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地獄からの異世界ライフ「二度目の人生。もう、地獄は見たくない」  作者: 橋本日向
第2章 少年期 魔術・剣術成長編
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第11話 友達

是非最後までお楽しみください!

 リューネが我が家に来てから、約半年が経った。

 これはある日のリビングでのこと。


「そーいえばやっと新しいベッドが届いたわよ」


 お母さんが玄関近くにある、大きなダンボールのようなものを指さす。


「これをどこの部屋に置くかなんだけど……どうしようかしら」


「今まで通りで行くと……僕の部屋に置いてエイミーがそこで寝るとかですかね?」


 俺がそう言うと反対意見が二票出てきた。


「グラリス様! もうエイミーを卒業してみたらどーですか!?」


「……そ、そうよ! そろそろエイミーさんじゃなくて……私にしたらどうなの……よ……」


 楽しそうな人一人に恥ずかしそうな人一人。

 なんだか俺は薄々気が付いていた。


 そう……リューネは俺に惚れてしまったのだ!!

 根拠? そんなの無いよ。行動が全部そう言ってるんだ。


「……えーっと……リューネがいいなら僕もそれでいいですけど……」


 俺が苦笑いしながら頬をポリポリ掻いて答えると、「ほんとっ!?」と言って、リューネが俺の方に飛んできた。


 近くで見るとやっぱり可愛い彼女は、目をキラキラさせて「じゃ、ベッド早く組み立てちゃいましょ!」と言って、スキップしながら玄関の方へと向かった。


 あの一件があってから、俺とリューネの関係は良好だ。

 毎日話してくれるようになったし、話しかけてくれるようにもなった。


 ふぅ……初めはどうなるかヒヤヒヤしちゃったよ。

 でもとりあえずは一件落着。今はただの恋する乙女になっている模様。


 エイミーちゃんもいいが、リューネも今後の成長に期待大だ。


 モテる男は……辛いぜ……キラッ。


「……グラリス、何やってるの。早く運ぶの手伝って」


「ご、ごめん。今行くよ」


 俺は駆け足でリューネの元へと向かった。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 ただいまベッドを製作中。しかし、問題が一つ……


「あぁーー! もう! こんなの見ても分からないわよ!」


 そう言って説明書を投げ飛ばすリューネ。


 これは遡ること30分前ーー


「御二方。今は自由時間ですので、ベッドの制作のお手伝い致しましょうか?」


「あー、えーっとそうだな、エイミー頼むよ……」


 俺がエイミーに頼もうとしたその時だった。

 俺の言葉を遮るようにリューネが話し出した。


「だ、大丈夫よ! エイミーさんは休んでて! こ、こんなの2人で十分よ! ね、グラリス!」


 そう言って俺に顔を向け眼力で発言を誘導される。


「や、やっぱり大丈夫だよ。エイミーは休んでて」


 ……てな感じで今に至る。


「なぁ、リューネ。やっぱりエイミーにも手伝ってもらった方が良かったんじゃないのか?」


 リューネが投げ飛ばした説明書を拾い上げながら言った。


 今まで俺の中でのリューネのイメージは、冷酷、繊細、天才と言った感じだった。

 でもそれは一瞬にして崩れ落ちた。


「そ、そんなの分かってるわよ……グラリスと一緒に作りたかっただけなのよ……」


 リューネが俯きながらか細い声で本心を言った。

 いつもなら心の中で、なんだなんだ可愛いなぁおい! とか言いそうなんだが、リューネの顔を見てそんな気にはなれなかった。


 まぁ、可愛いのは変わらんけどな。


「……そっか! そういうことなら二人で協力して作ろっか! 俺もあんまり得意じゃないけど……」


 俺は、ははっと笑いながらリューネの元に説明書を届けに行った。


 それでもリューネの顔は上がらない。

 ……え? もしかしてやっちまった? なんかまた気に触ることしちゃった!?


