第20話 実力者
是非最後までお楽しみください!
アコイスさんと会ってから3日が経ち、また僕はあの裏路地へと向かっていた。
アコイスさんは何を俺にしようとしているのかさっぱりだった。
ただ唯一分かるのは、アコイスさん以外の人がなにかしてくれるのだろうということだけだ。
裏路地を曲がり、3日前待ち合わせた場所に着いた時、もう既に先客がいた。
そこには白い髪を靡かせるアコイスさんともう一人.....
「おー! お前がグラリスじゃな?」
そう言ってすごいスピードでこちらに突っ込んできた知らない女性だった。
「え、えっと.....そうですけど.....どなたでしょうか.....」
「ごめんねグラリス君。私の代わりにあなたを強くしてくれる人を連れてきたの。彼女はランド・ルーシャ。私が魔剣学校時代の二つ下の後輩よ。魔術だったら私と同じくらい.....いや、私以上ね。申し分ない実力者よ」
そう説明を受けた俺はちょっと不安であった。それというのもーー
「わっはっはっはっ! ルーちゃんいつもは冷たいのに今日はなんか暖かいな! ワイは上機嫌じゃ!」
.....この性格である。
語尾にじゃをつける人は生きてきた中で初めて見た。
一人称がワイなのも初めてだ。
おいおい本当にこの人がアコイスさんよりも魔術が優れていて実力者? 嘘をつかないでくれよ。
嫌な空気を感じたのかランドさんは俺に向かって話しかけてきた。
「なんじゃなんじゃ? その顔は! ワイが教えるのが嫌っていうのか?」
「嫌っていうかなんて言うか.....本当にアコイスさんより凄いんですか.....?」
俺がそう言うとランドさんは「ぎゃぁぁぁあ!」と叫んで膝から崩れ落ちた。
俺は驚き「あっ! ごめんなさい!」と反射的に謝ってしまった。
「グラリス君。彼女ちょっと変わってるけど.....腕は本当よ。いつもこんな感じで実力を偽ってると思われて落胆するの」
なんか面白い人連れてきたな.....
でも、悪い人では無さそうだ。
色々考えていると、崩れ落ちていたランドさんが急に飛び上がり俺の顔にこれでもかと言うくらいに顔を近付けてきた。
俺はちょっと引き気味に「な、なんですか」と聞くとランドさんはにひひと笑いながらこう言った。
「ワイが変なのは昔から言われてるからもう慣れたのじゃ。だがしかーし! ワイもあんたのことまだ認めてへんからな〜?」
「と、言いますと.....?」
「今からワイと勝負や。その魔剣使ってな」
「.....え? 実戦って事ですか?」
「そうじゃ」
俺はアコイスさんに助けを求める視線を送った.....が、
「まぁそうなるとは思ったわ。魔力結界はもう張ってるからいくら魔力の激しい戦いしてもある程度は怒られないと思うから大丈夫よ」
……えーーー! 肯定派だったーーー!!!
「え、ちょでも.....まだ僕対人したことないですし.....ましてこの魔剣でなんて.....」
「そんなんでダンジョン潜れると思っとるんか? 甘いんじゃよ考えが」
顔を離したランドさんの目付きが一気に変わった。
このチャンスを逃せば俺はもう後がないことはわかってる。
.....よし。やるしかない。
「分かりました。もし僕のことを認めてくれるのであれば」
「あぁ、もちろん責任もってワイがあんたを強くしちゃるぞ」
こうして俺とランドさんの一騎打ちが始まった。
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「ルールは一応、足以外が地面に着いちゃったら負けって言うことで良いかな」
アコイスさんの仕切りの元、俺とランドさんが頷いた。
「じゃぁ.....よーーい」
その掛け声と共に俺は赤く光るお父さんの魔剣を、ランドさんは茶色く小さく光る魔剣を片手に持ち、戦闘態勢に入った。
「.........始めっ!!」
その合図が鳴った瞬間、俺は足元に大きな風を巻き起こしランドさんに近付いた。
「はやっ!!」
ランドさんが一瞬怯んだ。
行ける.....行けるぞ!!
