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弓道者  作者: sloth
序章
2/4

第一話〜出会い〜


 

 悪夢が過ぎる。


 一筋の銀線。直接火に炙られたかのような激しい痛み。物語で読んだ鬼のような表情。圧迫されていく肺の苦しみ。そして、遠ざかる意識の中で聞こえた、一つの・・・


「ようやくお目覚めか?我が弟子よ」


「は?」


一つの透き通った声に、眠っていた意識が覚醒した。少年の閉じていた瞼が開くと、そこには悪夢のような光景…ではなく、一人の女がいた。

艶やかな濡羽色の髪に、小さく整った貌。

ゆったりとしたドレスから覗かせるたわわに実った胸。ベッドに寝ている少年に、覆い被さるように四つん這いで顔を覗き込んでいた。


「師である我が話しかけていると言うのに何を呆然としておるか。早くも見込み違いだったと思わせたいのか?」


「…誰かに弟子入りした覚えは無いんだが。誰だアンタ」


「フッ…童の様に喚き散らさず疑問を問うか。中々我好みの返しだ。喚き散らそう者ならここで切り捨てていた」


「今度はアンタが無視してんじゃねえよ。自己満足してねぇで質問に答えろ」


「口の利き方は、まあ今後治すとして……我が何者かだったな。いいだろう。答えよう。我はスカーディア!この影の国『スカディナビィア』の女王である」


四つん這いから状態を起こし、女は高らかに己の名を宣言した。見事なドヤ顔を浮かべて。妙に様になっている姿に少年は若干の苛立ちを募らせた。

影の国の女王は続けざまに右手の人差し指を少年の顔に突きつける。


 「貴様を弟子と呼ぶのは我が貴様をそうすると決めたからだ。光栄に思うが良い」

 

 怒りと困惑が混ざり合い、頭を抱える少年。スカーディアと話していると、わからないことが解決するどころか逆に頭が混乱してくる。


「…ちょっと待てくれ、疑問が増えた……1つずつ解消したい」


「私のスリーサイズか?」


「それはそのうち聞く」


「冗談のつもりだったのだが…」


なかなか難しいものだなどと、顎の下に手を添えてブツブツ呟くスカーディアを見て、少年はなんだこの女はと思う。

見た目は普通の見目麗しい女である。しかししゃべり方といい身勝手さといい、どこかズレている印象を受けた。

少年が女を観察していると、女は1人納得したように一度頷いて改めて少年を見た。


「ではこうしよう。我もお前にいくつか聞きたいことがある。1問ずつ交互に尋ねたいことを訪ねていこう」


「ああ…それで構わない」


お互いに納得したところで、互いの質疑応答が始まる。

先行はスカーディアだった。


「ではまずは我からだ。お前はどうやってここに来た」


「?質問の意図がわからない」


「スカディナビィアへどうやって来たと聞いている」


「なにを言ってるんだ?アンタが俺をここに連れてきたんじゃないのか?」


「ふむ…つまりはわからない、ということか」


少年は首を傾げた。聞きたいのはこっちの方だと。

自分は先ほど目を覚ましたばかり。少なくとも、最後に意識を失ったときは、こんな心地のいいベットの上で眠りに入った覚えはない。


「今度は俺だ。アンタの言う影の国ってなんだ?ここはアルベリア王国じゃねえのか?」


アルベリア王国。

それは少年が元々住んでいた国の名前。

この世界、マグメリアを支配する四つの大国に名を連ねる大国である。


少年が生きる世界、通称『マグメリア』は、現在4つの国が大きく領土を支配している。

ヒューマンの国、『アルベリア王国』と『エジンバルク帝国』。

エルフの国『シャンディア連合国』

妖精の国『アーヴァロン』

少年はその中でもヒューマンであり、アルベリア王国の出身だった。

自身が意識を失ったのはアルベリア王国内のはずだが、スカーディアはこの場所を影の国『スカディラビィア』と言っていた。少年にとっては4大大国のどれにも当てはまらず、聞き覚えのない国であった。

スカーディアはベッドから降りると、指を振って少年にも起きるように促す。少年は上体を起こし、腰までずり落ちた寝具を捲り上げてベッドから起き上がった。


「我が話すより、直接見た方が早いであろう」


スカーディアは少年を連れ立って、ベッドのすぐ横にあるカーテンにて閉ざされた大窓へ歩く。スカーディアが右腕を振るうと、閉じていたカーテンが左右に別れて開かれた。

目が眩むような日差しはやってこない。窓から見える景色は薄暗く、窓の内側では向こう側を正確に認識することは難しかった。少年は今は夜なのかと思いながらのスカーディアについていく。窓の外にはバルコニーとなっていて、スカーディアは窓を開放し、バルコニーへ歩き出ながら、スカディラビィアについて口にする。


「この国には時間という概念はない。とは言っても時間が停止しているわけではない。時間という区切りを持たせても意味がないというだけだ。どういうことか理解をしたいなら、上を見ろ」


「上?…なっ!?」


バルコニーの最奥の柵までやってきて、スカーディアは少年に上空を見上げるように促す。言われた通りに上空を見上げて、少年は愕然とした。そこにあったのは、夜空に浮かぶ流れ星、なんてロマンティックなものではない。見えるのは揺れる木漏れ日。大地を歩く人々の群れ、喧騒。そういったありふれた人類の日常が見て取ることができた。


「この国には太陽がない。当然だ。スカディラビィアは地上にできた影の中にあるのだから」





 


皆様こんばんわ

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