 俺が焦っていると追い打ちをかけるように、ある音が聞こえてきた。


 ……ぐすん……ぐすん……


 鼻をすするこの音……泣いてる!?

 え!? ちょ、待って待って!!


 俺は急いでリューネの背中を摩った。


「ご、ごめん。なんか嫌なこと言っちゃったか?」


「……ちがう……い、いま、まで……こ、こんなに……やさしくして……もらったこと、なかったから……ともだち……なんて、いなかった……から……」


 泣きながら話すリューネの涙は加速した。

 友達。リューネが発したこの言葉の重みは俺には分からない。


 若くして両親を失った彼女の気持ちは正直上手く理解してあげることは出来てなかった。むしろそんなこと考えようともしていなかった。


 確かに俺にも友達と言える人はいなかった。前の世界でも片手で数えられる程しかいなかった。


 でも、俺はそれなりに楽しく生活出来ていた。あの出来事が起きるまでは。


 俺の当たり前が、リューネの当たり前なわけじゃない。

 でも、だからこそ。俺にはリューネの気持ちがわからなかった。


 俺はまだ小さい手でリューネの頭を撫でた。

 もう片方の手で涙を拭ってあげた。


「リューネ。これからは僕がずっと友達だよ。だからもう心配しないで……泣かないで?」


 こんな当たり前のことを言ってどうするんだ。

 まず第一に俺なんかが……


 俺がべちゃくちゃ心の中で話していると、リューネが俺に飛びついてきた。


「……ありがとう……グラリス……友達……」


 俺の胸に頭を埋めるリューネ。それを静かに撫でる俺。

 何秒経っただろうか、いや何分だろうか。


 リューネが鼻をすする音しか聞こえないこの部屋は、無駄に広く感じた。


 しばらくしてリューネが顔を上げた。

 その顔は、笑顔だった。


「グラリス! 続き頑張りましょ!」


 そう言ってリューネは俺を突き飛ばし、説明書を手に取った。


「いててて……もっと友達は優しく扱えよな!」


「なによ、友達だからって優しくするつもりなんてないわ!」


 いつものリューネだ。


 冷酷で、負けず嫌いで、かなり不器用で、少しやんちゃで、ちょっぴり寂しがり屋なリューネ・ストラスだ。


 てか……友達ってことは……全然俺に恋なんてしてないんじゃね!?!?


 それから二人でベッド制作に三時間かかりました。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


「やっと……できた……」


 俺たちは完成したベッドの上に見事なほどの大の字で、寝っ転がっていた。


「……ありがとう……グラリス……あなたがいなかったらもう少しかかってたわね……」


 ……多分俺がいなかったら完成してませんよ。

 なんてこと言ったらまた怒られちゃうから我慢我慢。


 俺たちは完成したベッドを既存のベッドの隣に置いた。

 簡易ダブルベッドの完成って言ったところかな。


「ふぅ〜これで今日はゆっくり寝れそうだな」


「はぁ〜そうね」


 リューネは大きく伸びをしていた。

 顔ももう疲れていて、今にも寝てしまいそうだ。

 さっき泣いてたからそれも相まってだろう。


「ご飯までまだ時間あるし……少し寝たらどうだ? 新しいベッドきっと気持ちいぞ」


 ポンポンっと新しいベッドを二回叩いた。


「そうね……ちょっと寝ようかな」


 そう言ってリューネは新しい布団に潜った。


「グラリスは寝ないの?」


「僕はちょっとだけ魔法の練習してきます。いつかエイミーみたいにすっごい魔法使いたいから毎日コツコツ頑張ろうって思って」


「……そっか。おやすみグラリス」


 少し寂しそうに告げたリューネを背中に俺はドアを開けた。

 ……まぁ疲れているだけか。そっとしておこう。


 その時だったーー


「グラリス。私の事……好き?」


 ……!? 好き!? これって……こ、告白!?

どうでしたか?これからどんどん面白くなります!

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