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北の暁  作者: circlebridge
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1980年代の世界(Ezo Alternate History)

【Ⅰ】世界構造の全体像

1980年代初頭、世界は二大超勢力による冷戦構造の安定期に入ってい

た。

独ソ戦(1950年代初頭)の衝撃から30年、各国は再び繁栄と停滞の均衡

を保ちつつある。

二大ブロック体制

ブロック 主導国 体制・理念 勢力圏 経済中心

連合国ブロック(Atlantic–Pacific League) 米国・英国・日本・蝦夷 立憲民主・自由経

済・国際協調 北米・太平洋・東南アジア・インド洋・南アジア・華南 東京・サンフラン

シスコ・シペロ(蝦夷首都)

枢軸ブロック(Germanic Axis) ドイツ帝国・衛星諸国 権威主義的国家資本主義・秩序

主義 欧州大陸・東欧・中東・北アフリカ・華北 ベルリン・ウィーン・ブカレスト

両陣営は全面戦争を避け、

「冷戦」「代理戦」「経済競争」「宇宙開発」で対立を続けている。

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【Ⅱ】主要国の状況

ドイツ帝国(Großgermanisches Reich)

• ヨーロッパ大陸の覇権国家。1940年代以降、バルトからバルカン、黒海沿岸に至る巨大

帝国を維持。

• 体制:皇帝国家+国家社会党による寡頭統治。

• 核保有国。1950年に世界初の実戦核使用国となって以来、抑止力を維持。

• 経済は軍需産業と資源植民地ウクライナ・コーカサスに依存。

• 問題:民族問題(スラブ人への差別・同化政策)と、経済停滞・文化閉塞。

1980年代には「ベルリンの秩序、東京の繁栄」と対比されるほど、

ドイツ帝国は富んではいるが停滞した社会を象徴する存在になっている。

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イタリア王国(Repubblica Italiana Reale)

• ムッソリーニ死後、王政を復活させた「立憲君主制+権威主義的政府」。

• 枢軸陣営に名を連ねつつも、1970年代以降は中立化・西方外交の緩和路線を採用。

• バチカンを中心に欧州南部の緩衝国家として機能。

• ポルトガルやスペインとともに「地中海中立圏」を形成。

• ドイツに対しては従属的だが、文化的影響力は依然として強い。

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中華人民共和国(西部政権)

• 首都:西安。

• 領域:陝西・甘粛・青海・新疆・チベット東部。

• 成立:1943年、ソ連支援により「華北政権」として成立。ソ連崩壊後、西遷して現在の

形に。

• 政体:軍閥的社会主義政権(宗教社会主義)。

• 経済:鉱産資源輸出国。ドイツ帝国に希少金属を供給。

• 外交:華南の中華連邦共和国(親英米)と緊張状態を維持。

“赤い西域”と呼ばれ、社会主義というより「半封建軍政国家」に近い。

文化的にはチベット仏教・イスラム・儒教の混在した異形の政体。

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中華連邦共和国(南部中華)

• 首都:南京。英米蝦日の支援によって成立。

• 華南・華中・台湾・香港を含む。

• 政体:共和主義・自由市場型の連合国家。

• 東アジア最大の新興経済圏であり、日本と蝦夷の主要貿易相手国。

• 軍事:英米の軍事顧問団が駐留し、北の共産圏と対峙。

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日本

• アジア自由圏の中心国。

• 19世紀末以来、蝦夷と並ぶ連合国の主要柱。

• 経済:電子・輸送機械・造船・情報産業で世界をリード。

• 政治:保守連立政権による安定期。防衛力増強と太平洋経済圏の推進。

• 国際:アジアの安定を担う盟主的地位。

• 軍事:実質的に米・蝦と共同運用の「北太平洋統合軍」。

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蝦夷国(Kingdom of Ezo)

