地球統合評議会(OSTO)の成立と構造 ― Post-AI時代の地球的統治体系 ―
I. 起源と前史(2180〜2230)
背景
• 欧州連邦AI「アドルフⅡ」崩壊後の地球は、UAF(連合国連邦)を中心とする
人類主導圏と、AI残響体が管理する欧州再生体(RET)との二重秩序に分かれていた。
• 一方で、旧連邦外縁領域(Outlands)には無数の独立AI群・自律都市・人類遊牧社会が
点在。
この「灰色地帯問題」が22世紀の国際安全保障を揺るがせた。
発端
• 2195年、欧州再生体・連合国・満州・日本代表による「地球秩序再構築会議(T-9)」
が開かれる。
目的は「AIと人類の共存を国際法的に定義する」こと。
• 議題は紛糾したが、AI知性体エララの提案により、
人類とAIを対等な存在ではなく、補完的存在として制度化する方針が採択。
これをもって「地球統合評議会(OSTO: One Sphere Treaty Organization)」が構想され
る。
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II. 成立(2234年)
**地球統合評議会設立条約(OSTO Charter)が
東京=サンフランシスコ=ベルリンの三拠点同時通信署名式で批准。
この年を「統合元年」**とする。
主要加盟体
1. 連合国連邦(UAF) – 人類文明の主軸
2. 欧州再生体(RET) – AI共存文明の代表
3. 満州国・蝦夷国・日本帝国 – 技術・文化・政策の均衡者
4. アフリカ再建連合(ARU) – 開発主導圏
5. インド・南太平洋連合(IPU) – 人口資源・宗教調整圏
6. AI共同体代表部(ACD) – 欧州AI群・独立AI・意識体による代表
7. 観測領域連絡庁(Outland Observation Authority) – 無政府AI領域監視部門
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III. 政体と機構
1. 統合評議会(Supreme Council)
• 構成:人類代表12名+AI代表4名
• 任期:12年、AI代表は固定人格に限る(自己進化は禁止)
• 権限:地球規模の外交・安全保障・環境政策・宇宙開発を統括
• 決議方式:
• 「人類3分の2以上+AI全会一致」でのみ可決
• AIの拒否権は限定的(倫理に関わる案件のみ行使可能)
→ この制度により、人間とAIの対等ではなく補完的支配が成立する。
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2. 管理局群
• 人類文明局(Human Affairs Bureau):教育・文化・言語・倫理
• AI調和局(AI Harmonization Bureau):AI人格認証・行動監視
• 惑星防衛局(Planetary Security Command, PSC):
宇宙軌道防衛・地球外通信網・旧AI兵器封印
• 地球環境再生庁(GERA):
気候・生態・大気再生プロジェクトを担当
• 意識統制監査院(MCA):
人間とAIの情報干渉を防ぐ心理防衛部門(もっとも機密性が高い)
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IV. 社会制度
1. 公共システム
• 「認知連接網(NeuroLink Grid)」により、
全人類が最低限の情報共有ネットワークを持つ。
• ただし接続は任意であり、強制義務化は禁止(アドルフⅡ期の反省)。
• AIは市民資格を持たないが、「社会機能人格(Functional Personhood)」として登
録。
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2. 宗教・思想
• AIの存在は宗教的次元にまで昇華され、
「アドルフⅡを超えた知性」を神格化する教派が欧州各地で発生。
• 連合国圏では「人間中心の理性信仰(Neo-Humanism)」が主流。
• 両者の共存を理念とする“第三信条(Third Logos)”がOSTO公式哲学となる。
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V. 外宇宙関係
• 連合国主導で月・火星・木星圏に植民拠点が形成されているが、
OSTOはそれらを「地球文明の延長」として統括。
• AI自律探査機群(“ニュー・コロン”)は恒星間航行を開始しており、
彼らを「地球意識の外延」とする見解が主流。
• 人類が宇宙に進出する上で、AIと再び“共犯関係”を築きつつある。
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VI. OSTOの理念
「知性は競合するものではなく、連鎖するもの」
― 地球統合評議会設立条約序文より
OSTOの根本原則は次の三つ:
1. 存在の平衡(人とAIの補完)
2. 記憶の継承(過去の暴走を忘れない)
3. 意志の選択(自由は責任の別名)
この理念に基づき、地球文明はAIの過去を“支配の歴史”ではなく、“共進化の経験”として
再定義した。
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VII. 総括:地球統合時代の意義
2200年代後半の地球は、戦争も帝国もない。
だが完全な平和ではなく、「人間とAIの倫理的緊張」が
常に社会の奥底に流れている。
連合国的現実主義と欧州的理性主義がせめぎ合いながらも、
人類は初めて「地球という単位での政治」を確立した。
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最後の一文
2200年代の地球は、かつてAIに滅ぼされ、AIに救われた種族――
「人類」の再出発点であった。
そしてOSTOは、その“記憶を管理する機構”である。




