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私、異世界でお菓子屋さん目指します!

「あれ、ここは……?」


 目が覚めたら、そこはどこまでも続く明るい空間でした。先ほどまで何をしていたか、すぐに思い出すことが出来ません。


「おっ、目が覚めた?」


「えっ……?」


 そこにいたのは羽ペンを持った天使のような人。翼が生えていて、天使のわっか、白くてとても長い髪。うん、これは天使だと思います。

 天使……?あ、そうか。


「君は—―」

「死んだ……んですか?」

「おっ、御明察」


 私……日向(ヒュウガ)みなもは、死んだんだ。

 15歳。私はとても病弱でした。


「外で遊びたいな……」


 そう思いつつも、チャンスはありませんでした。家族とはちゃんと別れは済ませました。未練が無いと言えば嘘になりますが、妹が健やかに成長することを願うばかりです。


「死後の世界って、本当にあったんですね」

「はっはっは、まああると言えばあるのかな~」


 手に持っている羽ペンを振りながら笑う天使さん。なんかインクが飛んできそうで嫌です。

 この先私はどうなるのでしょうか。親より先に死んだという事で地獄行なのでしょうか。石を積み上げるのは嫌です。


「ならないならない。そう怖がらないでよ」


 見透かしたような口調で私の肩に手を回します。なんでしょう、この天使さんとても気さくです。


「ごめんね、見た目と違う口調でさ。私は転生管理局の職員でね。君と同じような人たちを扱っているうちに口調がこうなってきちゃったのさ」

「あ、いえいえそんな謝らなくても……」


 え?


「今転生って言いました?」

「いかにも!あまりにも不憫に早く亡くなってしまった人を、なるべく望むような形で異世界に転生させるっていうのが私たちの仕事なんだよ!」

「理解が追い付かないんですけど」


 確かに、夢も諦めて一生懸命生きてきました。病室でいっぱい本も漫画も読みましたし、ゲームもやってました。そんな不憫と言われるほどじゃないんだけど……


「自覚は無い、というわけだね」

 

 「君のお友達の高橋さん、彼も前世は獣人だったよ」と続けて言いました。知らなかった……知っててもおかしいですけど。


「と!いう事でだ!君は何か希望があるかい?異世界でチート能力を使って無双したい!とか、好きなゲームのキャラクターになりたい!とかなんでも思い通りだよ」


 羽ペンを振り回しながら芝居がかったような口調で大仰に天使さんは言いました。


「え、ええと……あの、その……」


 急に言われても困ります。一応死んだすぐ後ですし……


「うんうん、ゆっくりで良いよ」


 そうですねー……


「私、小さいころはお菓子屋さんをやりたかったんです。それが出来たら良いなーって思います」

「うんうん、なるほど」

「まだ良いですか?」

「うん、良いよ」


 私は息を思いっきり吸いました。


「出来れば大きい港町の近くが良いです。海の香りが好きなので。あと、町の中心部から離れた所に家が欲しいです。暮らすのには不自由しないような家が良いです。それと、戦うのは嫌なので、勇者になるとかは嫌です。少しだけ、ほんの少しだけ森とか、海とか、そういう場所を冒険もしてみたいです」


 一息で言いました。とても疲れました。


「はっはっは!君面白いねえ、意外と言うねえ」


 天使さんはお腹を抱えて笑っています。言いすぎましたかね?今になって恥ずかしくなってきました……


「あの……無理なら……」


 腕をもじもじとしながら私は下を向きます。普段あまりわがままを言わないのでついつい。


「良いよー、気に入った。叶えてあげる。それにチート能力が欲しいよりかは全然マシ!むしろそんなので良いのかーって感じ」


 言いながら天使さんはもう書類を書いています。早いです。ベテランさんです。


「あと、色も付けといてあげる。おまけだよ?」

「色?えっ、色?なんですかそれ……!」

「ふふ、お楽しみに~、怖がらないでよ?」


 あまり何かあっても怖いことになる気もするんですけど……まあ良いです。信じましょう。


「さようならみなも。君は次の世界でゆっくり過ごすといいさ。スローライフをね」


 そう聞こえた後、私の意識はぷつりと途切れました。


—―


 次に聞こえてきたのは波の音、それにカモメによく似た鳥の鳴き声でした。


「……ん。んー……」


 立ち上がるとそこは異世界だった……です。


「うわー、すっごい!」


 思わず声が出ちゃいました。目の前にまず広がるのは大海原、ちょっと丘になっているところに私はいるみたいです。波の音、潮の香り。私の前世も海が近かったので、見慣れていると言えばそうなのですが……でもでも、異世界!っていうのが一目でわかります!

 だってあれ!