• 建国:源義経を祖とする巫女王家を戴く立憲君主国。

• 政治:女系王統を象徴とし、議会政治による穏健自由主義体制。

• 経済:資源(エネルギー・希少金属・漁業)と科学技術国家。

• 通貨:シペ(Sipe)。金・資源裏付けの安定通貨。

• 国際:連合国ブロック北端の防衛・補給拠点。

• 文化:自然主義・北方倫理・アイヌ文化の再評価が進む。

1980年代、蝦夷は「北のスイス」と呼ばれ、

国際科学・外交・調停の舞台として世界的影響力を持つ。

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米国・英国

• 米英は依然として連合ブロックの軸。

• 米国は情報革命(マイクロコンピュータ、通信網)を先導。

• 英国は英連邦再編で政治的影響力を保持。

• 両国とも東アジアでは日本・蝦夷と協調してドイツの影響拡大を牽制。

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【Ⅲ】地域別の情勢

ヨーロッパ

• ドイツ帝国の下、表面的な安定が続く。

• フランスはヴィシー政権が存続、北部はドイツ直轄。

• 東欧では民族反乱が続くが、情報統制で封殺。

• イタリア・スペインは事実上の中立圏。

• 英国のみが欧州での自由圏の砦として存在。

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アジア

• 「二つの中華」が冷戦構造の焦点。

• 朝鮮半島は戦後連合国支配を経て、**統一民主国家(朝鮮共和国)**として安定。

• 東南アジアは連合国寄り(ベトナム共和国、フィリピン、タイなど)。

• 蝦夷・日本が太平洋同盟の経済中核。

• 西部中国(中華人民共和国)と中東ドイツ勢力圏が接する地域では緊張状態。

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中東・アフリカ

• ドイツが石油地帯を直接支配。

• アラビア分割戦争(1979–82)で独が介入、英米が秘密支援。

• 北アフリカでは独支配下のアルジェリア・リビアで独立運動。

• 1980年代は「砂漠のゲリラ戦」が続く。

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北太平洋・北極圏

• 蝦夷国が主導する「北極海航路開発協定」締結(1978)。

• 北極圏資源開発・気候観測・通信衛星網整備が進む。

• 北極研究都市オロラ(Aurora City)が世界的科学拠点に。

• 日本・蝦夷・カナダ・米国が協力し、「極北開発圏」を形成。

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【Ⅳ】経済・科学・文化

経済

• 世界経済の中心は太平洋圏(東京・蝦夷・香港・サンフランシスコ)。

• 連合国ブロックでは「情報産業革命」が進行。

• ドイツは軍事・重工業依存で成長が鈍化。

• ドル・円・シペが三大国際通貨。

科学・技術

• 宇宙開発競争が激化。

• 米・日・蝦連合:月面観測基地「アマツ・ステーション」建設。

• ドイツ:軌道防衛衛星網「ヴァルハラ・ネット」完成。

• 核抑止のもとで情報・通信・医療・エネルギー技術が急進。

文化・思想

• ドイツ圏:秩序・均質化・管理社会的文化。

• 太平洋圏:自由・多文化・自然調和志向。

• 蝦夷では「極北文明論」「循環社会思想」が台頭。

→ 技術文明と自然倫理を融合させる哲学運動。

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【Ⅴ】1980年代の国際的雰囲気

「戦争は遠く、冷戦は日常、

富は東から流れ、秩序は西に沈む。」

——蝦夷の思想家キト・ルマト(1983)

1980年代の人々にとって、戦争は抽象的な歴史の記憶に過ぎなかった。

だが、その平和は常に「緊張の上に成り立つ安定」であり、

北極圏や宇宙での小競り合いが「次の大戦」の予兆とも囁かれていた。

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結論:1980年代世界の本質

ベルリンの秩序、東京の繁栄、蝦夷の静謐。

世界は二つの文明(権威と自由)の狭間で均衡し、

「冷たい平和」が最も長く続いた時代であった。

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