誤解
「セナ、もう下ろしてもいいよ」
しばらく、セナに顔を見られないように抱きついていると、私のドキドキはかなりマシになっていって、顔ももうほとんど熱くなかったから、私はそう言った。
「……わ、かりました」
すると、セナは残念そうにしながらも、私を下ろしてくれた。……その時に、私はセナと目が合って、何故かまた心臓がドキドキしてきて、顔も熱くなってきたから、私は下ろしてもらって直ぐに、セナから離れて、顔を逸らした。
「……え、ます、たー?」
そして、私が自分の胸に手を当てて、「なんで」と思っていると、直ぐにセナの悲しそうな声が聞こえてきて、私は慌てて言った。
「ま、待って。い、今のはセナの事が嫌だったとか、そういうのじゃないから」
「で、でも、いつもは、そんな離れ方、しない、です……」
すると、セナは俯きながら、涙を目に貯めていたみたいで、涙を何滴か零しながら、そう言ってきた。
私はそんなセナを見た瞬間、さっきまでのドキドキが消えて、セナにそんな誤解して欲しくないと思って、思いっきりセナに抱きついた。
「セナ、さっきのは、ほんとに違うよ。……私はセナの事が好き、だから。……さっきのは、なんか、セナの顔を見ると、ドキドキしちゃって、咄嗟に離れただけ、だから」
そしてそのまま、セナの誤解を解くように頭を撫でながら、そう言った。
すると、私の言葉を聴き終わったセナは、さっきまでの悲しそうな雰囲気は無くなっていて、むしろ嬉しそうに笑みを漏らしていた。
「えへへ、マスター……私も、大好きです」
そして、セナはそう言って、私のことを抱きしめ返してきた。
……セナが嬉しそうだし、誤解は解けたってことでいいのかな? だったら、良かった。
私は心からそう思って、改めてセナをギュッとした。
「セナ、また追っ手が来る前に、早く違う街に向かおう」
セナをギュッとするのをやめて、私はセナの顔を見ながら、そう言った。
さっきみたいにドキドキして、顔が熱くなるけど、今、さっきみたいに顔を逸らしたりしたら、また誤解されちゃうから、顔が赤いのをセナに気が付かれないように祈りながら。
「はい! 任せてください!」
すると、セナは私の顔が赤いのに気が付かなかったのか、嬉しそうに、そう言ってきた。
「うん」
私はそんなセナに頷いたけど、まだ疲れてもないし、自分で歩けるから、セナの手を握りながら、あの街とは反対方向に歩き出した。
取り敢えずは、この前の街かな。
そう思いながら。




