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深緑の花婿  作者: 立菓
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訓練所へ

 コノハが武術の訓練所に着いた時、周りは非常に静かだった。近衛兵たちの声も、武器が何かに当たる音も、全く聞こえてこない。


 さく越しに的が遠くに見える場所を見つけると、コノハは弓の訓練場の戸を空けて、さっそく中に入った。

 すると、彼女はすぐに武術の練習をし始めたようだ。普段持っていた弓矢とは違ったせいか、慣れない手付きのようだった。



 しかし、実野谷みのやで使っていた練習場と違えど、コノハの集中力はとてつもなかった。

 彼女が最初に三本射た矢は、的のど真ん中、中心のとても小さい円の中に、見事に入っていたのだ。


 その後、コノハは的の方に行き、自分で全ての矢を抜いた。

 三本の矢を回収し終わると、彼女は後ろを向き、来た道を真っ直ぐに戻っていく。



 あと数歩で、矢を射る位置までコノハが戻った時、突然、誰かが訓練場の引き戸を開けたようだ。


 癖毛で毛先を出した角髪みずらの青年を、コノハはきちんと覚えていた。慎重に訓練場の中に入ってきた建比古たけひこと目が合うと、コノハは慌てて会釈えしゃくをした。


「……ここらの施錠せじょうのついでに来た。少し……、あんたの練習する様子、拝見してもいーか……?」


 まあ……、本当は『施錠のついでの見学』ではなく、『見学のついでの施錠』である。



 建比古から質問をされ、コノハは驚くと、思わず「……えっ……??」と小声を出した。

 だが、建比古が身分が高い上に、これから自分が仕える方々の一人だというのは、よく分かっていた。彼に対して失礼があってはいけないと思い、コノハは何とか返事をしたのだった。


「いきなりで悪かった……。俺のことは気にせず、続けてくれ」


 と、高貴な立場らしく、堂々と振る舞っていたが、建比古は内心では照れていたようだ。

 コノハは緊張して気付かないようだったが、皇族であれ、流石に想い人の前では、照れ隠しも混ざって、少しだけ目が泳いでいるように見えた。



 建比古の視線を感じつつ、コノハは二回目の練習を始めた。

 一本目、二本目……と、コノハは今回も中心の円の中に、綺麗きれいに矢を射たようだ。

 体を動かしたせいか、少し暑くなってきたようで、彼女は三本の矢をつがえる前に、服の両袖をまくった。


うわさ通りだな。……本当に、見事だっ!!」


 淡々とした口調であったが、建比古はコノハの弓の腕前を観て、すごく感心をした。

 建比古は壁にもたれながら、腕組をして、真剣にコノハの様子を観ている。


「体幹が非常に良い上に、姿勢も美しい程に素晴らしいな。

 ……それから、左腕よりも、矢を射る右腕の方が太いみたいだな。日頃の練習の『努力』が表れているな、本当に良い筋肉が付いている――」


 建比古が話し終えた時に、ちょうどコノハは三本目の矢を的に当てたのだが……。惜しいことに、今度は真ん中の円と中心から二番目の円の境目辺りに、矢が入ったのだった。


 建比古が思わず「おっ……!」と声を出した時、コノハは顔を真っ赤にして、勢いよく後ろを振り返った。


「あの……、た、建比古さま……。ものすっごく恥ずかしいので、こちらの分析……もう終わりにして、頂けませんか?」


「お……、あっ……。わ、悪かった……」


 建比古は片手を額に当てて下を向き、動揺しつつもコノハに謝罪した。


 一方で、ぎこちない様子だったが、自分を褒めてくれた建比古に対して、コノハは良い印象を持ったようだった。

 深呼吸をした後、照れながら微笑むと、建比古の方をしっかりと見た。


「とはいえ……。こちらの武術に対して高く評価して頂いたことは、とても嬉しいです。ありがとうございます」


 日の入りが迫り、外の風はさらに冷たくなっているようで、コノハはクシュンッとくしゃみをした。

 コノハと建比古が気が付いた時には、外は徐々に薄暗くなっていた。


「もう戻った方がいい。風邪を引いたら、業務が辛くなるだろうからな」


「……そうですね、ありがとうございます。では、戻りますね」

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