第2話
【2025.5.2 内容を変更しました】
「申し訳ありません、失礼いたし・・・っ?!」
今度こそ退出しようとすると、シルヴィア殿下が私の腕を掴んだ。
「お離しください、殿下。令嬢にそんな扱いをしてよろしいのですか?」
「全て僕が悪かった、ティリア。」
「・・・悪いと思うなら、今すぐにわたくしの手をお離しください」
「・・・」
殿下がなかなか手を離さないため、無理やり振り払おうとして腕を上にあげ、勢いよく下げようとすると・・・
動きを制御され、殿下が跪く。
「ティリア、今までぞんざいな扱いをしてしまってすまない。だから、もう一度やり直さないか?」
「わたくしの仕事を押し付け、マリー様と昼間から寝るつもりですか?」
「違う!全ては演技なんだ!」
突然の告白に驚く。
というか、さっき婚約破棄されたわたくしが、王太子の愛されない正室になる?
バカにし過ぎにも程があるわ。
「君が好きだったが、君は俺の事を愛してなかったし俺の方なんて少しも向いていなかっただろう?だから、彼女に協力してもらっていたんだ!」
「・・・そうなんですか。」
「だから、彼女とベットで・・・というのも、実際にしていないし、そもそも彼女はすぐに部屋へ帰って行ったんだ!それに、マリー嬢を虐めたというのもでっち上げだったんだ!」
「じゃあ、どうしてわたくしを無実の罪だと知っておきながら断罪したのですか?」
「そ、それは・・・。窮地に追い込まれればティリアが自分自身の本当の気持ちが分かって、俺にすがりついてくると思って・・・」
「残念ながら、わたくしはそこまでか弱くないですし、恋はしないので。」
「じゃあ、これから恋すればいいんじゃないか?」
「は・・・?」
さっきまで酷い言葉を連呼して、わたくしやアスベル侯爵家を散々侮辱いた人を許して、恋をしろと?!
「マリー嬢、協力ありがとう。謝礼は後で払う」
「はい。失礼致します、シルヴィア王太子殿下。」
マリー様も、先程までのぶりっ子はどこかに消えていき、身分を弁えた「男爵令嬢」になっていた。
「は、はははっ・・・」
完全にわたくしは嵌められていたのね。
もしもこの王太子を愛していたら相当面倒なことになってたわ。
それだけは助かっ・・・
って今、応接室に2人きりじゃん!
まずい、どうしよう。・・・とりあえず逃げよう。
走りながらドレスの胸元を少し開いておけば、殿下が変なことしようとしたって言って謹慎食らってくれるかも!
そしたら国外逃亡するの楽そう!
思いついたらすぐに実行する。
すぐ後ろにある応接室の扉を勢いよく開け、急いで護衛の元へ急ぐ。
・・・もちろん、胸元を開けるのは忘れずに。
「待てっ、ティリア!」
「おやめ下さい、殿下!・・・助けてください、騎士様っ!殿下が・・・」
「だ、大丈夫ですか、ティリア様!何がっ・・・」
「殿下がわたくしを襲おうとしたのです!」
「お前ら、そこをどけっ!王太子に逆らうのか!」
「相手の許可なくそういったことを無理強いすることは、誰であっても許される所業ではありません。」
「違う!襲ってなどいない!!」
「ティリア様は怯えていらっしゃいます。そんなレディーを見てもそんなことが言えますか!」
「なんだ、何事だ」
そこにやってきたのは・・・