水浴び
セナと一緒に村に行って、村の人達から食料を分けてもらった私たちは、今、川の前にいる。
服を脱がないと、水浴びはできない。……だから、私は今服を脱ごうとしてるんだけど……セナが凄い見てきてる……気がする。セナになら、もちろん見られてもいいんだけど、そんなにずっと見られると、流石に羞恥心が湧いてくる。
……いや、でも、気のせいかな。……だって、別に私の裸なんか見たところで何も得することなんてないと思うし。……セナが私を好いてくれてることは分かるけど、そういう好きじゃないと思うし。
だから、私の裸なんて見たいとは思ってないはず。
そう思って、私は服を脱ぎながら、チラッと後ろを振り向いてみた。
すると、想像通り、セナは私の事なんか見てなくて、周りを警戒していた。……そして、セナは私が振り向いた事に気がついて、不思議そうに首を傾げてきた。
やっぱり気のせいだった。
「なんでもないよ」
私はセナにそう言って、服を脱いだ。
そして、水にゆっくりと入った。……ちょっと寒いけど、これくらいなら大丈夫。
セナに後で温めて貰えるしね。
そう思って、早く水浴びをして体を綺麗にしようとしたところで思った。
あれ、セナはずっと私と一緒にいたよね。……と言うことは、セナも私と同じで汚い!? 汚いって言い方はなんか、嫌だな。……汚いというか……汚れてる? なんか、これも嫌だ。って、そんな私の気持ちなんてどうでもいいんだよ。
「セナ!」
「は、はい、ど、どうかしましたか?」
私が急に振り向いて、セナの事を大声で呼んだからか、セナは少しびっくりした様子でそう聞いてきた。
「セナも一緒に水浴びしよう」
「わ、私もですか? で、でも、マスターが入っているところに私なんかが入る訳には……そ、それに、周りの警戒があります、から」
私の言葉を聞いたセナは、顔を真っ赤にしながらそう言ってきた。
「セナなら、気配? みたいなので分かるんじゃないの?」
「そ、それは、そう……ですが」
「じゃあ、大丈夫でしょ。一緒に水浴びしよ?」
「は、はい!」
セナは嬉しそうに、元気に返事をして、服を脱ぎ出した。
そして、白くて綺麗なセナの肌が顕になった。……なんだか恥ずかしくなってきて、私はそんなセナの肌から咄嗟に目を逸らした。
「ま、マスター、そ、そっちに行っても、いい、ですか?」
すると、服を脱ぎ終わって恥ずかしそうに前を隠しているセナから、そう聞かれた。
「う、うん。もちろんだよ」
私もセナが隠してるのを見て、何となく前を隠しながらそう言った。
すると、セナが残念そうにしていたような気がしたけど、多分気のせいだよね。
「あ、でも、マスター」
「ど、どうしたの?」
「私も水に濡れたら、マスターを温められ無くなっちゃいますよ?」
「……? 水に濡れても温めることは出来ると思うけど」
「……た、確かに、そ、そうですね」
私がそう言うと、セナは耳の先まで真っ赤にしながら、頷いた。
……え、セナって炎の魔法、使えるんだよね? だったら、水に濡れてたって温めることくらいできると思うけど。……仮に使えないんだとしたら、あの時頷くことなんて出来ないと思うし、大丈夫か。
「ま、マスター、さ、寒くないですか?」
「ちょっと寒いけど、大丈夫だよ」
セナにそう聞かれて、私がそう言うと、セナは更に顔を赤らめながら、言ってきた。
「だ、だったら、私が温めますね」
「え――せ、セナ!? な、何してるの」
セナは突然そう言って、前を隠していた手を退けて、私に抱きついてきた。
「あ、温めるっていう話、でしたから。あ、温めてるんですよ」
セナは更に顔を真っ赤にしながら、そう言ってきた。
あ、温めるって、こ、こういうこと、なの? た、確かに、暖かい、けど……は、恥ずかしいよ。
だ、だって、こ、これ、私が、前を手で隠してたから、セナの、む、胸が私の胸に当たらずに私の手に当たってるけど、も、もし、私が隠してなかったら、セナの胸が、わ、私の胸に当たってたって、こと、でしょ。ふ、服越しだったら、抱き合ったりする時に、そんなことはあったけど、い、今は裸、だから。
「ま、マスター、あ、温かいですか?」
そう考えていると、セナにそう聞かれた。
私は黙って、こくこくと頷いた。……実際、温かくはあるから。
すると、セナは嬉しそうにしながら、はにかんでくれた。




