
• ヨーロッパロシア西部:独ソ戦後に獲得。ドニエプル川以西は完全にドイツ化政策が進
む。
• 黒海北岸・コーカサス西部:資源確保地域として軍政下に置かれている。
領域内人口は約3億6千万。そのうち「アーリア系」とされる帝国市民は約2億人に達す
る。
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政治体制
• 国家元首:総統(Führer)
• ヒトラー死後、党内部の権力抗争を経て「総統評議会」体制となっている(集団指導
制)。
• 名目上の最高指導者はハインリヒ・ヒムラーの後継者とされるが、実際は党官僚と軍産
複合体が支配する。
• 行政機構
• 党(国家社会主義ドイツ労働党)は存続し、「帝国党」と改称。官僚機構と完全に融
合。
• 地方は大管区(Gau)制度を拡張し、旧東欧には総督府・総監府が並立。
• 安全保障
• 党直属の保安局(RSB:Reichssicherheitsbüro)が内外の情報・治安を掌握。
• 一方で、国防軍(Wehrmacht)は技術革新と核抑止の中核を担う存在として再編されて
いる。
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経済と社会
経済体制
• 国家資本主義的な統制経済が続き、「四カ年計画」的産業管理は形を変えて持続。
• 重工業・エネルギー・軍需産業が経済の中核。
• 欧州のインフラ(高速道路・鉄道・原子力発電)は帝国主導で整備され、表面的には
「秩序ある繁栄」を演出している。
• フランス・東欧地域は低賃金労働力供給地として帝国本土を支える構造。
技術と科学
• ロケット・原子力・航空技術は依然世界最先端。
• 宇宙開発競争では、英米連合と並び「第二の宇宙強国」として衛星打ち上げを実現。
• 情報技術は遅れ気味で、計算機の民間利用は限定的。
社会構造
• 人種的ヒエラルキーが制度化され、アーリア系市民が特権階層を形成。
• 東欧・ロシア地域の住民は「帝国労務者」として差別的地位に置かれる。
• 都市部では高い生活水準と社会保障が維持されるが、農村部や植民地地域では貧困が残
る。
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外交と軍事
外交
• 冷戦構造が固定化:
• 西側:英・米・日・蝦・中華民国などの「連合圏」
• 東側:ドイツ・イタリア・バルカン・東欧の「枢軸圏」
• 公的な国交は最低限にとどまり、経済取引はスイス・スウェーデンなど中立国を介す
る。
与を実施。
• アラブ・中東・ラテンアメリカ諸国へは枢軸側への影響拡大を狙い、技術援助・武器供
軍事
• 1950年代の独ソ戦後、ドイツは核保有国としての地位を確立。
• 1980年代には長射程ミサイル・中型核搭載爆撃機を運用。
• 陸軍:主に東欧・ロシア方面に配備。
• 海軍:地中海・北海・黒海に艦隊を保有。大洋進出力は限定的。
• 空軍:電子戦・偵察に重点化。高高度戦闘機と無人偵察機の研究が進む。
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社会と文化
• 国家が文化を徹底的に管理。「帝国芸術院」が文化方針を統制。
• 反体制的思想・芸術は抑圧され、国外流出が続く。
• 教育は国家主義・科学重視で、「アーリア文明の使命」を教義化。
• 都市では効率的で秩序だった社会が維持される一方、内面の自由は失われている。
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内部矛盾と疲弊
1980年代の帝国は表面的な繁栄を維持しつつも、深刻な構造的問題を抱えている:
• 東欧・ロシア地域での反乱・テロの頻発。
• 若年層の「脱イデオロギー化」――国家神話への冷笑。
• 経済官僚と軍産複合体の腐敗。
• 党内での権力闘争の再燃。
• 中立国経由の情報・文化流入による「静かな自由化要求」。
これらはまだ爆発的な革命には至らないが、体制の末期的硬直を示している。
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概説
項目 状況
国体 国家社会主義的一党支配(総統評議会制)
領域 欧州全域+ヨーロッパロシア西部
人口 約3億6千万
経済 統制資本主義・重工業主導
軍事 世界有数の核・ミサイル・陸軍大国
外交 英米日蝦を中心とする連合圏と冷戦
国内 安定と抑圧、繁栄と疲弊の並存
社会傾向 秩序の中の倦怠、国家神話への懐疑
未来像 内部硬直化と世代交代が迫る“帝国の黄昏”期