「船だ!」


 見たことも無い帆船がありました!中世って感じ?大航海時代とか、そういう雰囲気の……!あそこまで大きい帆船は、ワ〇ピースとか、パイレーツオブ〇リビアンでしか見たことがありません!


 左を向くと、丘の下には町が見えました。港町です。大きな町では無いようですが、とても活気があるように見えます。

 ちょっと背伸びをしてみます。が、町の様子はそこまでよく見えません。私の身長も小さくなってるような気がしました。ただ、市場があったり、鎧を着ている方を見ることは出来ます。

 

 後ろを向くと家がありました。玄関のドアには『空き家』と書かれた札が掛かっています……あれ?どう見ても読めない、日本語では無い文字なのに空き家と読めました。これが天使さんの言っていた色なのでしょうか。

 おっきい家です。これが天使さんの作ってくれた家だとしたら凄い建築家です。


「おじゃましま~す……」


 恐る恐る私は玄関の扉を開けました。誰かが既にいたら怖いです。不法侵入になってしまいます。


「……木の香り」


 くんくんと匂いを嗅いでみると、新品の家の香りがします。嗅いだことは無いですけど、きっとこれはそうだと思います。

 中に入ってみてもとても大きな家です。少し探検してみようと思います。


 一階には大広間!大きい木で出来た机と、その周りにはお揃いの色の椅子が六つ置いてあります。

 お風呂も広々とあります。この世界にもそういう文化があるのでしょうか。


「あれ?……おー」


 私の姿も変わっていました。水色のロングヘアにピンク色の瞳、小さくなった身長は前よりかも幼く見えます。身長が高かったことは少しコンプレックスだったので、うれしいです。着ている服もとてもおしゃれに見えます。フリルの付いた白いワンピースにリボンのブローチ。


「……ちょっと、お姫様みたいかも」

 

 鏡に映る自分に、ほんの少しだけにやっと笑ってしまいました。

 洗面所に合ったゴムでツインテールにして、私は探検を続けます。


 キッチンも広いです。食器と、地下の貯蔵庫にはある程度の食料も完備!……と、お腹がぐーと鳴りました。後で何か作ろうと思います。

 あとは個室が三つ。それぞれベッドもあります。

 二階もあります。個室がまた三つ、と倉庫が二部屋です。

 実験室みたいなのもあります。何に使うのでしょうか。


「ふー、こんなものかな」


 とっても広い家でした。天使さんには感謝です。

 でも……広くてちょっと寂しいです。部屋は多いので、家族も欲しいですね。


 あ、あと!お店が出来そうなスペースもありました!ショーウインドウがあって、いかにもお菓子屋さんが出来そうでした!


 ぐー


 あ、そうでした。お腹が空いていたんです。

 私はキッチンに向かい、改めて食料を見ました。お野菜にお肉、お魚もあります。なんの種類かはわかりませんが……


『≪鑑定≫発動』


「え!」


 パーッと食材が一気に光りました。何かが起きたみたいです。その瞬間、私は食材の名前が全てわかりました。これも天使さんのおかげ?でも正直眩しかったです。

 全て知っている食材でした。言語だけ違うくらいなんでしょうか。便利な異世界です。


「……ステータス?」


 昔RPGであったメニュー画面、の中の自分自身の情報が見れるところ、そこを何となく呟いてみました。


 ブオン


 なんと!目の前に透明なステータス画面が現れました!なになに?


『ミナモ 職業:錬金術師 年齢:13歳』


 錬金術師みたいです。何かを錬金できるのでしょうか。それに、ほんの少しだけ若返ってます。


『スキル:錬金 鑑定 製菓』


 スキルが三つもあります。さっきの光ったのは鑑定でしょう。あとの錬金と製菓……製菓はお菓子屋さんの為のスキルでしょう。ありがたいです。錬金は……なんですか?


『錬金:異なる素材を使い、新たな物を生み出す』


 説明文がありました。凄いです。

 直感で何と何を組み合わせれば何になるかも理解出来てます。私、これチートすぎます。


『製菓:お菓子を作れます』


 それだけ?でもレシピが手に取るように頭に入っています。たとえば牛乳と卵と砂糖でプリンが出来るように。

 いや、これは例えじゃなくて本当に出来るんですけど。やっぱりチートです。

 あ、そうだ。だったら試しにお菓子を作ってみようと思います。

 そう思って、私は再度キッチンを探しますが……


「何も無い……」


 お菓子の材料が何も無かったです。小麦粉も、牛乳も、卵もバターも何も無いです。


「天使さん……うっかりしちゃったのかなぁ」


 苦笑いするしかありませんでした。


単発バイトがひと段落済んだのでもう一本です。

こっちは不定期更新かなあ。

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