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忘れていた約束

 朝の陽の光で私は目を覚ました。……セナの腕の中で。


「セナ、おはよう」


 私はセナの腕の中にいることに安心して、そう言った。


「おはようございます、マスター」


 セナは私が起きたのに気がつくと、私を抱きしめながらそう言った。

 私もセナの後ろに片手だけ回して抱きしめ、もう片方の手でセナの頭を撫でながら言う。


「セナ、ありがとね」

「は、はい」


 セナは私が頭を急に撫でたことで、一瞬びっくりしてたけど、直ぐに嬉しそうに受け入れてくれた。


「セナ、歩ける? 歩けるなら、そろそろ街に向かおう」


 街に向かおうって言っても、場所も知らずに歩いてるわけだから、どこに街があるかなんて分からないけど、早くあの街の逆の方向に進みたい。


「もちろんです!」


 セナは元気よくそう言うと、私を抱えたまま、木から降りた。

 そして、そのまま進み出そうとするセナを私は慌てて止めた。


「マスター? どうかしましたか?」


 セナは小さく首を傾げて、そう言った。


「いや、私を下ろしてよ」


 どうせ昨日みたいに直ぐにまた疲れて、セナに運んでもらうことになっちゃうと思うけど、行けるところまでは自分で行くに決まってるでしょ。……セナは大丈夫って言うかもしれないけど、少しくらいは負担になってると思うし、少しでも、セナの負担を減らしたい。


「……分かりました」


 そう思って、下ろしてもらったのに、セナは何故か残念そうだ。

 なんで? 私の役に立てないとか思ってたりしてるのかな。……自意識過剰かもしれないけど、一応言っておこう。


「セナ、私はセナがいてくれるだけで幸せだよ」

「ま、マスター!? き、急にどうしましたか?」


 セナは驚きながらも、嬉しそうに顔を赤らめて、そう言った。


「急に言いたくなったんだよ」

「わ、私もマスターと一緒にいると、幸せです!」


 セナにそう言われた私は、顔がにやけそうになるのを抑えながら、セナの手を握って歩き出した。



 

 そして、しばらく歩いたところで、私はとんでもないことを思い出してしまった。

 昨日の夜、セナに血を飲ませるって話だったのに、すっかり忘れて、眠っちゃってたよ!?

 

「せ、セナ! 昨日はごめん。私の血、今飲んでいいから」


 私は首元にかかっている髪を退けて、セナに首を見せながらそう言った。


「ま、マスター!? な、何してるんですか!? そ、外でそんなところ晒しちゃだめです!」


 セナは慌てた様子で、私にそう言ってきた。

 いや、セナ以外に誰もいないでしょ。……流石にセナ以外に誰かいるんだったら、こんな事しないよ。


「いや、セナ以外に誰もいないでしょ」


 思ったことを私はそのまま言った。


「そうですけど、私がいます!」


 ……? どういう事? 別にセナだったら、見られてもいい

けど。……と言うか、ただの首元だし。


「セナならいいけど」

「だ、だめです。こんな朝から、そんなの見せられたら、私が我慢できなくなっちゃいます!」


 ……血を飲みたくなるってこと? 私は昨日の約束を忘れてたお詫びに飲んでもらいたかったんだから、別に我慢する必要なんてないけど。


「我慢しなくていいよ」

「えっ……ま、マスター? い、いいんですか?」

「いいよ」


 そう言って私は、片方の手は髪を退けるのに使ってるから、もう片方の手でを広げて、セナを待った。

 すると、セナが抱きついてきたので、私も片方の手で抱き返すと、今回は直ぐに私の首元に噛み付いてきた。外だからかな? 吸血鬼のことはまだよく分からないけど、相変わらず痛みはなかった。どう考えても、セナのおかげだ。

 私はセナに感謝の気持ちを伝えるために、後ろに回していた手を使ってセナの頭を撫でた。

 

「ま、ますたぁ……」


 セナは息を荒くして、私のことを呼んでくる。

 そしてそのまま、セナは私に体を押し付けてきた。

 

「せ、セナ? 大丈夫?」

「ますたぁ……大丈夫、です……ますたぁ、が、我慢しなくていいって、言ってくれましたから……」


 そう言って、セナは私の唇を舐めた。

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