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9 セシルの葛藤

 一方、セシルは一人、ため息をついていた。

 ルーベルトのリリアーナへのアプローチが本格化している。


 これまでの、会うのも1回きりだった求婚者たちとルーベルトは違う。本気で、誠実にリリアーナに想いを伝えているのだ。

 毎日クラリス公爵家に通っていて、もう両親公認の仲だとか、理想のカップルだとか、社交界でも話題の中心になっている。


 ……かなりやばい。


 今まで余裕ぶっていたが、焦りが募る。

 ルーベルトはクラリス公爵家に通って堂々と求婚することができるが、セシルは用もなくリリアーナに会いに行くことができない。


 自分で言うのもなんだが、俺はモテる。


 俺のことを好きな令嬢同士が虚勢を張り合ってありもしない噂話を広げられ、ひどい時には話したこともない令嬢に関係を持っただとか吹聴されたこともあった。

 いちいち否定するのも面倒だと放置しているうちに「社交界1の色男」とかいう全く嬉しくもない二つ名がついた。


 そんな自分が、兄の元婚約者でもあるリリアーナに求婚しているというような噂が今立てば、せっかく築いた彼女の立場も危うくしてしまう。

 

 最近のリリアーナは、妃教育から解放されて友人もでき、社交界に頻繁に顔を出すようになった。表情も豊かになり、幼い頃の彼女を思い出す。


 リリアーナは、12年前の事を覚えていない。互いにまだ4歳だったから、仕方はない。むしろ鮮明に覚えているセシルがおかしいのだ。だが、そのくらい、セシルにとっては人生を大きく変えたと言っても過言ではない出来事だった。


 ある日の王城のパーティーで、リリアーナの姿を見つけたセシルは、真っ先に彼女の元へ駆け寄った。

 そして開口一番。


「リリアーナ、本当に彼と結婚するの?」

「急に何?」

「……いや、なんでもない」

「確かに毎日来てくれているけど、そこまで話は進んでいないわ。噂に尾鰭がついているだけ。どうして?」

「そっか」


 つい口元が緩みそうになるのを抑え、ほっと胸を撫で下ろす。

 だが、油断はできない。毎日通っているなら、いつ2人の関係が前進してもおかしくない。自分も何か行動しなければと、今度は眉間に皺を寄せる。


「今日のセシル、なんだか変よ?」

「ごめん、ちょっと考え事をしてた」


 そんなコロコロと表情が変わるセシルと、全く気にとめていない様子のリリアーナを隣で観察していたミレイユとフィリップは、これは面白いと生暖かい目で2人を見つめるのだった。

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