俺の算段はこうだ。
まず、得意な風属性を生かしたスピードで翻弄する。
.........それだけだ!!!!!!
俺は一瞬にしてランドさんの目の前に着き、魔剣を下から振り上げるように振った。
その時だった。
ザラザラザラザラ!
.....!?
俺の振った魔剣は何がに弾き返された。
その感触は魔剣ではなく、なにか無数の細かいものに弾き返されたようだった。
俺は1歩後ろに引く。
「ふぅ.....危なかったなぁ。次はこっちの番じゃよ!」
そう言ってランドさんはこちらに走ってきた。
俺は魔剣を持ち直し構えたその時、ランドさんは左手で大きな魔力を発生させた。
.....砂だ!!
俺の目の前に大きな砂嵐が発生し視界を遮る。
俺は咄嗟に左手から大きな水の塊を作り出し砂を固めた。
泥になった砂はランドさんの足元に積み重なり進行を阻止した。
「あんた風属性じゃなかったんか!?」
ランドさんは固められた砂の魔法を消しながら驚いた様子だった。
「僕は残念ながら【全属性】です!」
そう言ってまた走り出す。
ランドさんも「楽しくなってきたのう!」と言ってこちらへ向かってきたその時.....
ザン!!
俺とランドさんの間に大きな氷山が下から現れた。
「はい! 終わり!」
アコイスさんは拍手をしながらこちらに向かってきた。
「え、終わりってどっちがですか!?」
「そうじゃなくて.....ルーシャ。もう十分でしょ?」
そう言って氷山を溶かしながらランドさんに問いかけた。
「十分じゃけど.....もう少しやらせてくれても良かったじゃないか!」
駄々をこねるランドさんにアコイスさんは「これから沢山できるでしょ?」と肩をぽんと叩いた。
すると.....
「まぁそうじゃな! グラリス! あんたは今日からワイの弟子じゃ! ワイのこと師匠と呼んでいいぞ!」
立ち上がり俺にそう告げた。
「.....はい! 師匠!」
俺は数分前と違って完全にこのランド・ルーシャさんを認めていた。
そして、師匠と呼ぶことに恥じらいは無かった。
彼女の魔力は本物だった。誰がどう見ようと実力者だった。
おそらくこの試合の中では3割くらいしか力を出していないだろう。
やばい……楽しみすぎる!
これからの修行に心を躍らせていた。
「ということで.....グラリス君。これで良かったかしら?」
「はい! もちろんです! 忙しいのに本当にありがとうございました!」
俺が頭を下げると「いやいやそんなそんな」と手を横に振りながら「頑張りなね」と優しく囁いてくれた。
色んな気持ちが込み上げてくる。でも、泣いちゃダメだ。これからだ。もっともっと強くなって俺が家族を守るんだ。
俺は強く拳を握りしめた。
「グラリス。ワイの弟子になったってことは.....住み込みでってことで良いんじゃよな?」
.....ん? 今なんて?
「え、なんて言いましたか?」
「住み込み」
「嫌です」
「なぜじゃ」
「何でもです」
「なーぜーじゃーーー!」
そう言ってランドさんは俺を追いかけ回した。
逃げながら俺は反抗し続けた。
「だって僕にも家族がいるんです! 大切な時間なんですよー!」
そう言うとアコイスさんも会話に入ってきた。
「ルーシャそこまではいいんじゃないの?」
「ダメじゃ! 住み込みじゃ!」
「ルーシャあなた.....家事やらせようとしてる?」
「し、してない」
「してるわね」
「してますねこれは」
「わーーー! もう決定なのじゃ! そうじゃなきゃ弟子にはしないのじゃーーー!」
どうしよう.....まずいことになってしまった。
どうだったでしょうか!
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