第29話 獣
是非最後までお楽しみください!
あそこか……!
ブゥォォォォオン!!!
俺は落ちかけていたいじめっ子の襟を掴み引っ張り上げ、後ろに投げ飛ばした。
「間に合った……よくやったぞブレイブ……」
「……グラリスお兄ちゃん!!」
いじめっ子を投げ飛ばした後、ブレイブの足をがっちりと掴んだ。
危ねぇ……間に合った、けど……
高いところ怖ぇ!!! しかも魔力が足りねぇ!!!
高いところが苦手なのは治っていなかった。
そりゃ地上にずっと居たからね……
それに加えて魔力が足りない。
ブレイブのお母さんの治療のせいでびっくりするほど魔力量が減っていた。
「ブレイブ……今あげてやるからな……」
俺はブレイブを掴んだ右手に魔力を集中させた。
多分これで俺の魔力は底を尽きる。
使いすぎたら……死ぬ……だから……少しずつ……!
この世界の人は基本魔力がマイナスになった時、命を落とす。
だからこの状況でも俺は死ぬ可能性があるってことだ。
「せーの!!」
俺はブレイブを勢いよく引き上げ後ろに投げた。
「うわっ!」
ブレイブに抱えられていたパーナーはスポッと腕から抜けてしまっていたが、無事崖の上に戻ってこれた。
やべ……もう動けねぇ……
「グラリスお兄ちゃん!」
ブレイブが俺のところに走って寄ってくる。
「あ、あぶねぇから……し、師匠を……呼んで……来てくれ……」
「わ、わかった!!」
地面に這いつくばる俺にそう答えたブレイブは後ろを振り向き走り出したのだが……
「や、やめろーー!」
「や、やめろーー!」
「や、やめろーー!」
ブレイブが走り出すその先に見た事のない獣がいた。
狼程の大きさの獣は白い毛に覆われ、大きな尻尾を持っていた。
グルルルルルル……
その獣はいじめっ子3人をとんでもない魔力で威圧していた。
この魔力量はおそらく俺よりも……下手したら師匠よりも多い。
それくらい俺には恐ろしく見えた。
でも……あれ?
「パ、パーナー?」
そう。パーナーがどこにもいない。
てことはもしかして……
グラァァァア!!!!
多分そうだ。これはパーナーだ。
昔聞いたことがある。獣は姿を変えると。
この姿がパーナーの真の姿って言うのか?
だとしたら危なすぎる。ブレイブの声も届いていない。
このままだとけが人が……いや、死人が出る!!
くそっ!! 動けよ!! 身体!! くそっ!!
惨めだ。不甲斐ない。結局助けられてないじゃないか。
グラァァァア!!!!
「だ、だめ!! パーナー!!」
パーナーはブレイブの声に耳を貸すことも無く、魔力で強化された尻尾をいじめっ子3人に向け始めた。
……やるしかない!
俺は起き上がることの出来ない身体にムチを打ち、右手を3人のいる方に向けた。
ブゥォォン!
そこから人が吹き飛ぶ位の魔力を作り出し放出した。
その風に乗り3人は少し遠くに飛んでいき、間一髪パーナーの尻尾攻撃を避けた。
パーナーの空ぶった尻尾は地面に叩きつけられ、そこは尻尾の型がくっきりと出来ていた。
……もう無理だ。指ひとつ動かせない。
それでもパーナーは狂ったようにいじめっ子の所に歩んでいく。
「パーナー! ねぇ!! パーナーってば!!」
後ろから声をかけるブレイブだが全く届いて居ない。
どうしよう……もう……
いじめっ子の3人は皆腰が抜けて立ち上がれていない。
声すら出せていない。
パーナーがもう一振、尻尾を準備している。
「パーナー!!!!」
尻尾は問答無用に3人へと振り下ろされた。
バコーーーン!!!
「……間に合ったのじゃ」
師匠!!!!!
3人に向かって振り下ろされた尻尾は、師匠の魔剣によって防がれた。
安心したのかブレイブは膝から崩れ落ちる。
「グラリス! こいつはなんじゃ……って喋れへんのかいな!! あー、もうーーー」
そう言って師匠は受け止めた尻尾を吹き飛ばした。
グルルルルルル……
怒り狂ったパーナーは止まることなく戦闘態勢だ。
それに気が付いた師匠はいつにもなく真剣な顔で魔剣を構えていた。
「ふーー……」
深呼吸をした師匠は左手をパーナーに向け大きな砂嵐を起こした。
……ってちょっと待って!! 俺とブレイブ飛んでっちゃうから!!
砂嵐はこっちにまで発生し、俺たちを巻き込んでパーナーを攻撃した。
師匠……周り見れてないよ……ってあれ?
俺は崖から吹き飛ばされて落とされると思っていたのだが、気が付くと俺とブレイブといじめっ子の3人は同じ場所に集まっていた。
「ふぅ。とりあえず怪我人と子どもの回収は完了じゃな」
……すごい。周りしか見れてなかった。
そうだった。師匠はこういうところが秀でていた。
はぁ……今日良いとこ無しだ俺。
ブワン!!!!
その瞬間、発生した砂嵐がおさまった……いや、違う。
グラァァァァァァア!!!!
パーナーの尻尾攻撃によってかき消されただけだった。
「ワイじゃ無理かもしれぬな……」
え、無理? ちょっと待って待って!!!
「でもやるしかなさそうじゃ!!」
そう言って師匠はトップスピードで走り出した。
尻尾と魔剣が何度もぶつかり合う。
……だめだ。俺じゃ絶対に勝てなかった。
師匠が来てなかったら……
「ランドお姉ちゃん!! 危ない!!」
ブレイブがそう叫んだ時何が起きたか理解できなかった。
ゴゴゴゴ……
「なんじゃ!?」
その瞬間、地面から尻尾が現れ師匠を吹き飛ばした。
でも何故だ。パーナーの尻尾は確実に師匠と対峙していた。
あれは……
パーナーの尻尾の方を見ると……まじかよ。
二本ある。さっきまで気が付かなかった。いやなかったはずだ。
「魔力が下にあると思ったんじゃがのう……ゲホッゲホッ……まさかそいつさんのやつやったとはな……」
立ち上がる師匠だが、相当の深手を負っていた。
治癒魔法を使う暇なんてなかった。
なぜならパーナーの狙いは初めっからいじめっ子の3人だからだ。
吹き飛ばした師匠なんて気にもせずこちらに向かってくる。
「ワイを……無視するんじゃない……!」
もう一度走り出す師匠だったが、次はノールックで尻尾に弾かれてしまった。
俺は驚きだった。
だって師匠は強いから。これは嘘じゃない。
パーナーが強すぎるのだ。
魔力も、そもそもの力も。
師匠の身体なら半端なことがない限り、一撃でふらつくようなことは無い。
俺が全力で放った魔法くらいなら構えていれば片手で防がれてしまうくらいだ。
そんなこと考えてるうちにパーナーはもう、俺たちの目の前に迫っていた。
二本の尻尾をもう一度振り上げる。
グラァァァァァァア!!!!!!
いじめっ子に尻尾が振り下ろされる。
俺は目を瞑ってしまった……その時だった。
大きな音がしない。
恐る恐る目を開けると、いじめっ子の前で両手を広げる少年の姿があった。
「パーナー! もうやめて!」
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