第21話 新しいスタート
是非最後までお楽しみください!
ランドさんを紹介してもらった日の夜のこと。
「.....それで、どれくらいの期間住み込む気なの?」
お母さんがご飯を食べながらそう尋ねた。
「えっと.....必要分お金が溜まったら戻ってくる予定です。目安は1年くらいかと」
俺はランドさんにある契約を告げられていた。
それはーー
「あー、じゃぁ分かったのじゃ! ワイの家に住み込んでくれたらグラリス! 一緒にダンジョンに潜ってやるのじゃ! そこから稼ぎを折半するのじゃ! そうじゃなきゃ魔法も剣術も教えないのじゃ!!!」
という訳だった。
「グラリス様がいなくなると寂しくなりますね」
「まぁお母さんは止めないけど.....本当に大丈夫なの?」
「はい。ランドさんはちゃんと信頼できそうですし、実力もあります。僕が強くなるにはこうするしかないんです」
「そうね.....グラリスが決めたことならお母さんは異論ないわ」
「ありがとうございます」
俺は軽く頭を下げた。でも実を言うと.....
行きたくない!!!!
やだよそりゃ!!!!
だって80金貨なんですぐ集められるわけないじゃん!!! 折半って言ったって絶対取り分8対2とかだよ!!!
「ワイが多めじゃ。当たり前じゃ」とか言って来るだろ!! 絶対!!!
「はぁ.....」
俺は部屋に戻り大きくため息をついた。
リューネはまだリビングにいた。
「でも、やるしかないよな」
俺はベットに横になりながら右手を高く伸ばした。
そして、ぎゅっと握りしめた。
俺が強くなって家族を守るんだ。お父さんよりももっと強くなって。
その時、リューネが部屋に戻ってきた。
「リューネ、いきなりでごめんな」
と言うのも、さっきの、手言うか最近のご飯中、リューネの口数が明らかに少なくなっていた。
何が原因かはまだ分からないが、お父さんが亡くなってから口数が減っていたのでその件だろう。
何も答えずリューネは俺の隣のベッドに入る。
「もう寝るから電気消すよ」
俺は布団にくるまったリューネにそう告げて電気を消そうとしたその時。
「本当に行っちゃうの?」
俺の反対を向いて寝ているリューネが尋ねてきた。
その声は小さく、少し震えていた。
「あぁ。でも、すぐ帰ってくるさ。頑張って強くなって、稼いで、この家の家族を俺が守るんだ」
「でも.....魔剣学校にも行くんでしょ?」
俺は何かを察した。
でも俺の考えは変わらなかった。
「もちろん行くよ。でも、まだ行けるかも分からないしまだまだ先のことだからそんな重く考えなくて良いよ」
場が静まり返った。こういう時どんな対応すればいいのか分からなかった。
1度自分が死ぬ前も。彼女の顔色を伺うだけで行動に移せなかったことを思い出す。
どれくらい経っただろうか。やっとリューネが口を開く。
「もう.....一人は嫌なの.....離れないでよ.....」
リューネは寝返りを打ち俺の方を向いた。
俺はリューネの方に身体を向ける。
すると、リューネは俺の胸に泣きついてきた。
俺は勘違いしていた。俺は今8歳でリューネは7歳だ。歳もそんなに離れていない。
だからと言って全く同じ訳では無い。
俺はこっちの世界に来る前、16年間生きていた。
でも彼女はまだ7歳だ。
とても若い彼女にとって2度の親の死をそう簡単に受け入れられるはずがなかった。
その中で俺の存在も少なからず大きかったのだろう。
そこで俺も姿を消すとなると.....きっと……。
俺は震えるリューネの頭を撫でながら考えた。
いっその事一緒にランドさんに教わるのもありかとも思った。
でも、アコイスさんが今日帰り際に言っていたことを思い出した。
「でもグラリス君。私は魔剣学校の教師であることは忘れないで欲しいの」
「もちろん忘れないですけど.....どうしてですか?」
「普通に考えて教師がその学校に入学するために加担するのはよろしくないでしょ?」
「確かに.....分かりました。そこの所はちゃんとわきまえて行動します」
そう。これは裏口入学とほぼ変わらないのだ。
しかも、リューネを連れて行ったって恐らく解決にはならないだろう。
でも俺は決めたんだ。
泣きつくリューネに俺は話し始める。
「リューネ。寂しい思いを沢山させてごめん。これからもたくさんしちゃうこともごめん。でも.....でも。俺は今やらなきゃ、次いつ誰がいなくなっちゃうか分からないから。もう大切な人がいなくなって欲しくないから。お母さんやエイミー。リューネだって大切だから」
そう言ったあと俺は泣きついたリューネを一度剥がし、うるうるした目を見てこういった。
「これから1年。もし魔剣学校に入学したら5年。リューネの前からいなくなるかもしないけど、そしたら10年、20年、それから先ずっと一緒に居よう」
それを聞いたリューネは「絶対嘘よ」と言ってまた泣きついてきた。
少し経ち、泣き声が聞こえなくなったと思ったら、すぴーっと寝息を立てて寝てしまった。
これで良かったのか悪かったのか。
俺には分からない。本当に嘘かもしれない。
ここで逃げちゃダメだ。あの時屋上から飛び降りた時みたいに。
強くなるって決めたんだ。もう、誰も死なせない。
そうして俺も眠りについた。
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「本当に行くのね.....」
「うん。寂しくなるけど、たまに生存確認として手紙とかも送るからさ」
「ぐらりずざま.....おぎおづげで.....」
「エイミー.....……なぐなよ.....」
泣くのを我慢するエイミーに釣られて俺も耐えきれなくなり涙を流してしまった。
お母さんはキッチンで何事も無かったかのように昼ごはんの用意をしていたが、実は朝俺を大号泣しながら引き止めていた。
何とかそれを説得し今に至る。
ここで驚いたのは珍しくリューネが泣いていなかった事だ。
「何泣いてんのよ! 行くんだったら早く行きなさい! 戻ってきた時に私より弱かったらタダじゃ済まないから!」
そう言ってリューネは俺を強引に振り向かせて玄関へと押した。
「や、やめろよ! 最後くらいゆっくり.....」
「だめ!! .....はやく.....行って.....」
リューネは絞り出すようにそう言い放った。
何かを察した俺はすぐにドアを開ける。
涙を拭い、俺は振り向かずこう言った。
「じゃぁ.....行ってきます!!」
「「「行ってらっしゃい!!」」」
俺は新しいスタートを切った。
お父さんから貰ったネックレスと魔剣と共に。
どうだったでしょうか!
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