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嫌なわけないから!

「えっ、も、もう狩って来たんですか!? あ、でもそうですよね」


 ゴブリンの耳を持って、ギルドに戻ってきた私たちは、受付の人に、依頼を終えたことを伝えた。もちろんゴブリンの耳が入った袋を渡しながら。

 すると、受付の人は最初は驚いていたけど、何故か直ぐに納得した様子を見せた。


 ……? この人から見たら小娘二人なんだから、ずるいことをしたとか疑ったりしないのかな。

 ……んー、まぁ、ずるいことなんてしてないから、私たちとしては良いんだけどさ。


「依頼の達成、確かに確認しました」


 そう言って、受付の人は報酬の銀貨二枚を渡してくれた。


「……セナ、もう少し依頼、受けれそう?」


 今の私たちの全財産は銀貨一枚とどうか四枚。……一晩くらいなら、安宿で泊まることが出来ると思うけど、衛生問題とかがあるし、そもそも夕食を食べるだけでなくなっちゃいそうなくらい心もとない。

 だから、私はまだセナが疲れてないかを聞いた。

 もしセナがキツそうなら、全然安宿でいい。私はどうせ何も出来なくて、セナに頼りっぱなしなんだから。……セナにはなるべく無理をさせたくない。


「はい! 私はまだまだ大丈夫ですよ!」


 そう言うセナに疲労の色は見えない。

 だから私はそんなセナに甘えて、依頼を受けた。





「セナのおかげでかなり稼げたよ」


 あれから何個か依頼を受けて、今の手持ちは銀貨四枚と銅貨四枚だ。


「マスター、私はまだまだ依頼を受けれますよ!」

「セナの気持ちは嬉しいけど、もう暗くなってきてるし、宿を取って一緒に休も?」


 セナが働いてばかりで、私は全然働いてなんてないから、一緒に休む必要なんてないんだけど、私だけじゃ何も出来ないし、仮にできたとしてもセナは私が働いてたら休んでくれないと思う。だから、一緒に休もうと誘った。


「ま、マスターと休む……ふへへ」


 セナは私にくっついて来て、だらしない笑みを浮かべた。

 ……う、うん。まぁ、セナはいっぱい働いたしね。そんな感じに顔が緩むこともあるよ。

 まぁ、そんな顔でも元がいいから、可愛いんだけどさ。


「あ」

「どうしましたか?」

「いや、宿の場所を聞くのを忘れたと思って」


 冒険者ギルドの時は、セナのおかげで何とかなったけど、流石にセナでも宿の場所は分からないもんね。

 

「あそこじゃないですか?」

「あ、ほんとだ。石の宿って書いてある」


 石で作られてるわけでも無いのに、石の宿って言う名前のセンスはどうかと思うけど、まぁなんでもいい。

 外から見た感じ、そんなに汚いようには見えないし、普通にいい宿かもしれない。


「入ってみよっか」

「はい!」


 そう言ってセナと私は、石の宿に入った。

 うん。中もちゃんと掃除がしてあって綺麗だね。……後は部屋の中だけど、見せて欲しいと言ったところ、断られた。

 怪しくない? ……もしかして汚いのかな。


「マスター、この宿はちゃんと掃除が行き届いていますよ」


 セナがそう耳元で言ってきた。

 なんで分かったのかは分からないけど、セナがそう言うのなら、大丈夫だと思う。


 そう思った私は、一泊いくらかを聞いた。

 すると、一人部屋で銅貨八枚、二人部屋で銀貨一枚と銅貨二枚だと言われた。

 私は普通に二人部屋を借りようとしたんだけど、セナに止められた。


「マスター、一人部屋にしましょう」

「? お金ならあるよ」


 セナが稼いでくれたお金だけどさ。


「で、でも、節約出来る分は節約した方がいいと思うんです! 私とマスターなら、一人部屋のベッドでも、ふ、二人で眠れると思うんです。……も、もちろんマスターが嫌……なら、私は、床で、寝ます……」


 セナは言葉が終わるにつれて、声が小さくなり、目から涙がこぼれ落ちそうになっていく。

 そんな顔されて嫌なんて言えるわけない。そもそも、嫌じゃないし。


「嫌なわけないから! すみません。一人部屋でお願いします」


 だから、私は慌ててセナに嫌じゃないことを伝えながら、一人部屋を借りた。

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